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農林水産省

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日本の篤農家 第12回

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天野正彦

産消提携を実現した生産者グループの代表

生産者・消費者という垣根を越えて、農業生産を支える仕組みを作りあげた。


うちの畑はまるでパッチワーク。年間作付け計画は大変だけど楽しみでもある。
畑風景
畑は家から車で5分程度のところにある。温暖な地域なので、通年何かを作ることができるのも会が存続できた理由のひとつだ

あまの・まさひこ
あまの・まさひこ
昭和17年、愛知県半田市に生まれる。
昭和39年、新潟大学工学部卒業。
昭和48年以降、就農し、自然農法に着手。
昭和56年、明農会設立。
愛知自然農法研究会代表、
(財)自然農法国際研究開発センター理事。

農作業風景
農作業風景
農作業風景
畑の周りに生えている草や野菜の収穫残さなどに、分解を早めるための米ヌカなどを混ぜて畑にすき込んでいる。水田が1.5ha、畑は0.8ha。お米は「あいちの香り」がほとんど。現在は、奥さん、次男の和彦さんと3人で米や野菜を作っている
愛知県半田市に「産消提携」をモットーに営農しているグループがあると聞き、その会の代表、天野正彦さんを訪ねた。

会の名は「明農会」。明日の農と食を考えていこうという思いから命名された名前である。

明農会では、農薬や化学肥料、一般の有機栽培で使用する家畜の糞尿なども一切使わずに、農産物を栽培する自然農法を大前提にしている。もともと自然農法で自給用の米や野菜を作っていた農家が、消費者の求めに応え、ともに支え合う共同体として設立されたのが明農会である。

昭和56年の設立当初、会員になった農家は10軒程度。明農会の収穫物を買い支える消費者も10数軒だったという。それが2~3年で100軒を超え、現在、明農会からの購入者は200余軒。半田市を中心に10km圏内だった配達地域も、やがて20~30km圏内に拡大。

明農会から農産物を買う消費者は、地域ごとにグループを作り、そのグループリーダーの家に毎月3回、生産者から直接野菜が届けられる。野菜はその時期に収穫できたものをセットにして届ける。

「生産者は年間の栽培計画を立てて、作付けをする。そして、できたものを消費者の皆さんにまとめて配る。みんなで分け合って食べるという感じです。栽培しているのはこの地域でできるものなら何でも。それぞれの生産者が1年中、何か作っています。

核家族化して、白菜や大根を丸ごと買っても使えないという声もあったので、小ぶりな品種も作っていますよ。そういうことにも気を使いながら、うちでは30種類、50品目。畑はまるで八百屋の店先だね。生産者にとっても同じものをたくさん作るより、リスクが少なくて、いいんじゃないかな。

この地域で収穫できないものは、自然農法で栽培している全国の協力農家から送ってもらい、取りまとめて消費者に届けています」

天野さんたちの野菜はすべて露地ものである。ハウス栽培は燃料費がかかる。その経費を商品に上乗せするわけにはいかないという。「スーパーに並ぶ野菜と同じくらいの値段で提供しています。僕には自然農法だから高くて当たり前という感覚はないからね」

明農会は30年近く続いている。設立当時から参加している消費者もかなり残っているそうだ。生産者、消費者双方に魅力のあるシステムだからこそ、長く続いてきたのだろう。

「大切にしていることは『フェイス・トゥ・フェイス』、生産者と消費者がお互いに顔の見える関係でいること。だから、野菜は生産者の手で直接届けたい」という。

かつては「産消提携」の一環として「援農」という形で、消費者が畑仕事を手伝いに来ていたこともあった。最近はそれぞれが勝手に畑に立ち寄っては、草むしりをして帰る程度になったそうだが、消費者の人たちとは一緒に行楽にでかけるなど、必ず交流の場を設けているという。

畑仕事に、配達にと、忙しい日々を送っている天野さんだが、昨年半田市が開設した市民菜園の講師も務めている。農薬も化学肥料も使わない、環境にやさしい市民菜園を目指して、まず作物にとって望ましい土づくりから種まき、苗の植え方、最終的には菜園で生ゴミのリサイクルを行えるようになるまで、広く深く指導している。

Photo:Atsushi Soumi