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農林水産省

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お宝!日本の「郷土」食 4

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古今山陰の農漁連携

美味しさ合わせ技、石見の国 銀しゃり和布


石見の国 銀しゃり和布

石見の国 銀しゃり和布 400円

渡邊水産食品

島根県太田市久手町波根西1697
電話:0854-82-8011
http://www.watanabe-ss.jp

若林酒造

島根県太田市温泉津町小浜口73
電話:0855-65-2007
http://www.kaishun.co.jp

 

文・写真 山本洋子

わかめなのに、薄い色付きガラスのよう。もろく、はかなく、パリッとして、透かすと向こう側が見えてしまうくらい。それが山陰地方名産「板わかめ」の特徴。直火であぶり、香ばしく焼けたアツアツを手で揉み、熱いご飯にふりかける。もわっとくる磯の香りと塩気がほどよく、これほどご飯が進むものはないと思う。しかし、この板わかめ、食べ方にちょっとしたコツがある。茎の部分が薄くて硬く、うっかり芯を縦にして口に入れると、歯茎に刺さって痛い目に合うことも!?

板わかめは素干しだが、わかめ加工の大部分は塩蔵もしくはカットわかめ等の加熱乾燥。板わかめのように素干しで薄いシート状に乾燥させるのは全国でも珍しい。

西田の秋ヨズクハデ
島根県温泉津(ゆのつ)・開春若林酒造の若林邦宏さんが酒の会に持参するのがこの板わかめ。磯の香り、天然の塩味が米の酒にしみじみ合うという。ご飯と相性がいいのだから、米の酒とも相性がいいのは当然。数ある酒の中でも板わかめと特に相性が良いというのが「西田」。おだやかな米の甘みを感じるいいお酒。人名のようだが地域名という。「西田で栽培した山田錦を、地元古来のヨズクハデ干しにし、酵母無添加で生もと仕込みした純米酒です」と若林さん。

干した姿はミミズク
温泉津と石見銀山を結ぶ古道・銀山街道沿いにある西田地区。ヨズクとはミミズクのことで、ヨズクハデは稲を干すその形状がミミズクに似ていることから呼ばれるようになったという。

この地域は海風が強く、普通のはさがけでは倒れやすい。そこで漁師が海岸で魚網を干す干し方を取り入れ、風に強い米の干し方を研究。ヨズクハデで干すと、海風+天日の力で甘みがしっかりあるうまい米になるという。農漁連携の賜物がヨズクハデ干し米なのだ。

いい米から、うまい酒。地元の合わせ技で誕生した酒に、地の肴、板わかめが合わないわけがない。

1800年以上も前から
日御碕神社では旧暦1月5日の厳寒の海で神官が執り行う「和布刈神事」(めかりしんじ)という行事がある。なんと1800年以上も続いている。そんな大昔から伝わる伝統食品板わかめだが、ひと頃は輸入品頼り。アミノ酸を使ったものがほとんどだった。だが、近年消費者の国産指向で輸入品は減りつつあり、徐々に無添加のものが増えてきている。

そして、硬い芯部分をなくした製品が現れた。板わかめは茎を芯にして形づくりし板状に干すため、茎部分を外すことは無理とされていた。ところが、若林酒造からほど近い渡邊水産食品では、この芯をはずす加工法を開発。商品名にもこだわった。それまでは「板わかめ」という名の商品ばかりだったが、新製品には地元を意識し「石見の国 銀しゃり和布」と命名。

こうして伝統食は時代に合わせ、少しずつ変化しながら、後世に残っていくのだと感じる。ご飯に、そして米の酒にぴったりな山陰生まれの板わかめ。潮の香りからは、日本海の青い広がりが蘇ってくる。