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農林水産省

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特集1 地域力の向上をめざして「農」の未来の設計図を描く ~人・農地プラン~(5)

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担い手不足の地域を活性化した

若者たちの新しい取り組みの形


農業・農村の活性化のため、援農や農業体験などを通じて若い人たちにも農業の現場に関心を持ってもらうことを目的に、
若者が中心となって立ち上げたNPO法人「学生耕作隊」の活動を取材しました。

茶葉の栽培経験がある三田村さんが中心となって茶園を管理している。
茶葉の栽培経験がある三田村さんが中心となって茶園を管理している。
荒れ果てていた茶畑10ヘクタールのうち再生できたのは1ヘクタールだが、
管理を始めて3年目には地域の茶工場を稼働させて茶葉を加工、4年目から商品化に成功したという



和気あいあいと作業をしていた栃内めぐみさん(左)、三田村諭さん(中央)、眞鍋圭治郎さん(右)

和気あいあいと作業をしていた栃内めぐみさん(左)、三田村諭さん(中央)、眞鍋圭治郎さん(右)

栃内めぐみさん

栃内めぐみさん。大学を卒業してすぐに、経済格差など南北問題の解決を目指して「民衆交易」や「フェアトレード」と呼ばれる貿易活動を行っている「第3世界ショップ」で働きながら、農業をしていたという

眞鍋圭治郎さんは学生耕作隊のインターン、農村で働く若者たちの新しい働き方をフィルムに納めるために、この日東京からやって来た東京造形大学の4年生

眞鍋圭治郎さんは学生耕作隊のインターン、農村で働く若者たちの新しい働き方をフィルムに納めるために、この日東京からやって来た東京造形大学の4年生。到着していきなり自ら農作業体験をしていた

眞鍋圭治郎さんは学生耕作隊のインターン、農村で働く若者たちの新しい働き方をフィルムに納めるために、この日東京からやって来た東京造形大学の4年生

◎学生耕作隊ではインターンや働く人を募集しています!
(住まいと食事は提供されます)

NPO法人学生耕作隊
http://www.kousakutai.net/
Photo:Koji Kinoshita
若者の思いを形に
高齢化や過疎化が進む農村で、若い力が必要とされていることはだれが見ても明らかですが、農村側の受け入れ態勢や、若者たちに就農の機会を与える取り組みにも課題があることも確かです。

そこに着目したのが山口大学の学生たちでした。農村、農家の側で受け入れに関する情報をうまく発信できないのであれば、自分たち若者が自ら飛び込んでいこうということで、平成14年、山口大学の学生有志30人が農業・農村の活性化に寄与することを目的に「学生耕作隊」を設立、同年9月にNPO法人化したのです。

認められた活動実績
平成18年、学生耕作隊は、農林水産業を核として自分たちの力でさまざまな活動を行い、地域を元気にしているという理由で、農林水産省の「立ち上がる農山漁村」(※)として選定されています。

地域、特に農山漁村は過疎化・高齢化などで疲弊していると言われる一方で、農林水産業を核として自分たちの力でさまざまな活動を行い、地域を元気にしている人たちがいます。そういった事例を、首相官邸で開かれる有識者会議で「立ち上がる農山漁村」として選定し、地域自ら考え行動する意欲あふれた取り組みを推進するために、全国に発信・奨励しています。

「立ち上がる農山漁村」の選定条件は、(1)農山漁村を振興するために力強い情熱を持ち、(2)地域の魅力的な資源を活用し、(3)これまでの考えやきまりにとらわれることなく、新たな取組に挑戦し、(4)農山漁村の経済に刺激を与え、雇用の確保につながっていること。学生耕作隊はまさにこれらを実践している若者たちの集団なのです。

耕作放棄地を解消し地域に活気を取り戻す
学生耕作隊の本拠地は山口県宇部市。この日訪ねたのは山陽本線宇部駅から12kmほど離れた楠地区にある「森の駅・楠クリーン村」です。ここは学生耕作隊の「後継創業」の拠点のひとつだそうです。後継創業とは、後継者や担い手のいない農地や古民家、農機具など地域の財産を引き継ぎ、それらを活用して地域の活性化と地域農業の諸問題を解決していく活動です。「森の駅・楠クリーン村」も元は地域の人たちが山を開墾して作った茶園ですが、後継者もなく耕作放棄されていた場所でした。そこで学生耕作隊の若者たちが管理を引き継ぎ、荒れていた20ヘクタールの茶園や山林の再生に取り組み始めたのでした。

説明をしてくれたのは、生産班のリーダーを務める三田村諭(さとし)さん(30歳)です。小雨が降っていたこの日は、「森の駅・楠クリーン村」に自分たちで建てた作業所で、三田村さんを含む3名が周防大島町(すおうおおしまちょう)の畑で収穫した玉ネギ、ニンニク、ラッキョウを運び込み、束ねる作業をしていました。周防大島町の畑もかつては耕作放棄地だった畑で、耕作を依頼されて4年目とのことです。

活動理念に基づいて地域の未来を拓く
現在、学生耕作隊では、19~36歳の若者10人前後が専従として活動しており、そのうち3人が女性です。そのひとり、栃内(とちない)めぐみさん(29歳)は関東からIターンして1カ月半というニューフェイスです。栃内さんは生産者とのやり取りの中で、モノ作りへの思いを共有できる農業に魅力を感じているといいます。農業体験のある栃内さんは「畑はエネルギーをもらえる所」と語ってくれました。

学生耕作隊には活動に対する確固たる活動理念があります。彼らの活動理念は農業の新しい取り組みを考えるうえで、参考のひとつになるのではないでしょうか。

(※)「立ち上がる農山漁村」の詳細は下記のサイトをご覧ください。
http://www.maff.go.jp/j/nousin/soutyo/tatiagaru/

学生耕作隊の活動理念
●全国の農山漁村、農林漁業の活性化や地域の問題解決のため、若者のエネルギーや知恵を農山漁村部へ持っていくこと。
●若者を始め農業に関心のある人や、やる気のある人が主体的に農業に関わっていくきっかけになる仕組みや、彼らを支援する仕組みを作ること。
●若者が農業に関わることで、日本の農業における諸問題に気づき、その解決に貢献すること。
●農業における諸問題解決の幅広いニーズに応えるため、その受け皿となる組織を作ること。
●若者同士が、現場を通じて将来の日本の農業について考える仲間を作ること。
●農山漁村の伝統文化や技術、魅力、問題解決や活性化のための取り組みについておもしろく演出し、広く発信すること。
●これらの活動を継続できるよう、経済基盤のある事業として成功させ、農山漁村におけるリーダーシップの一つのモデルケースとすること。

必要な電気は屋根に設置されたソーラーパネルによる発電でまかなっている

必要な電気は屋根に設置されたソーラーパネルによる発電でまかなっている

  「森の駅・楠クリーン村」で働く学生耕作隊の一員、ルル。三田村さんの農作業にいつも同行しているそうだ

「森の駅・楠クリーン村」で働く学生耕作隊の一員、ルル。三田村さんの農作業にいつも同行しているそうだ

学生耕作隊は20頭の肉牛も飼育している。そのうち3頭がこの春、子牛を産んだ

学生耕作隊は20頭の肉牛も飼育している。そのうち3頭がこの春、子牛を産んだ

  廃材や伐り出した木材で自ら建てた作業道具や農機具などを収納する倉庫

廃材や伐り出した木材で自ら建てた作業道具や農機具などを収納する倉庫。学生耕作隊では、自分たちに必要なものは自分たちで作り、活用して地域を元気にすることに貢献する「コミュニティセルフビルド」という考え方を大切にしている

右の小屋は三田村さんの住まい。左がコンポストトイレ。自分たちの住む小屋もすべて手作りだ

右の小屋は三田村さんの住まい。左がコンポストトイレ。自分たちの住む小屋もすべて手作りだ