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お宝!日本の「郷土」食 21[栃木県佐野市堀米町(ほりごめちょう)]

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邪気を払って、ヘルシー&エコ

酒蔵の母娘共作「しもつかれ」


これが1回に仕込む全材料と鬼おろし

これが1回に仕込む全材料と鬼おろし。イチゴの香りと言われる上品な吟醸粕をたっぷり使う。「愛乃澤の酒粕でないと、しもつかれの味が決まらない」というお客さんも多く酒粕が大人気。酒粕は予約販売

「材料はこれ以上増やさない方がいいです。基本はダイコン、ニンジン、大豆と酒粕で、鮭抜きで作る家もあります」と祥子さん

「材料はこれ以上増やさない方がいいです。基本はダイコン、ニンジン、大豆と酒粕で、鮭抜きで作る家もあります」と祥子さん

相澤酒造は安政元年、ペリーの黒船来航の年に創業。朱雀通りに面して建つ創業158年の老舗蔵

相澤酒造は安政元年、ペリーの黒船来航の年に創業。朱雀通りに面して建つ創業158年の老舗蔵

相澤酒造株式会社
栃木県佐野市堀米町3954-1
TEL.0283-22-0423

文・写真/山本洋子
節分に使った炒り大豆と、旬の終わりのダイコンやニンジンに新巻鮭の頭、できたての酒粕を材料に作る「しもつかれ」。北関東に広く伝わる郷土料理で、今も盛んに各家庭で作られ、スーパーにも並ぶほどです。よく考えられた料理で、野菜に豆、魚、酒粕を組み合せて栄養満点であること。節分で鬼を払った豆の残りを利用すること。節分に供えるイワシの頭に見たてた鮭の頭が「邪気を払う」御利益もあること。「食べると風邪をひかない」のゆえんです。

不思議な料理名「しもつかれ」の語源は、栃木県の下野国(しもつけのくに)由来説。酢っぱい感じから「すみつかれ」となった説など、地域によってさまざま。そんな「しもつかれ」の本場、栃木県佐野市の蔵元、相澤酒造の社長相澤祥子(よしこ)さんに聞くと「大好きでよく作ります」というので教わりにいきました。

作る時は大鍋いっぱいという「しもつかれ」。全体が混じり合い、ぱっと見ても何が入っているのかよく分かりません。

「ダイコンが3本も入っているんですよ」と祥子さん。そのダイコンはニンジンともに包丁を使わず、鬼おろしで粗くおろすのが特徴。「節分を過ぎると、ダイコンは土から上の部分がふかふかと頼りなくなります。しもつかれはそんなダイコンがおいしくなるんです」
水は入れず、おろした野菜の水分だけでコトコト。「酒粕をたっぷり使うので日持ちもします」。「しもつかれ」は、作ったときには近所でのやりとりも盛んとか。

「お宅もあるだろうけど、うちのも食べてみて~と持ってこられますね。3軒分くらいはすぐに集まります。でも食べ比べると、やっぱりウチのが一番! って(笑)」

味の決め手はもちろん酒粕。その酒粕といいますか、お酒を造っているのが、娘の晶子(しょうこ)さん。栃木県初の女性杜氏です。越後杜氏と南部杜氏の酒造りを勉強し、全国新酒鑑評会で金賞を3年連続で受賞したこともある腕利き。銘柄「愛乃澤」は酒造好適米の山田錦をぜいたくに使った、きめ細かで華やか、上品な味わいです。

お父さんが亡くなり、覚悟を決め、人生をかけて蔵入りした晶子さん。精魂込めて醸す酒はどれも一本芯の通った味。銘柄はいろいろあれど、母・祥子さんが「しもつかれ」に使うのは、晶子さんが最も愛す「愛乃澤」の吟醸酒粕と決めています。これで作るときれいな味に仕上がり、「この粕でなくちゃ」と酒のしぼりを心待ちにするご近所さんも多いとか。

「もともとのしもつかれは鮭の塩味と酒粕の甘味だけで、調味料は入れなかったようですが、ちょっと醤油を加えると、これがいい酒の肴になるんです」

いいお酒が背景にあってこその相澤家のしもつかれ。母娘二代の共作。「一番おいしい」のは当たり前ですね。

お酒のタンクが並ぶ蔵内。東日本大震災で壁が崩れた箇所に板を貼って応急処置 祥子さん(右)は8代目蔵元。晶子さんは三姉妹の真ん中。「愛乃澤」は母と娘の共作

お酒のタンクが並ぶ蔵内。東日本大震災で壁が崩れた箇所に板を貼って応急処置
 
祥子さん(右)は8代目蔵元。晶子さんは三姉妹の真ん中。「愛乃澤」は母と娘の共作

そのまま食べてもおいしい節分の炒り大豆。野菜の水分、酒粕の味がしみるとなおおいしい

そのまま食べてもおいしい節分の炒り大豆。野菜の水分、酒粕の味がしみるとなおおいしい
   

しもつかれの作り方 しもつかれの作り方

[材料]
酒粕300g、炒り大豆80g、ダイコン 中くらい3本、ニンジン2本、塩鮭 頭半分と切り身一切れ、油揚げ1枚、醤油大さじ2、好みで砂糖70g、酒大さじ3

[作り方]
1.鮭の頭と切り身をザルにのせ、熱湯を回しかけてから、かぶる程度の水で2時間ほどとろ火で加熱。水分をとばす
2.ダイコンとニンジンを鬼おろしでおろす
3.2のダイコンとニンジンの3分の2量を、深鍋に敷く。その上に、1の鮭、炒り大豆、細く切った油揚げをのせる。残り3分の1のダイコンとニンジンをのせ、細かくちぎった酒粕をのせて、醤油と好みで砂糖、酒を加える
4.強火で10分ほど煮る。野菜の水が上がってきたら弱火にし、汁気がなくなるまで30分以上煮る。一晩おき、大豆に味がよく染みこんだら出来上がり