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農林水産省

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MAFF TOPICS(3)

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affラボ リサイクル型養液栽培システムの開発

環境に優しくコスト削減もできるシステムをめざして

affラボでは、暮らしに役立つ農林水産分野の最新研究成果を紹介します。


神奈川県農業技術センターでは、養液栽培で使用された後に産業廃棄物となるロックウールの培地の代わりにもみ殻を利用。また、植物に吸収されずに排出された培養液を光触媒で浄化し再利用するリサイクル型養液栽培システムを東京大学、トヨハシ種苗(株)、(財)神奈川科学アカデミーと共同で研究、開発を行いました。

光触媒を利用した養液栽培システム
リサイクル型養液栽培システム水田で収穫したもみ殻を培地として使用し、役割が終わったら再び水田に戻され肥料として有効利用される。排出された培養液は光触媒を通して浄化、再利用されるという2つのリサイクルが同時にできるシステムとなっている

養液栽培をしているトマトのほ場
養液栽培をしているトマトのほ場

ハウスの手前に設置された浄化システム
ハウスの手前に設置された浄化システム。温室面積1,200平方メートルにつき浄化処理水槽の設置面積は13平方メートル

網の中に入っている酸化チタンを塗ったシラスバルーン。排液に浸し浄化
網の中に入っている酸化チタンを塗ったシラスバルーン。排液に浸し浄化
無駄なく自然に優しい養液栽培を
養液栽培とは、土を使わず、肥料を溶かした養液(培養液)を与え植物を栽培する技術です。トマト、イチゴ、パプリカやバラなどがこの方法で栽培されています。土を使わないので連作障害を回避できたり、労力を軽減できたり、農地に制約がないなど、多くの利点があります。

さて、養液栽培では、植物の生育を安定させるために、植物が吸収するよりも2~3割多めに培養液を与え、吸収されなかった分は排液としています。また、土の代わりの培地であるロックウールは、古くなると交換され、産業廃棄物として処理されます。

近年、肥料の価格は上昇しており、養分が残る培養液を捨ててしまうのはもったいない。ロックウールに代わり自然に優しく、かつ安価に入手できる培地はないだろうかということで、リサイクル型養液栽培システムの研究が始まりました。

太陽の光ともみ殻を利用
培養液は余った分を集め、循環すればよい、というものではありません。植物は根から養分を吸収しながら、一方では有機物も排出しています。この中には、植物の生育を妨げる物質が含まれているのです。

排出された培養液をきれいにするために採用されたのが、*光触媒を使い有機物を分解、浄化し再利用するという方法です。

「光触媒を使おうと考えたのは、地域の自然の特徴を生かそうと思ったからです。太陽光を利用すれば比較的安価で環境にもやさしいシステムの開発が可能ではないか。また、光触媒は何回でも使える、というのも魅力でした」(神奈川県農業技術センター経営情報研究部栽培システム担当の深山陽子さん)

当初の実験段階では、酸化チタンを吹き付けたセラミックが使用されました。しかしコストが高いうえに割れやすく、農家が実際に使うのには適さない、ということでさまざまな形状の素材に酸化チタンを吹き付けて、実験が繰り返されました。

光触媒は光がなるべく広い面積に届かないと、十分な効果が得られません。試行錯誤の結果、九州のシラス台地の土を加熱により発泡させた土壌改良資材「シラスバルーン」の効果が高く、しかも安価ということで用いられることになりました。

もうひとつの課題はロックウールに代わる培地でした。身近にある素材で、利用されずに廃棄されているものを探しました。そこで目をつけたのがもみ殻です。神奈川県の水田からは、毎年約1500tのもみ殻が排出されます。これを再利用し、さらに、培地として役割を終えたあとは、再び水田に戻して堆肥として利用します。

このリサイクル型養液栽培システムは現在、システムとしての安定性や、耐久性を見極める実証試験を農家の協力のもとで行っています。解決すべき課題はまだあるようですが、近い将来に実用化し、普及させていきたいと深山さんは話してくれました。



※光触媒
光が当たることで自身はまったく変化しないが、他の物質に有機物分解、殺菌効果などさまざまな化学反応を起こさせる機能を持つ物質。このシステムで使っている酸化チタンは代表的な光触媒