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農林水産分野の最新研究成果を紹介! アフ・ラボ

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小麦アレルギーに安心で米粉消費の拡大にもつながる

グルテンを使わない100%米粉パン


市販されている米粉パンは、米粉以外に小麦グルテンが使われているものもあります。独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所は、小麦アレルギーの人も安心して食べられる、グルテン不使用の米粉パンの製造技術を開発しました。

3株混合スターターで作ったチーズ。水牛、牛、羊、ヤギなどチーズの原料となるすべての種類に使える

左はグルタチオン無添加、右は添加して焼いたパン。いずれも米粉100%でグルテンは使っていない。右のパンの材料は米粉、水、グルタチオン、ドライイースト、砂糖

生地の膨らみの違いの比較。グルタチオン添加により発酵時に生地が膨らむ(上)

生地の膨らみの違いの比較。グルタチオン添加により発酵時に生地が膨らむ(上)

生地の膨らみの違いの比較。グルタチオン添加により発酵時に生地が膨らむ(上)

小麦アレルギーの人が食べられるパン
街のパン屋さんで、米粉パンを見かける機会が増えました。しかしこれらのパンは、弾力を出すために小麦グルテンが使われているものが多く、そうしたパンは主原料が米粉であるにも関わらず、小麦アレルギーの人は食べることはできません。そこで食品総合研究所では、アレルギーの人も食べられる、グルテンを使わない米粉100%パンの製造技術の開発に着手しました。

「この研究が米粉の消費拡大、食料自給率向上に貢献するためであることはもちろんです。それに加え、小麦粉は成人期になっても、アレルギーの原因物質のひとつであることが報告されおり、アレルギーの方でも安心して、食べることができるパンの開発を目指したのも研究を始めた動機です」と、同研究所食品素材科学研究領域・蛋白質素材ユニット・矢野裕之さん。矢野さんは自身、家族に食物アレルギーの人がいたため、その体験もこの研究を始めるきっかけとなったとのことです。

小麦グルテンの代わりにグルタチオンを使用
小麦グルテンは小麦に含まれるタンパク質であり、細い繊維状の網目を形成します。発酵が進み酵母が出した炭酸ガスを、この網目が逃がさないので風船のようにパンが膨らみます。一方、米粉に含まれるタンパク質はグルテンを作り出すことができないので、タンパク質の形を変える働きがあるグルタチオン※という物質を米粉に混ぜることで、グルテンを使ったときと同様に膨らんだパンを作ることを考えました。

開発過程の試作品は、カチカチに硬いものや、発酵時に膨らんだものの焼いている最中にしぼんでしまったもの、ヘチマたわしを柔らかくしたような粗いスポンジ状のものなど失敗の連続でしたが最終的にはグルテンなしで、うまくパンを膨らませることができました。

膨らんだパンには、グルテンの生成は見られず、膨らんだ要因は今後さらに解明する課題となっています。

100%米粉パンはふわふわもちもちの食感です。たくさんのパン職人に試食してもらい、共同で味を良くするためにさらなる改良を行っています。

ただし、グルタチオンは日本では医薬品扱いのため、通常の食品に使うことができません。グルタチオンは酵母発酵により作ることができるため、現在、グルタチオンのメーカーに協力を依頼し、食品として利用できる酵母エキスの開発を進めています。

グルタチオンを用いた製パン技術は、小麦アレルギーの人も安心して食べられる米粉パン以外にも、米粉消費拡大を図れる新たな米粉製品の製造や、米粉パン製造過程で塩分を使わないことから減塩食品を開発するなど、さまざまな製品開発に応用できる可能性を秘めている技術と言えそうです。

※グルタチオン:グルタミン酸、システイン、グリシンの3種のアミノ酸から構成される。動物や植物・微生物など大半の生物が持つ天然化合物。美白効果をうたったサプリメントや、二日酔い防止の健康補助食品にも使われている。