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農林水産省

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特集 生物多様性(1)

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生命を育む里・山・海


今年10月、愛知県名古屋市で「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」が開催されます。
「COP10」の開催を契機として、わが国でも多くの人たちが改めて生物多様性に目を向けており、その保全活動を進めていこうという機運が高まっています。
農林水産業はその持続的な営みを通じて、里地・里山・里海といった特有の自然環境を形成し、多様な動植物に生息・生育環境を提供しています。
今後、さらに生物多様性の保全に貢献するために、どのような取り組みが必要となっているか。各分野における保全活動の事例を通して、考えてみましょう。
生物多様性

林 良博

林 良博(はやし・よしひろ)
東京農業大学農学部バイオセラピー学科動物介在療法学研究室教授。農林水産省生物多様性戦略検討会座長
生物多様性とは
農林水産省生物多様性戦略検討会の座長を務められている東京農業大学大学院の林良博教授にお話を聞きました。

生物多様性の危機
生物多様性とは、生きものの種類の多さと、その生きものたちによって成り立っている生態系の豊かさやバランスが保たれている状態、さらに過去から未来へと伝わる遺伝子の多様さまでを含めた幅広い概念です。

生物多様性には3つの多様性があります。ひとつは、森林、里地・里山、藻場・干潟などさまざまな自然環境に応じた「生態系の多様性」。次に、同じ生態系であっても、動物や植物、土壌中の微生物に至るまで、さまざまな生きものが生息している「種の多様性」。3つ目が同一種であっても、姿・形の違い、病気への耐性など個体差を生み出す「遺伝子の多様性」です。

生物多様性から私たちはたくさんの恩恵を受けていますが、経済成長を目指した20世紀の社会は、生物多様性に大きなダメージを与えてきました。乱開発により生きものたちの生息域の減少、種の減少や絶滅を招きました。また耕作放棄地の増加によって、田園地域などに特有の生態系の種が減少する一方で、鳥獣被害が深刻化しました。人の手によって持ち込まれた外来種の増加によって、在来種の減少が顕著になっています。

私たちが今、一体となって生物多様性の保全に努めなくては、取り返しのつかないことになってしまうのです。

「つながり」を大切にする
生物多様性戦略検討会では、農林水産業に携わる人たち、消費者、行政の3者に向けて具体的な提案を行いました。ここで、農林水産業に携わる人たち、消費者の皆さんに対する提案を列記しておきましょう。

農林水産業に携わる人たちに対しては「農林水産業が育んでいる多くの生きものの命の循環に目を向けること」「農林水産物の生産と同時に、多くの生きものを育んでいることに誇りをもち、それを発信すること」など。

また消費者の皆さんには「田んぼや畑、森や海辺に出かけ、農林水産業の営みやそこに生息する生きものに触れ、食と生物多様性のつながりを実感すること」「食が国内だけでなく、世界の生物多様性とつながっていることを考え、地球環境に配慮した消費行動を行うこと」などです。

生物多様性のキーワードは「つながり」です。人と生きものとのつながり、都市と農山漁村とのつながり、海と山とのつながり、すべてが循環しているのです。それが断たれたときにバランスは崩れてしまいます。一人ひとりが身近なことに引き寄せて考えてみることが大切です。


COP10・MOP5のシンボルマーク
「COP10」「MOP5」を知っていますか
「COP」とは「Conference of the Parties」の頭文字をとった呼称で、生物多様性条約の締約国が、2年ごとに集まって行う国際会議のことです。「生物多様性条約」とは、多様な生きものと生息環境を守り、その恵みを将来にわたって持続的に利用するために結ばれた条約です。

今年10回目を迎える締約国会議「COP10」の議長国は日本。10月18日から29日まで愛知県名古屋市で開催され、生物多様性の保全に向けた「2010年目標」の達成状況の評価やその後の目標設定などについて話し合われます。

また、「COP10」に先立ち、同じ会場で「MOP(Meeting of the Parties)5」と呼ばれる国際会議が開催されます。「MOP5」とは、生物多様性条約に基づくカルタヘナ議定書の締約国が集まる第5回締約国会議のことです。「カルタヘナ議定書」とは、生物多様性の保全や持続可能な利用に悪影響を及ぼさないよう、遺伝子組換え生物の国境を越える移送や利用などにおいて講じるべき措置を規定したものです。「COP10」の議長は環境大臣が務めますが、「MOP5」の議長は農林水産大臣が務めます。「MOP5」では、遺伝子組換え生物の国境を越える移動によって、生物多様性の保全および持続可能な利用に損害が生じた場合、その責任と救済をどうするかというルールなどについて議論されます。