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MAFF TOPICS(3)

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affラボ 偶然の発見から開発された夢のスギ

無花粉スギ「はるよこい」


冬が終わり心待ちにしていた春。しかし、スギ花粉に悩む人にとっては憂欝な季節の始まり。
いまや大きな問題となっている花粉症の対策として、花粉が無い新品種のスギ「はるよこい」が
富山県農林水産総合技術センター森林研究所により開発されました。

無花粉スギ 新品種「はるよこい」植裁から3年後の様子

無花粉スギ 新品種「はるよこい」植裁から3年後の様子

「はるよこい」(左)と正常なスギ(右)

「はるよこい」(左)と正常なスギ(右)の雄花の比較。「はるよこい」は花粉がなく葯(花粉を作る袋状の器官)が収縮している。正常なスギは花粉が隙間なく葯に詰まっているのが分かる

左が正常な花粉、右が無花粉スギの崩壊した花粉

花粉の顕微鏡写真。左が正常な花粉、右が無花粉スギの崩壊した花粉

奇跡的な発見

花粉が飛散し始める毎年2月から4月にかけては、花粉症の人にとってはつらい時期です。花粉症の要因となる植物はさまざまですが、我が国ではスギ花粉による花粉症がその大半を占めています。

スギの花は風で花粉を運ぶ風媒花。無駄を承知で花粉を大量に生産し、大気中に放出させる性質を持っています。現在、戦後に多数植えられたスギが成木となり花粉を大量に飛散させているのです。

しかし、スギは日本の林業にとって欠かせない樹木。花粉症対策のためにも、花粉が少なく飛散しないスギの開発が求められていました。そんなおり、富山県農林水産総合技術センター森林研究所は、平成4年に全国に先駆け全く花粉を飛散させない、無花粉スギを発見しました。スギ花粉情報を出すために、標高別5か所に植えてあるスギ林の開花試験の調査の最中に、観察地点の一か所である神社の境内で1本だけ花粉を出さないスギを見つけたのです。

雄花の機能は異常でも繁殖能力は正常
このスギは外見上、普通のスギと変わらず、雄花も同様に形成されていきます。ところが2月下旬から3月上旬の開花する時期になっても、雄花に花粉は全くありませんでした。

さらに花粉を作る雄花の機能は異常でも、種子を作る雌花の機能は正常であることも分かりました。こうした変異体でもっとも重要なのは、特有の性質が次の世代に遺伝するか、ということです。発見された無花粉スギから取った種子で苗を育て、それぞれ花粉の有無を調べる実験をすると、無花粉の性質を持った苗が何本も育ち遺伝することも証明されました。

この無花粉スギをもとに交配し、品種改良が行われ、「花粉がない」「さし木の発根能力が高い」という特徴を持った新品種が平成16年に開発され、「はるよこい」と名付けられました。

「無花粉スギの品種改良は継続して進んでいます。今後の課題はとにかく大量増殖で、少なくとも年間で何万本の苗の安定生産ができるような体制を整えたいです」(同センター斎藤真己さん)

「はるよこい」は、平成23年秋から都市部の緑化用に500~1000本のさし木苗が、24年から林業用に5000~一万本の種子から育てられた苗がそれぞれ普及される予定です。

こうした花粉対策に有効なスギの品種開発は、他の研究機関でも進められており、平成17年には(独)森林総合研究所でも花粉を生産しない林業用のスギ品種として「爽春」が開発されました。「爽春」の原種は、関東とその近隣都県に配布されています。これらの無花粉スギの普及には、まだ時間がかかりますが、スギ花粉の少ない春に向けた取り組みは着実に進んでいます。