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日本の篤農家 第9回

福士武造

土地の自然条件を熟知し生産性を高める地下灌漑法を考案


水の条件が変われば、土の中の微生物の働きが変わる。適正な水分量を調整できれば作物はよくなります。
福士武造さん
福士武造さん
ふくし・たけぞう
昭和12年、青森県青森市に生まれる。
昭和35年、当地で就農。
昭和60年、自然農法に取り組む。
平成6年、有機栽培を開始。
平成10年、地下灌漑法に取り組みはじめる。
平成13年、有機JASの認証を受ける。
平成20年、地下灌漑法で特許取得。

転作して実った大豆。今年は10aで245kg収穫できた。
転作して実った大豆。今年は10aで245kg収穫できた。

後継ぎの長男、明宏さん。
後継ぎの長男、明宏さん。

「大豆100粒運動」の看板
「大豆100粒運動」の看板

地下灌漑システムで用いる有孔のパイプ「コルゲート管」。
地下灌漑システムで用いる有孔のパイプ「コルゲート管」。
独自に考案した地下灌漑法による田畑転換の実現に力を注いでいる、福士武造さんを訪ねるために一路青森へ。

福士さんの農地は約17ha。岩木山を望む広大なほ場で、黄金色の稲穂が頭を垂れていた。

「排水条件が悪い湿田は作業効率もよくないし、転作には向いていないのです。排水が良いほ場でも野菜や大豆の連作障害は避けられない。この大豆畑を見てください。昨年ここは水田だったんですよ」

見ると、重そうな褐色のサヤをぶら下げた大豆が、刈り入れの日を待っていた。

一般に水田で稲以外の作物を作るには、灌漑や排水など水の条件をコントロールできる乾田化への土地改良が必要になってくる。大規模な土地改良を行わなくても、水田でほかの作物を効率よく作れないものか。冬に収穫物が少ない寒冷地で、地域が安定的に収益をあげる方法を、福士さんは常に考えてきたという。

「地下灌漑法を取り入れて、初めて田畑転換で大豆を栽培したのです。地下水位をコントロールできるから湿害を受けずにすんだ。初年度は10aで260kgも収穫できました」

福士さんがいう地下灌漑法というのは、地中に作られた既存の暗きょに、給水パイプと排水パイプをつなぎ、給排水升を設置することで水位を調整するという独自の灌漑システムである。

このシステムは福士さんを発明者とし、財団法人自然農法国際研究開発センターが出願者となって申請を行い、昨年特許を取得した。

「特許料が欲しいわけじゃない。ほかの人に特許を取得されて、この方法が使えなくなったり、企業が流用して高額な値段で施工するようになれば、農家の人たちが気軽に設置できなくなる。安価で自在に設置できることが、このシステムの利点なのだから」

加えて、地下灌漑法の利点として稲の直播栽培がしやすい点が挙げられる。直播栽培だと育苗、田植えが省け、大規模化、低コスト化、省力化が望めるそうだ。さらに、地下灌漑法で転作すると地力がつき、農薬や肥料を削減できるし、連作障害も解消できるという。

福士さんはこのシステムを活用し、飼料米の不耕起直播栽培にも取り組んでいる。今後は直播の飼料米と大豆の田畑転換により、飼料米10a当たり収量700kg、大豆は300kgが目標だ。

「安定して大豆が収穫できれば、転作作物として地域ぐるみで生産できる。大豆の自給率も上げられる。まず大豆で試してみたのですが、ほかの作物でもいけるでしょう。作物に幅が出れば、地域の特産品も生まれるかもしれない」

見せてもらった大豆畑に種をまいたのは、地元の小学生である。福士さんは、料理研究家の辰巳芳子さんが提唱している「大豆100粒運動」の賛同者として、大豆畑を子どもたちに開放したのである。種まきから4カ月半。収穫も種をまいた子どもたちにしてもらうという。

稲の収穫も、子どもたちや一般希望者に、コンバインで体験させている。
「もう手で刈る時代じゃない。今のコンバインは子どもでも扱えるほど操作が簡単になった。子どもや若い人たちがそれを知っていれば、やがては新規就農を考えてもらえるのではないか」

地域農業の活性化に向けた福士さんの熱い思いが伝わってきた。

作業風景

photo:Makihiko Kumekawa

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