ホーム > 報道・広報 > 2012年aff(あふ)5月号 > aff(あふ)バックナンバー > 10年8月号目次 > affインタビュー 第40回


ここから本文です。


affインタビュー 第40回

井尻憲一 さん

スペースシャトル「コロンビア号」に乗り込んだ日本人初の女性宇宙飛行士・向井千秋さんとともに、宇宙メダカの実験を行った東京大学の井尻憲一教授にお話を聞きました。

現代は、地球上で進化を遂げた我々が宇宙を新たなフロンティアとする時代です。
井尻憲一さん
井尻憲一
いじり・けんいち/昭和24年、奈良県に生まれる。昭和48年、東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。現在、東京大学アイソトープ総合センター教授。理学博士。

井尻憲一さん

井尻憲一さん

宇宙メダカ実験のすべて

宇宙メダカのホームページ
http://cosmo.ric.u-tokyo.ac.jp/spacemedaka/J.html
*宇宙メダカを飼育してみたい方は下記のホームページをご覧ください。
宇宙メダカ研究会
http://www.geocities.co.jp/Technopolis/7315/
人類が宇宙で暮らすことを考えて
平成6年7月、向井千秋さんとともに4匹のメダカがスペースシャトルで宇宙に旅立った。無重力の中で脊椎動物として初めて産卵に成功。その実験を企画したのが井尻憲一さんである。

井尻さんの専門は放射線生物学。地球上のみならず、宇宙において放射線が生物にどういう影響を及ぼすかが研究課題である。

「人類が将来宇宙で暮らすことを考えると、宇宙で子孫を増やせるかというのは大変興味深いテーマですよね。放射線の影響ということも含め、あらゆる意味で」

メダカの宇宙滞在期間は15日間だったので、すぐに放射線の影響が出ないだろうことは分かっていたが、宇宙での脊椎動物の実験が必要だった。

「普通なら我々はマウスなどを実験に使いますが、無重力でマウスの繁殖実験はできないでしょ。魚なら水中で無重力に近い状態で生息している。なかでもメダカは短期間に繁殖行動が観察でき、しかも小さい魚なので省スペースで雌雄を飼うことができます。

もしメダカが宇宙で正常な繁殖行動をとったとしたら、メダカは人間に比べて世代交代が早いので、その後、宇宙における放射線の遺伝的な影響も調べやすい。そこでメダカを実験対象にしたわけです」

宇宙飛行士用のメダカ訓練ビデオが作成され、メダカの宇宙食も研究、開発される。

スペースシャトルに乗ったメダカは「宇宙メダカ」と呼ばれ、その映像はリアルタイムで井尻さんのもとに届けられた。

宇宙メダカは宇宙滞在中に計43個の卵を産んだ。8匹が宇宙でふ化し、30個が地球に帰ってからふ化。残りの5個は未受精卵だったのか、ふ化しなかったそうだ。

宇宙で魚の養殖ができる!!?
実験は見事に成功したわけだが、この成功の最大の理由を井尻さんはこう話してくれた。

「何度かの実験で、無重力になるとメダカは、ルーピングと呼ばれる状態になることが分かった。ルーピングというのは、水中でぐるぐる回転してしまうことです。宇宙酔いの状態になってしまうわけです。ところが、遺伝的に無重力に強いメダカがいた。無重力でもぐるぐる回らないメダカがいることを発見したのです。

そして、無重力に強い系統のメダカ2000匹の中から、宇宙実験に最適なメダカを選ぶ厳しい選抜テストを行い、合格した4匹が宇宙に旅立ったのです」

スペースシャトルに乗るには、飛行士だけでなく、メダカも厳しく選抜されていたのである。

「この実験によって、長期の実験ができる宇宙ステーションで、メダカを何世代も飼育する可能性が開けたわけです。そしてこれは、将来人類が宇宙で生活していくときのために、宇宙での魚類養殖の実現に向けた基礎データとなりました」

宇宙での魚類の養殖は、宇宙生活における人類のタンパク資源の確保という点からも、重要な課題だと井尻さんはいう。とくに日本は魚肉からさまざまな加工品を作る技術が発達しているため、大いに期待できるというのだ。

「宇宙で魚の養殖が可能だなんて、なんか夢がある話でしょ」
と井尻さんはほほ笑んだ。

夢があるといえば、宇宙から帰還したメダカはたくさんの子孫を残している。あれから十数年経っているにもかかわらず、まだ日本中の小中学校などで宇宙メダカの子孫が飼育されているという。

ページトップへ


アクセス・地図