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特集1 世界農業遺産(1)

農業・農村の魅力を次世代に


今年6月、伝統的な農業や文化風習・生物多様性の保全を目的に
国際連合食糧農業機関(FAO)が認定する「世界農業遺産」(GIAHS)に、新潟県の佐渡と石川県の能登が選ばれました。
2002(平成14)年に始まったこの制度で、先進国の地域から認定されるのは初めてのことです。
今回は世界農業遺産に認定された佐渡と能登にスポットを当てながら、農山漁村が地域の文化や生物多様性の維持などに果たす役割について紹介します。
世界農業遺産

A.チロエ農業/チリ

A.チロエ農業/チリ
チリの南に位置するチロエ諸島は、生物多様性の宝庫であり、ばれいしょの原産地のひとつとしても知られています。先住民のチロエ、ウリーチェ族、メスティーソの人々によって、およそ200種の地域固有のばれいしょが現在でも生産されており、その先祖伝来の慣行は、主に女性により何世代にもわたって口伝されています。

  B.アンデス農業/ペルー

B.アンデス農業/ペルー
ペルーのアンデスは、ばれいしょの主要な原産地とされています。農家はばれいしょ畑の周りに溝を掘り、そこに水を溜めておきます。昼間の日射で温められた水は、気温の下がる夜間に霜よけのために畑に流されるのです。これは、何世紀にもわたって続けられてきた、海抜4,000mの厳しい環境に適した理想的な農業システムです。

  C.イフガオの棚田/フィリピン

C.イフガオの棚田/フィリピン
フィリピン・イフガオの傾斜地にある棚田では、水資源の共有、海抜1,000mの環境にも耐えられる水稲品種の育成によって、巧みなかんがいシステムが発展してきました。この棚田は何世代にもわたるイフガオ農民の努力の結晶なのです。なお、イフガオの棚田はユネスコの世界遺産にも登録されています。

D.カシミールのサフラン農業/インド

D.カシミールのサフラン農業/インド
カシミール地方では固有のサフラン栽培が2500年以上受け継がれており、現在も17,000家族が取り組んでいます。カシミールのサフランはカロテノイドの含有量が高く、サフランライスや鎮痛作用のある生薬として使われています。生産性や研究開発能力、マーケティング、品質と価格の向上、直販などの取り組みを積極的に進めています。

  E.マサイの伝統/タンザニア・ケニア

E.マサイの伝統/タンザニア・ケニア
タンザニア・ケニアに暮らすマサイ・タバド族は、先住民の間に古くから伝わる慣習や伝統、知識をもとに、長く牧畜農業を営んできました。現在もマサイ・タバド族の人々は、民族に伝わる知恵や地域における経験を生かしながら、社会や環境の変化に適応しています。

  F.マグリブのオアシス/F.アルジェリア、チュニジア

F.マグリブのオアシス/F.アルジェリア、チュニジア
アルジェリアとチュニジアにまたがるマグリブのオアシスは、厳しい天候の中、何千年にもわたって発展してきた多様性豊かで生産性の高いシステムです。ここでは、かんがい施設に支えられたナツメヤシが大半を占める中、多様な樹木や作物が共存し、驚くほどさまざまな果物や野菜が生産されています。

G.水田養魚/中国

G.水田養魚/中国
2000年前の漢王朝時代の土器には、池から水田に泳いでいく魚の姿が描かれています。青田県の水田養魚システムでは、田魚が水田の害虫や雑草を防いだり、代替肥料となるなど、地域農業のコスト削減につながっています。田魚は日々の食料として、また収入源として、この地域でさまざまな役割を担っています。

  H.ハニ族の棚田/中国

H.ハニ族の棚田/中国
少数民族・ハニ族の集落は山腹に作られていますが、集落より上は森林に利用され、集落より下に棚田が形成されています。貯水池がないにもかかわらず、給水量が豊富なことに驚かされます。森林、棚田、川などの自然と人間の関係が、特有の農業技術や環境保全、昔から行われている習慣を持続させているのです。

  I.万年の伝統稲作/中国

I.万年の伝統稲作/中国
万年県の人々は古くから伝統的な米の文化を継承しています。慣習や食、言語など文化的な面でも実に多様です。万年県では、伝統的な米の在来種を栽培する水田と、治山治水の役割を果たす周囲の森林が、生物多様性の保全に貢献する持続可能な農業環境をもたらしています。

J.トン族の稲作・養魚・養鴨/中国

J.トン族の稲作・養魚・養鴨/中国
少数民族・トン族は1000年以上もの間、水田での養魚・養鴨システムを継続している唯一の民族です。水田での養魚・養鴨は地域の生物多様性や水、土壌の保全、病害虫の抑制、気候への適応などに寄与しています。また、伝統的農業による米や多彩な農産物の生産とともに歌や祭りなど、多くの伝統文化を守っています。

 

 


「世界農業遺産」とは
「世界農業遺産」とは、国際連合食糧農業機関が立ち上げた正確なプロジェクト名は、「Globally Important Agricultural Heritage Systems」。頭文字を取って「GIAHS(ジアス)」と呼ばれています。ここでは一般の略称である「世界農業遺産」とします。

地域環境を生かした伝統的農法や、生物多様性が守られた土地利用のシステムを世界に残す目的で創設され、主に途上国に向けた支援策となっています。

今年度日本は、先進国で初めて「世界農業遺産」の認定を受けました。戦後、高度成長を遂げ、経済大国の仲間入りを果たして久しいわが国において、農業の近代化と並行し、伝統的な農業・農法、農村文化や生物多様性、農村景観などがシステムとして保全されており、その維持に努めている地域が認められたのです。

これらは農業・農村の持つ多面的機能といわれるもので、今回認定された佐渡や能登に限らず、皆さんの身近な場所にもたくさんあります。これを機に、日本各地の農業・農村の持つ役割に目を向けてみませんか。

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