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日本の篤農家 第1回

高松 求

長期的視野に基づく計画的農業経営

最新機械の有効活用に努め、農作業の合理化を実現。


食料の供給者として農家の責任。優れた農法による農業の活性化は大地も育てる。
たかまつ もとむ 食文化史研究家。1956年、福岡県北九州生まれ。大学で農業を学び、その後バイク店を18カ月間、古道具店を10年間経営。以後、健康的で無駄のない食生活を提言し続ける。『冷蔵庫で食品を腐らす日本人』『うおつか流 大人の食育』など著書多数。最新刊は『食べかた上手だった日本人』。
たかまつ もとむ
1930年、茨城県生まれ。49年、現在の牛久市で夫人と2人で農業を始める。独自に研究を重ねて新農法を開発、関係研究機関の注目を集める。98年、第23回山崎記念農業賞受賞。後、一線を引き後進の指導にあたる。
地味豊かな土壌に育つ小麦。ここの小麦は地力が強いため、風雨に曝されてもほとんど倒伏することなく災害に強いことが実証されている。
地味豊かな土壌に育つ小麦。ここの小麦は地力が強いため、風雨に曝されてもほとんど倒伏することなく災害に強いことが実証されている。
タケノコの収穫はどこよりも早く4月の第1週から。そのためには高性能な機械類の活用、竹林の管理、そして日々の農具の手入れも欠かせない
タケノコの収穫はどこよりも早く4月の第1週から。そのためには高性能な機械類の活用、竹林の管理、そして日々の農具の手入れも欠かせない
タケノコの収穫はどこよりも早く4月の第1週から。そのためには高性能な機械類の活用、竹林の管理、そして日々の農具の手入れも欠かせない

高松 求さん
戦後間もなくの茨城県牛久市の開拓地。食べ物もない、機械もない、肥料もない、わずかな農地に山林が広がるばかり。高松さんの農業はそんな条件下で始まった。それが今では合理的で生産性の高い技術に注目が集まり、国内外の研究機関の視察が絶えない。

開墾、圃場整備の段階から、高松さんは農業の近代化構想を描いていた。機械化のために動線の拡幅、圃場で機械をフル稼働させるための工夫、また、大型車進入に備えた地盤補強などは、作物の収穫で終わるのではなく、消費者を視野に流通までも考えてのこと。

高松さんの畑は冬でも緑をたたえている。ここには冬は農閑期という考えはない。改善や実験の期間である。栽培種は緑肥とする牧草の一種ハナミワセで、窒素を吸収し養分保持の働きをする。高松さんはこれをベースに土壌を改良し、米づくりに取り組んだ。

その過程では、さまざまな実験が行われた。緑肥使用エリアと未使用エリアに分け、2通りの耕作法により4パターンのモデルをつくり、データを収集して比較検討、そうした努力により生産された米は毎年「特A」にランクされている。この農法では土壌の回復、環境の保全、生産性の向上が期待できることから、稲作農家や研究者、企業などが連携して、普及に向けた取り組みが始まっている。

もうひとつ、高松さんが力を入れているのはタケノコづくり。収穫期ともなれば、たくさんの人が竹林を訪れる。敷地の一画にタケを植えたのは昭和43年、失敗を経験しながら今ではその広さは60アール。うっそうとした趣はまったくなく、むしろすっきりしすぎて葉擦れの音さえ耳に入らない。

タケの間隔を開けているのは竹林内を清潔に保つことと、作業効率を高めるために運搬車などを自在に操作できるように考えてのこと。そのため光がよく入る。秋になると、その林床に緑肥として小麦を蒔く。落ちたタケの葉が栄養分になり、冬でも小麦が伸びて地表面を覆うことによって、季節を問わず林床の温度が保たれる。

地中にはミミズがいて、それを餌にするモグラが暗躍する。それもあってか地面がふかふかして、足裏の感触が柔らかい。土を手にすると、しっとりとした感触が伝わり、ほのかな匂いがする。ここでは地中に繁殖する無数の微生物も、タケノコの生育に大事な役割を担っている。この自然のサイクルを調査するために、海外の研究機関が訪れたこともあるという。

今、全国各地で多くの竹林が見捨てられ、放置されている。高松さんはその再生の必要性を強く訴える。高松さんのノウハウが生かされれば、収穫による経済効果はもちろん、故郷の景観形成、環境の回復、さらに緑の癒し効果を生かした空間づくりも可能になる。

高松さんに一貫しているのは農作業の合理化。それを実現するのは機械の活用。機械を使えない栽培はいっさい手掛けない。機械に頼るのではなく、農作業の厳しさを知るゆえ、つねにその効果的な利用を考える。高松農法は、まさにその創意工夫の積重ねである。
「農家には食料の供給者としての責任がある。品質の向上、収穫量を高める努力も必要。優れた農法による農業の活性化は大地を守ることにもつながる」
高松さんのことばからは、とどまることのない農業への熱い思いが満ちあふれていた。

撮影/岩田えり文/藤沼裕司

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