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お宝!日本の「郷土」食 18[鳥取県境港市]

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味は極上、値段は格安、知られざるカニ

ベニズワイガニの圧巻甲羅酒


表も裏もオール紅色の茹でたベニズワイガニ

表も裏もオール紅色の茹でたベニズワイガニ。殻を通して身が微かに白く見えるのが、身がしっかり詰まった証。プロはこの微妙な色味をチェックする

境漁港のベニズワイガニ水揚げ量は全国1位

境漁港のベニズワイガニ水揚げ量は全国1位

左がAランク、右はBランク

左がAランク、右はBランク。同じように見えても身の詰まりが大いに異なる。大きさは大中小で分類される

カニ船と手前が積み込みを待つカニの餌。好物はサバという

カニ船と手前が積み込みを待つカニの餌。好物はサバという

カニ船と手前が積み込みを待つカニの餌。好物はサバという

カニの目利き川口さん。船によってもカニは異なり、瞬間の見極めが勝負

有限会社 川口商店
http://kani.ocnk.net/
味処 美佐
http://www17.ocn.ne.jp/~kuimono

文・写真/山本洋子
鳥取の松葉ガニ、京都の間人(たいざ)ガニ、福井の越前ガニと冬の日本海は百"蟹"繚乱。ところが、所変われば名も変わるで、実はこれらのカニはみんな同じズワイガニ。カニの種類は多そうで案外と少なく、日本で食べる大きめのカニは、ズワイガニ、タラバガニ、毛ガニの3種類が主流。

多くの生ガニが地味な褐色の中、唯一鮮やかな紅色なのが、その名のとおり、ベニズワイガニ。ズワイガニの近縁で、表も裏も紅色をしています。

そんなベニズワイガニ(通称ベニガニ)の水揚げ日本一を誇るのが、鳥取県境港市の境漁港。年間約1万トン。最盛期には市場が紅色で埋めつくされ、地元のスーパーや魚屋に大量に並びます。

「ベニガニは身がないカニだ、安かろう悪かろうと軽んじられてます」と苦笑する、境港でカニ専門卸しを営む川口利之さん。「上物のベニなら甘みが強く、ミソの濃厚さは松葉ガニ以上」とか。

ズワイやタラバは水深200~400mに棲息し、ベニガニの多くは800m以上の深海に棲みます。そのため漁が始まったのは戦後で、近年、発見されたお宝です。

大量に獲れるベニガニですが、市場にあがる9割は加工用のBランク。カニコロッケやカニ寿司、カニ味噌に加工されます。残り1割が上物のAランク。その中でも「生で極上」と川口さんが認めるのは半分程度。

繊細な肉質、たっぷりのミソ、濃い甘さ。夏場の2カ月を除く10カ月と漁期も長いわりに知名度が低くお手頃価格。生の問題は鮮度落ちが早いこと。そのため浜茹でがメインで生は地元限定。そんなベニガニの生をどう味わうのか、川口さんに手ほどきを受けました。

「料理は刺身や鍋。シンプルに茹で、焼き、蒸し、揚げです。圧巻は甲羅酒!」。みずみずしい茹で、味がしっかり閉じ込められる蒸し、香ばしく甘みが強い焼き、ジューシィな揚げ。刺身はしゃぶしゃぶも良。鍋の具は、ベニガニの味を生かすよう豆腐と白菜といたってシンプル。それが「ベニガニの味が一番よく分かる」と川口さん。

そして、最後に食べた後の甲羅に酒を注いで網焼きへ。「酒を注ぐと甲羅の内側に詰まったカニミソがゆるゆる溶け出すんです」。香ばしい匂いが広がり、ふつふつと燗がついたら出来上がり。芳醇なミソの甘さに、適度な塩加減が酒とまったりなじみスープのよう。

「これに合う酒は」と目の前に現れたのが『強力(ごうりき)』の純米酒。鳥取県で復活栽培した酒米の名という。
「鳥取県は完全発酵に近い辛口が多く、キレのいい酒が甘いベニガニと好相性です。焼きの後の甲羅酒なら香ばしい風味、蒸しや茹での甲羅酒なら上品な味わい。何度も楽しんでお酒の味が薄くなったら、脚の殻を焼いて加えると、もうなんぼでも飲めます(笑)」

さばいたばかりの透明感あふれるベニズワイガニの刺身

  甲羅にミソたっぷり
さばいたばかりの透明感あふれるベニズワイガニの刺身。鮮度が命、港町だけの贅沢

  甲羅にミソたっぷり。「焼く時は網にアルミ箔に敷いて載せると、焦げなくてお勧め」と境港ベニガニ有志の会会長で料理店「味処 美佐」店主・濱野政和さん

甲羅酒の味が薄くなってきたら、殻をあぶって酒に入れると香ばしくなる

甲羅酒の味が薄くなってきたら、殻をあぶって酒に入れると香ばしくなる