このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

特集1 応援しよう!国産の力(4)

  • 印刷

国産にこだわる、ある佃煮屋の活動

産地と消費者の架け橋になりたい


かつて「江戸前」といわれた東京湾で獲れる豊かな魚介類は、佃煮や握り鮨など、江戸固有の食文化を育みました。
今、佃煮にするアサリの多くは中国からの輸入品です。
東京湾でアサリをはじめとする魚介類を収獲している漁師たちと支え合いながら、消費者とのパイプ役として、さまざまな活動に取り組んでいる佃煮屋店主を訪ねました。


遠忠商店3代目の宮島一晃さん

遠忠商店3代目の宮島一晃さん

小さな瓶に詰められ、手頃な価格で売られている佃煮の数々。贈答用にセット販売もしている

小さな瓶に詰められ、手頃な価格で売られている佃煮の数々。贈答用にセット販売もしている

小さな瓶に詰められ、手頃な価格で売られている佃煮の数々。贈答用にセット販売もしている

遠忠商店の佃煮

化学調味料、保存料、着色料などの添加物は一切使わず、直火でふっくら炊き上げた遠忠商店の佃煮。昔ながらの量り売りのコーナーも健在だ

遠忠商店

遠忠商店
東京都中央区日本橋蛎殻町1-30-10
TEL:03-6661-6021
http://enchuu.web.fc2.com/

東京湾

親の代から江戸前の漁師だった澤田洋一さん。かつては海苔も養殖していたという

親の代から江戸前の漁師だった澤田洋一さん。かつては海苔も養殖していたという

日本ではクラムチャウダーにハマグリやアサリを用いているが、本場アメリカではクラムチャウダーといえば、ホンビノス貝を使用するのが定番

日本ではクラムチャウダーにハマグリやアサリを用いているが、本場アメリカではクラムチャウダーといえば、ホンビノス貝を使用するのが定番

10年くらい前から東京湾に生息し始めたホンビノス貝。その後定着したが、東京近郊以外あまり流通していない

10年くらい前から東京湾に生息し始めたホンビノス貝。その後定着したが、東京近郊以外あまり流通していない
「江戸前」を大切にするわけ
訪ねたのは東京・日本橋蛎殻町。安産・子授け・水難除けなどの御利益で知られる水天宮がある町です。ここに店舗を構える遠忠(えんちゅう)商店は大正2年創業の老舗の佃煮屋です。

蒸気釜を使って調理している佃煮・惣菜メーカーが多いなか、遠忠商店では創業以来、伝統の直火釜で佃煮や惣菜を製造しています。もっとも大切にしていることは、江戸前の魚介類をはじめ、原材料や調味料に国産を使用するということ。

3代目の宮島一晃さんはその思いについて、次のように語ってくれました。

「私はここで生れ育ちました。1階が工場で2階が住まいで、住み込みの従業員もいました。そのころは当たり前に東京湾で獲れた魚介類を炊いて佃煮を作っていました。それが今、多くの佃煮屋がほとんど輸入材料を使って価格競争をしています。アサリなどは日本より人件費の安い海外の工場でむき身にされ、それを冷凍にして運んでくる。簡単で安価な佃煮はできますが、そこには江戸前の漁師たちの存在はありません」

昔当たり前だったことが、なぜできないのかと宮島さんは考えました。

「東京は大都市になり、住んでいる若い人達には東京湾が『里海』という感覚はないかもしれません。けれど東京湾は、そこに面して暮らす者にとって大切な『里海』です。私はもっと江戸前を大切にしたいと思いました。そして国産の原料にこだわろうと思ったのです」

顔の見える関係が信頼を生む
それ以来、宮島さんは東京湾沿岸の生産者を訪ね歩きました。当初は佃煮用の生海苔を卸してくれる生産者はなかなかいませんでしたが、アサリやチリメンを直接買い付けて行くうちに、顔が見える関係が次々と広がって行きました。「市場では引き手が少なく余ってしまった」と聞き、宮島さんは値踏みすることなく、残った海産物をすべて現金で買い取ったこともありました。

「安心して消費者の皆さんに届けられる商品を作るために、信頼できる生産者さんを選んでいますが、その人たちが安定的に漁を続けたり、農作物を作り続けるためには、私たちが買い支えるという気持ちが大切だと思っています」

国内生産力を後押しするために
東京湾では、もともと日本には存在していなかった「ホンビノス貝」という二枚貝が漁獲されるようになりました。ホンビノス貝は北米大陸から船舶のバラスト水(船底に積む、重しの役割をする水)に混じって運ばれてきた外来種ですが、アサリやハマグリのように食味がよく、現在では食材として定着しています。

宮島さんはアサリだけでなく、ホンビノス貝の佃煮も作っています。ホンビノス貝を水揚げしている市川市行徳漁業協同組合の澤田洋一さんに話を聞きました。

「昨年は青潮で旬の時期にアサリが不漁だったけど、ホンビノス貝は一年中獲れるから、漁師にとってはありがたい魚介類だよ。宮島さんは採算度外視で、ホンビノス貝の佃煮を作って売ってくれているんだよね」

また、宮島さんは魚介類だけでなく、各地の果樹や山菜などの特産物を利用した加工品を提案し、「第一次産業応援商品」という位置づけで、地域の6次産業化を進める手助けもしています。

「いったん農地や漁場を手放したら、再建するのは容易なことではありませんからね。やはり国産の農産物、水産物を私たちが消費することが、生産力を後押しする早道なのではないでしょうか」

宮島さんはこれからも国産にこだわり、商品開発も積極的に進めていくそうです。