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affインタビュー 第25回

永田 照喜治 さん
おいしい野菜を未来に残すために、これからは市民も農作物をつくる時代です。

「スパルタ農法」「ルーツ農法」とも呼ばれる永田農法の生みの親、永田照喜治さんにこれからの農業の姿について聞きました。
永田照喜治さん

永田照喜治さん
永田照喜治
ながた・てるきち/1926年、熊本県生まれ。旧神戸高商(現・神戸大学経済学部)卒業後、故郷の天草で家業の農業に従事。石混じりの痩せた土地で育てたミカンのおいしさと砂栽培(砂に液肥を与えて栽培する方法)に触発され、研究と工夫を重ねた結果、独創的な永田農法を確立。ユニークな農法で育てた糖度・栄養価ともに高い農産物は海外でも広く知られるようになり、日本をはじめ、世界各地で農法指導を行っている。(株)永田農業研究所代表。著書に『永田農法おいしさの育て方』(小学館)『永田農法でコンナテ野菜』(主婦と生活社)など多数。

永田照喜治さん
人もモノもその癖を活かすこと

挨拶もそこそこに席につき、抱えた資料や本の束からおもむろに差し出した1冊の雑誌。穏やかな口調で「こういうことですね」と言いながら、永田さんが指差した雑誌の特集タイトルは「介護、農業をバカにするな」。軽い先制パンチといったところだろうか。この言葉があとのお話につながっていく。

農業に従事して60年。最小限の水と液肥だけで、野菜や果物の持つ自然の力を引き出し、栄養価や糖度の高い作物を作る独自の農法を確立した永田さんは、83歳になった今も、国内はもとより海外へも農業指導に出かけている。

「ここに書いてあるプロフィールを見てください」と手渡されたのは、著書『原産地を再現する緑健農法』。初版は1998年。21年前に出された本である。

「ここに書かれていることを今もやり続けているだけ。進歩がないんです」と静かに笑いながら言う。しかし、その「やり続けた同じこと」が今、海外の土に栄養が乏しい国で、現地の人々に笑顔をもたらす野菜を育んでいるのだ。

「月のうち3分の2は出かけています。日本と海外では指導方法の違いがあるかとよく聞かれるけれど、太陽が昇り、土があるということではどこも同じです」

「ただし、土の質、携わる人々はそれぞれ違う。それぞれに癖があるわけです。その癖を活かして適地適作を指導しています。在来データも参考にしますが、あくまでも現地に行って土に触れなければ、分かりませんからね。痩せた土地でもおいしい作物は育つ。それを教えてあげているのです」と永田さん。4月の終わりから再びシルクロードに指導に行くそうだ。

志が育む適作耕地と豊かな実り

各地に永田さんに教えを乞う農業従事者はいるが、日本の農業人口は減少の一途をたどっている。農業人口が減ることを永田さんは30年以上前に予測していた。永田さんは農業人口の減少を見越して、そのころからすでに「農業のIT化」に着目していたのだ。農業のIT化とはつまり、農業ロボットである。耕作もロボットが行い、鉢毎の水やりや肥料管理を無線で行う。そうすれば高齢化した農家が増えても農業人口が減っても、大規模農業が可能になるという。

「今、派遣労働者の失業が問題になっています。失業者は新たな農業の担い手になりうると言う人がいますが、私に言わせれば、本当にやる気がある人だけがやればいいのです。人手不足だからといって、こぞって参入しなくてもいい。志がないのに金儲けだけを考えていては、おいしい野菜や果物は育たない」と手厳しい。冒頭の示唆はこの思いへの伏線だった。

「IT化するとか装置化すると言うと、設備投資に金がかかると言う人がいる。でも皆さん、高価なカーナビを持っているじゃありませんか」とほほ笑んだ。

「これからの農業は、人口は減っても真摯に農業に取り組む人と一般市民の二極化すると思います。一般市民というのは、専従で農業に従事していない普通の人たちです。鉢やコンテナで野菜を育ててみる。あるいは市民農園でもいいし、休耕地を借りるのでもいい。生命力に溢れたおいしい農作物を口にする喜びを知ってほしい」

そのために3年間の歳月をかけ、永田農法のノウハウを惜しみなく収録したDVDテキスト『だれでもつくれる永田野菜』も作った。「私はただおいしい野菜を食べてもらいたいだけ。環境に負荷を与えない安全で栄養価の高い農作物を食べてもらいたいだけなのです」

永田農法でつくるベランダ・屋上菜園。緑健農法

撮影/沢海 厚・文/大岳美帆

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