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MAFF TOPICS(3)

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affラボ 世界で初めて

大型二枚貝「タイラギ」の養殖に成功


「タイラギ」は大型の二枚貝で大きな貝柱が食用になり、高級食材として刺身や寿司ネタなどで提供されています。かつて有明海は「タイラギ」の漁場として有名でしたが、現在漁獲量は激減。
地元の漁業者の熱い要望もあり、(独)水産総合研究センター西海区水産研究所が中心となり「タイラギ」の養殖技術の研究に取り組みました。

養殖用のカゴ

養殖用のカゴ。卵からふ化させた幼生を育てる技術は、まだ完全とはいえず、人工種苗の生産技術の向上は今後の課題

養殖用のカゴ

養殖用のカゴ。ネット状の足糸(二枚貝が岩などに付着するために出す分泌液)固定器を底に入れ、海中にタイラギが飛び出さないよう工夫されている

養殖ネットは真珠養殖ネットをタイラギに合わせて改良したもの

養殖ネットは真珠養殖ネットをタイラギに合わせて改良したもの

左が天然物、右が養殖物のタイラギ

左が天然物、右が養殖物のタイラギ。貝柱の重量は天然物の2倍。ありえない大きさと漁業関係者も驚嘆した

有明海の「タイラギ」を再び
独特の食感をもつ「タイラギ」は今が旬。有明海はかつて「タイラギ」の一大産地で、1961年には3万5000トンの漁獲量を誇っていました。ところがその後、漁獲量は年々減少の一途をたどり2000年以降はほとんど獲れなくなってしまいました。減少理由は複数あると考えられますが、一番影響が大きいといわれるのが海底の環境悪化による*浮泥の増加です。「タイラギ」は海底に刺さったような状態で生息していますが、浮泥が増えると海底に留まることが難しくなってしまいます。ほかにも獲りすぎやナルトビエイなどによる食害、原因不明の突然死である「立ち枯れ斃死(へいし)」も要因であるといわれています。

(独)水産総合研究センター西海区水産研究所は「タイラギ」が獲れなくなってしまった深刻な現状と、今後も再び獲れるという可能性が見込まれないこと、また漁業関係者からの強い要望もあったことから、「タイラギ」の養殖技術の研究を2006年度から開始しました。

天然ものより大きな貝柱
「タイラギ」の養殖には真珠の養殖技術が応用されました。真珠の養殖同様「タイラギ」をカゴに入れたり、ネットに吊るしたりする「垂下養殖」という方法です。しかし海底から「タイラギ」を引き抜いて海中に吊るしただけでは、波の影響やほかの海洋生物の付着など、急激な環境の変化に耐えられず成長を阻害してしまいます。

そこで真珠養殖用のカゴを改良し海底を模した環境をつくること、ほかの海洋生物が付着しないようシリコン系の防汚(ぼうお)材を使うことでこれらの問題に対処しました。

養殖の「タイラギ」は天然貝と同様の成長を示します。しかし同じ大きさの貝の場合、養殖貝の貝柱は天然貝の約2倍の重量になります。また養殖中の残存率も7~8割と天然物よりも高くなっています。味や風味も天然貝に劣りません。

「研究中に苦労したのは、有明海は非常に浅いため、ネットやカゴが海底に着いてしまうことです。養殖漁場の条件としては良好な場所ではありません。またフジツボやホヤなどの付着物の量がすさまじく、少しでも気を抜くとタイラギが「フジツボ団子」になってしまいました。いまは実用化に向けて検証をしていますが、最も試験結果の良い新型カゴやネットは費用がかさみます。コストダウンと、人工種苗の安定供給ための生産技術については現在も研究を継続しており、今後の課題です」((独)水産総合研究センター西海区水産研究所 松山幸彦さん)

「タイラギ」は食感がシャリッとし、ほのかな甘みがあります。一般には馴染みのない高級食材ですが、この養殖技術が開発されたことで増産が期待され、より多くの消費者に届く日も近そうです。

人工的に生産されたタイラギの成長。
人工的に生産されたタイラギの成長。
養殖ネットに入る大きさである殻長100mmになるまで、室内の水槽で育てる(中間育成)。
その後養殖ネットやカゴに入れ海に戻す。ふ化後14~17カ月で180mm以上になり出荷サイズとなる



*浮泥(ふでい)
海底を漂っている細かな泥と生物の死骸が混じったもの。海の濁りの元になるだけでなく、量が多いと生物にとって必要な酸素を奪って住みにくい環境にしてしまう