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農林水産省

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駅弁紀行 第1回

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小林しのぶ

北海道JR室蘭本線

母恋駅「母恋(ぼこい)めし」

北海道の小さな駅で生まれたホッキ貝入りおにぎり弁当は100%手作りの素朴でやさしい味


「母恋(ぼこい)めし」ホッキ貝の炊き込み/ご飯のおにぎり2個/燻製卵/燻製チーズ/茄子の浅漬け/ハッカ飴
【おしながき】ホッキ貝の炊き込み/ご飯のおにぎり2個/燻製卵/燻製チーズ/茄子の浅漬け/ハッカ飴

母恋駅は木造の小さな駅舎。母の日が近づくと毎年、「母恋駅記念入場券」の注文が全国から寄せられる。
母恋駅は木造の小さな駅舎。母の日が近づくと毎年、「母恋駅記念入場券」の注文が全国から寄せられる。

母恋駅は木造の小さな駅舎。母の日が近づくと毎年、「母恋駅記念入場券」の注文が全国から寄せられる。

母恋めし ラップで個別包装された駅弁は珍しい。残ったら持って帰れるようにとの配慮から。
母恋めし
ラップで個別包装された駅弁は珍しい。残ったら持って帰れるようにとの配慮から。
980円/調製元:創作工房せきね(ブロートン99)
個数限定販売 Tel.0143-27-2777
(室蘭駅では、噴火湾のホタテを使ったこだわりの駅)
室蘭本線の各駅停車に揺られて母恋駅へ。
改札を抜けると、古い小学校の校舎を思わせる木造の駅舎。壁には、手書きのポスターやチラシが張られ、どこか懐かしい昭和の香りが漂う。だるまストーブを囲むように長椅子が置かれ、列車を待つ数人の客が世間話に興じている。

昭和30年代、鉄の町として栄えた母恋の面影は今はなく、小さな駅にはゆったりとした時間だけが流れているようだ。
室蘭や母恋のある内浦湾、苫小牧はホッキ漁が盛んな場所のひとつ。センチメンタルな響きの「母恋」という地名は、アイヌ語の
ポクセイ・オ・イが語源で、「ホッキ貝がたくさんある場所」という意味から名づけられた。

待合室の一角に、小さな売店があった。地場産のホッキ貝を使った駅弁「母恋めし」はここで売られている。
和紙風の風呂敷を広げ、弁当のふたを開けると本物のホッキ貝が!貝殻の中には、ホッキ貝の炊き込みご飯のおにぎりが入っている。その横に燻製卵や燻製チーズ、漬物などがラップに包まれ容器に収まる。ピクニックランチのようだ。北海道産の粘り気のある米を、ホッキ貝のエキスたっぷりのダシで炊いたおにぎりは、ほんのり口の中に甘みが広がる。ふっくらとしたホッキ貝は、歯応えもあり、磯の香りがまたいい。りんごのチップでいぶす燻製チーズやゆで卵を塩漬けにした燻製卵は、試行錯誤の末に出来上がったオリジナル。これらのおかずは、酒の肴にもぴったりだ。

駅弁を作っているのは、創作工房せきね(ブロートン99)の関根勝治さん久子さんご夫婦。実は2人、本業はともに創作工芸作家。しかし、久子さんが昭和62年「第2回むろらん郷土料理コンクール」の弁当部門で最優秀賞を獲得し、それがきっかけになり「母恋めし」が誕生した。町の人たちのお墨付きである。

魅力は、何度食べても飽きないこと。なによりうまいことに尽きる。ひとつひとつ愛情を込めて丁寧に手作りされた良さが味にも、掛け紙にも、パッケージにも表れている。
一度「母恋めし」を食べると、再び母恋に帰りたくなる。旅人にとって、「母恋めし」は舌と心に記憶される家庭の味なのかもしれない。(聞き書き)



小林しのぶ
こばやし・しのぶ/旅行ジャーナリスト・エキベニスト・駅弁愛好家。千葉県生まれ。海、酒、温泉、音楽、そして駅弁をこよなく愛し、年間150日以上を旅の空の下で過ごす。駅弁の食べ歩きは20年以上に及び、食べた駅弁の数は約5000個を超える。著書に『すごい駅弁!(ナレッジエンタ読本12)』(メディアファクトリー)、『超いまうまい帖』(ぶんぶん書房)、『ニッポン駅弁大全』(文藝春秋)ほか