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MAFF TOPICS(3)

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affラボ 世界初 「ウナギの完全養殖」に成功


長年に渡って研究が続けられていた「ウナギの完全養殖」の悲願がついに達成されました。
(独)水産総合研究センターで、人工授精により生まれ育ったウナギの2世が誕生、現在も順調に生育しています。

ウナギ完全養殖の流れ

ビーカーに入った受精卵をふ化水槽に移す。飼育室はウナギの仔魚が生息する深海の環境に近づけるため、普段は真っ暗だが餌を与えるときや作業をするときには、青い光をつける

ビーカーに入った受精卵をふ化水槽に移す。飼育室はウナギの仔魚が生息する深海の環境に近づけるため、普段は真っ暗だが餌を与えるときや作業をするときには、青い光をつける

ふ化後9日目の仔魚、体長は7.5mmに成長

ふ化後9日目の仔魚、体長は7.5mmに成長

ふ化後2日目の仔魚、体長はわずか4.4mm

ふ化後2日目の仔魚、体長はわずか4.4mm

飼育したウナギがメスになっているか検査をして調べる

飼育したウナギがメスになっているか検査をして調べる

待ち望まれていた成果
(独)水産総合研究センター(以下、水研センター)は4月上旬「実験室で生まれ成長したウナギのオスとメスから精子と卵を採取し、人工授精を行った受精卵から、2世代目となる※仔魚(しぎょ)をふ化した」と、発表しました。

この「ウナギの完全養殖」の成功は、世界初の快挙です。

ウナギは古くから日本の食文化に浸透している魚です。ところが近年では、養殖用の稚魚(シラスウナギ)の捕獲量が世界的に減少しており、ウナギ養殖に必要な量を供給できないという事態も起こりました。こうした状況から、人工的に稚魚を生産する技術の開発と確立は、不安定な天然資源に頼らずにウナギの養殖を実現する方法として、養殖関係者も長い間待ち望んでいたことでした。

すべてが手探りだった研究

「ウナギの完全養殖」が困難だった理由は、ウナギの生育環境や生態のデータがまったくなかったことにあります。水研センター養殖研究所では、卵をふ化させることはすでに成功していました。

実際に卵から稚魚に育てることに成功したのは2002年。その後、実験室生まれのウナギを親として次世代を誕生させるべく、養殖研究所と志布志(しぶし)栽培漁業センターで稚魚を継続して育成。今年はじめに2~5年経過し全長45~70となった親候補の魚たちにホルモン剤を投与し、人工的に成熟を促進させました。

成熟したメスから採取した受精卵は25万粒、ふ化したのは19万尾でした。6月現在、4000尾が順調に育ち、2cmほどに成長しています。

「研究は試行錯誤で膨大な時間を要しました。稚魚は生まれたときにはオス、メスの区別はありません。環境により性別が決定するのです。何もしないと人工ふ化でも天然でも、大半がオスになってしまいます。そのためホルモンを餌に混ぜ、メスを作り出す必要もありました。また稚魚は一度に大量に誕生させられません。これを安定して育てるのは非常に難しいことです。天然稚魚は大量に捕獲して養殖場の池に放つと、それぞれが争って餌を食べます。ところが少数の稚魚だとお互いに牽制しあって餌を食べてくれないのです」と、同センター養殖研究所生産技術部繁殖研究グループの田中秀樹さんは完全養殖の難しさを語ります。

残された課題もまだ多く、今後は飼育に適したもの、病気に強い、成長が良いなどの特徴を持ったウナギの育種や、安定して稚魚を生産する技術の開発を進めるそうです。土用の丑の日は欠かせないウナギ。完全養殖により安定して食卓に上る日が来るのも近いかもしれません。

※仔魚:幼生ともいい魚類の成長の初期の発育段階

写真提供:(独)水産総合研究センター養殖研究所

独立法人水産総合研究センター http://www.fra.affrc.go.jp/