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連載13 こぐれひでこ の いただきもの絵日記

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大根


マイワシ
文・イラストこぐれひでこ


こぐれひでこ
profile
イラストレーター&エッセイスト。『こぐれひでこのおいしい画帳』(東京書籍)、『こぐれひでこのごはん日記』春夏篇・秋冬篇(早川書房)、『私んちにくる?』(扶桑社)、『こぐれの家にようこそ』(早川書房)ほか、著書は30冊を超える。現在は、女性向けの人気情報サイト『カフェグローブ』で、ごはんをテーマにした『こぐれひでこの毎日ごはん』を、また遊び心をテーマにした情報サイト『あそびすと』でも連載中。
大根にはお世話になっている。みそ汁の具、大根おろし、おでんの大根、ふろふき大根、刺身のつま、鍋もの、ブリ大根、たくあん、ぬか漬け、切り干し大根、菜めし、サラダ、なます……。ちょっと考えただけで大根料理はこんなにたくさん思い出すことができる。多いだけじゃなく、それぞれの姿を頭に浮かべると、それぞれ味の違いがよみがえって、無性に食べたくなってくる。大根は日本人にとって、なくてはならない食品。もしかしたらイチバン仲良しの食品なのではあるまいか。

季節を問わず、いつも身近な場所に存在して「私を食べて!」と私たちに声をかけてくれるので、気軽な気分で大根のお世話になっているが、もうちょっと感謝したほうがいいかもしれないな、とたまに思う。でも、思わず大根に感謝してしまう寒い季節がやってきた。冬に収穫される大根のみずみずしさと甘さを感じたときは、えもいわれぬ幸せ感に包まれる。

1300年近くも前に記された「日本書紀」にも「おほね」という名で登場するそうだから、日本人と大根のつきあいは長いんだなあ、と感心していたら「古代エジプトではピラミッドを造る労働者の食料となっていた」という記述をインターネット上に発見した。もしもその説が正しいならば4000年以上も前の話……、大根とエジプトとのつきあいの長さは日本どころの話ではない。まあ、今でもエジプトに大根を食べる習慣が残っていればという話だが……。

日本では1300年間、おそらくとぎれることなく日本人の食生活に重要な位置を占めてきた大根。その食べ方も時代によってさまざまに変化してきたことだろう。短い歴史しかない我が家でも、大根の食べ方には流行があり、3年前から首位の座を死守し続けているのは「しゃぶしゃぶ」。

ある夜、ぼんやりテレビを観ていたら、湯をはった鍋に大量の大根おろしを投入しているシーンが映し出され、目が釘付けになった。投入されている大根おろしの量が尋常ではない。鍋に入れる具はしゃぶしゃぶ用の黒豚とレタスだけ。大根おろしの鍋に肉を3回揺り動かしたらポン酢醤油で食べる。レタスを3回揺り動かしたらポン酢醤油で食べる。ただそれだけの料理なのだが、おいしそうだったので翌日やってみたら、大根おろしの汁の中に脂を脱ぎ捨てた肉は味わい深く軟らかで、さらりとしたおいしさ。時々レタスを食べて味を変え、またもや肉をしゃぶしゃぶ。このおいしさは大根おろし抜きでは生まれない。この鍋は今年も首位を走り続けることだろう。