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特集1 地域力の向上をめざして「農」の未来の設計図を描く ~人・農地プラン~(3)

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地域のだれもが納得する方法を模索して

農地の集約化がもたらした大きな成果(1)


山口県山陽小野田市(さんようおのだし)厚狭(あさ)地区平沼田(ひらんた)集落は、中国四国地方における「人・農地プラン」認定第一号です。
そのプランニングの中心となった経営体である農事組合法人「和の郷(なごみのさと)」を訪ねました。

平沼田集落の田畑はのり面もきれいに手入れされており、美しい農村景観が保たれている
平沼田集落の田畑はのり面もきれいに手入れされており、美しい農村景観が保たれている

集落の共同資産である農業機械。県と市の補助で大型のコンバイン、トラクター、田植え機が揃い、ガレージも整備することができた

集落の共同資産である農業機械。県と市の補助で大型のコンバイン、トラクター、田植え機が揃い、ガレージも整備することができた

「農事組合法人和の郷」設立記念碑

「農事組合法人和の郷」設立記念碑

住民のつながりを大切にしながら農地の集約化に尽力した「和の郷」代表理事の村上俊治さん

住民のつながりを大切にしながら農地の集約化に尽力した「和の郷」代表理事の村上俊治さん

農事組合法人「和の郷」を紹介してくれた、山陽小野田市役所農林水産課主査の長井昌夫さん

農事組合法人「和の郷」を紹介してくれた、山陽小野田市役所農林水産課主査の長井昌夫さん

農地の集約化のきっかけ
山陽小野田市は山口県の南西部、宇部市(うべし)の西側に位置し、平成17年3月に小野田市と厚狭郡山陽町(さんようちょう)が合併して誕生した市です。

農事組合法人「和の郷」は、合併前の厚狭郡山陽町に位置していました。同法人は今年4月に設立されたばかりの新しい農事組合法人ですが、それ以前から地域農業を牽引してきた同法人代表理事の村上俊治さんに話を聞きました。

農家数17~18戸の平沼田集落が、「人・農地プラン」を策定するに至った大きなきっかけは、平成元年から始まった「ほ場整備事業」でした。それまで平沼田集落には、一筆(いっぴつ・登記上の土地の個数を表す単位。独立した1個の土地を「一筆の土地」という)3アールか4アールの小さな農地が400近くあったそうです。

「ほ場整備をするまではそれぞれが小さな田んぼですから、小さいトラクターでも間に合っていました。けれど、土地を集約するとなると、一番大きな問題がやはり機械の大型化です。個人ではとても投資しきれない。そこでほ場整備を機に、個人で機械を持つのはやめ、みんなでお金を出し合って、一緒に使おうということになったのです」

村上さんの話では、もちろん初めは、「自分の機械を使ってやりたい」とか、「共同購入となると、自分が機械を使いたいときに使えない」といった反対意見もあったといいます。

「集落には減反政策の補助制度による原資がありました。それを元手に共同で大型機械を購入し、生産性を向上させたほうが地域農業にとってはプラスであることを説明すると、最終的にはみんな理解してくれました」

農地の集約化の苦労と円滑に進める方法
ほ場整備事業が始まった当時、村上さんは現役のサラリーマンで、家では村上さんの父親が中心になって営農していました。ほ場整備の話を聞いたとき、村上さんは土地の集約が一番の難関だと思いました。それは村上さんが勤め先で、公共事業のために土地の買い取りに関わった経験があったからです。

「田舎ではやはり自分の土地が一番いいと思うものです。簡単には手放したくないのです。でも、ほ場整備を成功させるには、農地の集約化は外せません。だから僕は、勤めをしながら、経験に基づいて、地域の農地の評価を徹底して行いました」

村上さんは、土地の広さや地形、日当たりや水質などさまざまな条件に照らして、およそ10の評価項目を作り、一筆ごとに評価点数を付けて、集落の人たちに提示しました。そして、その評価に基づいて、1反あたりの土地の値段の1.5倍の評価額で等価交換を進めたのです。

地域を牽引するリーダーの存在が重要
平成4年、ほ場整備の工事が正式に始まり、平沼田集落の400近くあった農地は集約化され、80程度にまとめられました。

「山間の小さな農地を集約するためには、多少無理をしなければできません。集約後、それぞれの農家のほ場はそれまでとまったく違う配置になり、元の土地ではない場所に移った人は何人もいましたが、作業効率は格段に上がりました」

その年、村上さんたちは機械利用型の営農組合を立ち上げ、県や市から可能な限り補助金の交付を受けて、機械の大型化を計りました。「補助事業をうまく利用して機械化を図り、それをいかに将来的にも持続できる形で地域に根付かせるかがポイントだ」と村上さんは言います。

平沼田集落では機械を購入したときにみんなで2つの約束をしたそうです。ひとつは、機械への追加投資を抑えるために、機械をていねいに大事に長く使おうということ。もうひとつが自分たちで積み立てをして、借金をせずに機械の修繕や更新していこうということです。平成4年に機械を購入して以来、この約束はずっと守られています。

同席していた山陽小野田市役所農林水産課主査の長井昌夫さんが、「『人・農地プラン』を進めるにあたって大事なのは、村上さんのようにリーダーとなって地域を牽引するキーパーソンの存在ですね。そういった人が絶対必要です」と話してくれました。

草刈りの担当者を色分けして示してあるほ場図

草刈りの担当者を色分けして示してあるほ場図。お年寄りから順番に刈る場所を決めてもらい、みんなで手分けをして草を刈る

平成25年度の作付予定図

平成25年度の作付予定図。水稲も品種ごとにほ場が区分されている。米はほとんどが直販だ。飼料作物はイタリアンライグラスを栽培。飼料作物は近隣の酪農家に出荷し、耕畜連携を実践している