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農林水産省

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MAFF TOPICS(4)

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MAFF aff LABORATORY 遺伝子組換えと重イオンビームを使った品種改良

効率的な育種のための組み合せ

affラボでは、暮らしに役立つ農林水産分野の最新研究成果を紹介します。


もともとの植物が持っている良質な特徴を損なわずに、多種の花の色や形花弁の数を変えられる重イオンビームを使った育種。遺伝子組換えという異なった手法との組み合わせで相乗効果を生み出し品種改良にさらなる可能性が望めます。
重イオンビーム照射では色の濃淡やパターン
重イオンビーム照射では色の濃淡やパターン、花びらの枚数や形、花そのものの数や開花の時期などさまざまな性質の変化が可能。遺伝子組換えのようにまったく同じものを繰り返しは作れないが、目的に合わせ選抜することで効率よく新しい花を作り出せる

遺伝子組換えされたトレニアは樹脂封入された標本
遺伝子組換えされたトレニアは樹脂封入し標本にもなっている。遺伝子組換えの花を身近に見て理解を深めてもらうための試み、教材などとして商品化する予定。20セット程度を試作し大学や高校に提供することになっている
重イオンビーム育種

「重イオンビームってなに?」。大半の皆さんは素朴な疑問を持たれたのではないでしょうか。

少し化学のお話を。原子は原子核と電子で構成されています。その原子から電子をはぎ取られたものがイオンで、ヘリウムイオンよりも重いものを重イオンと呼びます。炭素原子や窒素原子などをイオン化し、加速器を使って高速に加速したものが、育種やがん治療にも使われる重イオンビームです。
以前からこの研究はされていましたが、1990年代から本腰をいれた育種への応用研究が始まりました。

重イオンビーム育種が、従来のX線やガンマ線を照射する育種よりも優れている点は、変異の強さの異なるものが段階的に得られるため、目的に合ったものを選びやすい、変異が複数の形質に及ぶことが少なく、目的以外の形質を損なわずに改良できる、などが挙げられます。これらにより短期間での効率的な育種が可能となります。

実は重イオンビームを使って育種された花は、すでにダリアや菊をはじめとし多くの品種で作りだされています。ペチュニアやバーベナなどは商品化していますので、花壇や花屋で知らずに目にしているかもしれません。

効率良い育種の追及

さらに効率的な育種として、遺伝子組換えと重イオンビームの異なる手法の組み合わせで、相乗効果を生みだす研究が行われました。
それに使われたのがトレニア。「花の研究のモデル」として注目されている花壇花です。

最初は野生型トレニアに重イオンビームを照射しました。しかし変異は起こるものの、目に見える変化はごくわずかでした。そこで遺伝子組換えで5種類の色の花を作り、それに重イオンビームを照射したところ、100種類以上もの新しい色や形の花を、2年ほどで作ることができました。

「消費者から花の色の種類を増やしてほしい、という声をよく聞きます。重イオンビームは多くのバリエーションも出やすい。また、生産者も栽培条件を変えずに品数を増やすこともできるなど、大きなメリットがたくさんあります。今後さまざまな手法との組み合わせで、時間、コストともに抑えた新品種がつくりだされることが期待されています」(花き研究所 新形質花き開発研究チーム大坪憲弘さん)

新たな手法で作り出される新品種の花、近い将来花屋で多数お目にかかれる日が楽しみです。