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農林水産省

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特集2 食材まるかじり「海そうを見直そう」(5)

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海藻と生きる

来年もここでテングサが採れるように、根を残しておくのが海女の知恵。伊豆白浜のテングサ漁を支えるたくましい姿。


テングサ
採りたてのテングサはこのように赤色。海女さんはこの日、ひとり40kgほどを収穫した

海女
水面で休憩する時の“浮き”として使う桶には、採ったテングサを入れる網が取り付けられている
海女
数十キロ分も入ったテングサを引き上げるのは重労働。

テングサを海岸で天日にさらす
テングサを海岸で天日にさらす。数十メートルにも渡って赤い絨毯が敷かれる


栗原さんは、原料のテングサと製法にこだわった心太の老舗「伊豆河童」の3代目。伊豆半島の海女の手摘みテングサを使用し、柿田川の名水と丁寧な手仕事で作る心太が自慢です。

テングサの中には波に打ち寄せられたものもあり、これを栗原さんは死んだテングサと言います。一方で海女の手摘みによるテングサは、生きたテングサ。もちろん、生きたほうがおいしい心太になる。

伊豆河童では、同じ伊豆でも産地の違うテングサをブレンドして使います。そのブレンド具合が栗原さんの腕の見せどころ。
伊豆半島の南部東側にある下田市白浜。毎年4月12日頃になると、伊豆半島でもっとも早く、海女さんたちのテングサ漁がはじまります。このあたりは外海に面して波が高い環境で、ここでとれたテングサは質がいいとの評判。特に、シーズンはじめのこの時期に採れる春草は、1年の中でもっとも質のいいテングサだそう。

白浜のテングサ漁は、朝9時頃から2時間ほど行われます。この日潜っていたのは5人の海女さん。皆さんこの道50年の大ベテランです。テングサはただやみくもに採ればいいものではありません。

「テングサが収穫できる大きさになるまでには1年かかる。来年もそこから芽が出るように、根を残して採らないといけない」

収穫したテングサは、すぐに海岸で天日に干します。1時間半ほど干したら裏返し、さらに1時間半。はじめ赤かったテングサは天日にさらされ黄色に変化します。午後2時過ぎには乾燥したテングサを丸めて倉庫へ。これで海女さんの1日の仕事がようやく終了。

この日の5人の合計の収穫量は約240?。この大量のテングサを岸へ上げたり、海岸に並べたりするのを、70歳を超えた海女さんたちが声を掛け合い、助け合いながら行います。今、伊豆白浜の海女さんたちの切実な問題は、後継者がいないこと。

「あたしらがやめちゃったら誰もやらなくなるでしょ。だからしょうがない、しんどいけど、みんなで助け合ってやってるのよ」

心太はもちろん、和菓子などにも用いられる伊豆の手摘みテングサ。テングサ採りの伝統が廃れてしまわないことを願って。



取材協力:伊豆漁業協同組合下田支所