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農林水産省

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特集1 食の未来を拓く 品種開発(1)

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日本の主食!米の品種開発の場合


実りの秋、食欲の秋の到来です。
日本では毎年、農作物の新たな品種が数多く誕生しています。
この秋にも新しい品種の農作物が実り、収穫されています。
今回は、なぜ品種開発が必要なのか、品種開発はどのように行われているのかをひも解いていきます。
品種開発

米の品種改良や技術開発をする公的機関

米の品種改良や技術開発をする公的機関
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構作物研究所
今回、米の品種改良について取材するためにまず訪ねたのは、茨城県つくば市にある独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構作物研究所でした。作物研究所は米、小麦、大麦、大豆、さつまいも、ゴマなどの作物の品種改良と、品種改良のための新技術開発を行っている研究機関です。また、これらの作物の栽培・生理研究と品質成分の生理遺伝研究を行い、画期的な品種の育成につなげるとともに低コスト・高品質栽培の技術を開発しています。

品種開発用に選抜した株は赤いテープで束ねられる

品種開発用に選抜した株は赤いテープで束ねられる

選抜された稲穂は混ざらないようにていねいに分けてあった

選抜された稲穂は混ざらないようにていねいに分けてあった

米の品種開発


Photo:Eri Iwata
品種改良とは
おいしさや高い収穫量、病気への強さ、冷害や高温への耐性など、生産者や消費者が望む新しい特性をもった品種を開発することを、品種改良といいます。

作物の品種改良は、別々の品種をかけ合わせることによって新しい品種を生みだす、交配育種が基本です。改良には多くの時間と労力がかかりますが、病害虫に強い品種に改良すれば、農薬の使用量を減らすことができるため、栽培コストの軽減になり、より安全性の高い作物を生産できます。このように生産者にも消費者にもメリットがあるような品種を供給するために、日々開発が進められているのです。

米の品種改良の歴史
日本で本格的な米の品種改良が始まったのは、明治36年のことです。日本が近代国家への道を歩み始める過程で、農作物の生産力の増大が重要課題となり、その年、国立の農事試験場で品種改良に力を入れる方針が定められたのです。それを受けて米の品種改良に取り組んだのが、農事試験場の技師だった加藤茂苞(しげもと)さんでした。

現在、わが国で行われている米の品種改良は、人工交配によって優れた品種同士を組み合わせる「交配育種法」が主流ですが、加藤さんがその基盤を作ったことから、のちに「品種改良の父」と称えられることになります。

それまでは、もともとあった米の品種の中から、優れた特性をもつ株を見つけて選ぶ「分離育種法」が採用されていました。しかし、この方法では狙った特性を持たせられないことがありました。

人工交配の育種法によって日本で初めて作られた品種が大正10年、秋田県の国立農事試験場陸羽(りくう)支場で育成された「陸羽132号」です。この品種は寒さに強く、当時の東北地方で広く栽培されました。農学校で教鞭をとっていた詩人宮沢賢治も「陸羽132号」の普及に努めたといわれています。

昭和に入ってから数えても、国の農業試験場で改良された品種は約400種類にのぼります。また、都道府県の試験場が改良した品種も300種類以上あり、これまで700品種を超える米の品種が開発されてきました。この中の300品種くらいが、現在、全国で栽培されています。

毎年各地で新しい品種が生まれている
日本を代表する米の品種である「コシヒカリ」は、昭和19年に新潟県農事試験場(現・新潟県農業総合研究所)で、品質、食味ともに優れた「農林1号」と、いもち病に強い「農林22号」を交配し、昭和31年に福井農事改良実験所(現・福井県農業試験場)が命名登録した品種です。当時、米の最も深刻な病気であるいもち病に強く、品質が良くておいしい品種を作ることが目標でした。しかし「コシヒカリ」には、茎が弱く倒れやすい、いもち病に弱いなど、栽培する上での難点もありました。

しかし、品質や食味に大変優れていたことから生産地が広がり、誕生から半世紀以上たった今も日本人に愛される、おいしい米の代名詞にもなっています。「コシヒカリ」は北海道、東北の一部を除き、全国的に作られており、昭和54年以降、30年以上連続で作付面積第1位を維持しています。

今日、栽培されている「コシヒカリ」や「ひとめぼれ」などの品種のほとんどが、明治時代より前から、もともとわが国にあった米を親として、長い時間と手間をかけて改良して作られた品種です。そして、現在でもそれぞれの地域の気候条件やその地域で重視すべき性質を兼ね備えた品種を作るために、主食用の米だけでなく、酒米、米粉用米、飼料用米の改良が地道に続けられています。

遺伝子を解析するために袋分けされたイネ

遺伝子を解析するために袋分けされたイネ

  作物研究所・稲研究領域長の根本博さんが交配の方法を説明してくれた

作物研究所・稲研究領域長の根本博さんが交配の方法を説明してくれた

研究室で行われるDNA鑑定の様子

研究室で行われるDNA鑑定の様子
   

毎年たくさんの米が生まれている
米や麦などの穀類は日本人の主食になる大切な作物です。
そのため品種改良も主に国や地方自治体の主導で行われてきました。

全国の米の育種体制
それぞれの地域で気候条件が異なるため、重視するべき性質も自ずと異なります。食味・収量性・耐倒伏性など共通に必要な形質に加えて、それぞれの特性を備えた品種を作るために、各地で品種開発が進められています。
全国の米の育種体制

コシヒカリを中心とした品種の系譜図

コシヒカリを中心とした品種の系譜図