このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

特集2 新・日本の郷土食(1)

  • 印刷

夏にうれしい 冷や汁とひんやり料理


じりじりと照りつける日差しと蒸し暑さに食欲も失せる夏。
けれども、私たちの日本にはそんな厳しい季節をしのぐ、夏ならではの料理があります。
今回は、宮崎県と埼玉県で食べられている「冷や汁」と、各地のひんやり料理をご紹介します。
共通するのは、地元の旬の食材を使うこと。
食欲をそそる香味野菜もふんだんに使っておいしくいただきましょう。

冷や汁

店主の森松平さん

店主の森松平さん。自身は鹿児島県の出身だが奥さんの地元宮崎で郷土料理にすっかり魅了されたという。「冷や汁の具材はいろいろアレンジすると楽しいですよ」

ふるさと料理 杉の子

宮崎県庁前にある郷土料理の店
ふるさと料理 杉の子
宮崎市橘通西2-1-4
TEL.0985-22-5798

Photo:Koji Kinoshita
郷土料理の冷や汁は、先人の知恵が詰まった健康食です
宮崎県宮崎市/森 松平(しょうへい)さん

味の決め手はいりこの入った焼き味噌
宮崎県の夏の料理「冷や汁」をご存知ですか。炊き立ての麦飯にだしのきいた冷たい味噌汁をかけ、サラサラといただく、のどごしよい夏ごはんのことです。

「でも、冷めた味噌汁をかけただけの猫まんまじゃないですよ。現代人の食生活の中では、かなり手の込んだ料理と言えます」というのは、宮崎市の中心街で郷土料理店「杉の子」を営む森松平さん。宮崎地方の郷土料理の普及に尽力し、お店の夏のコース料理では必ず「冷や汁」を提供している、まさに冷や汁の専門家です。

森さんによると「冷や汁」は、現在の宮崎県から鹿児島県にかけて、江戸時代から広く食べられていた「窮乏食」だったのだとか。秋に収穫した米の多くは年貢にとられ、どの農家も蔵の保存米が底をつく夏。麦飯で少しでもおいしく食事をしようという創意に満ちた食事なのだそうです。

「ただ、時と共に暮らしが豊かになって白米が当たり前になっても、宮崎県には冷や汁に押し麦を使う習慣が残りました。麦が3分ほど入っていると味噌汁を入れてもご飯がべたつかないし、何より健康に良いという伝承がちゃんと受け継がれてきたのです」

現代でもよく食べられているのは宮崎平野の一帯。地域により、また各家庭によってレシピはさまざまですが、宮崎県の中心部に暮らす森さんの冷や汁は、ふんだんに使う「いりこ(煮干し)」がポイント。すり鉢で丁寧にすったいりこと手作り味噌を合わせ、火であぶって焼き味噌にするため、だしで溶くと上品な香ばしさが漂います。そしてこの焼き味噌を余分に作り、冷凍しておくのが森さんのおすすめです。これがあれば、焼いた干物の身や、大葉やミョウガ、キュウリなど身近な野菜を揃えるだけで、あっという間に冷や汁が完成するし、即席の味噌汁にも利用できます。

本来は海の幸と山の幸が合体した日本ならではのスローフード。けれど、ご飯にかけてサラサラ流し込める手軽さは、食べる家族にとっては実にありがたいファストフードとなります。この夏は便利な「杉の子流の焼き味噌」を作り置きしてみませんか。


冷や汁の作り方

材料 1.いりこの頭と腹ワタを取る 2.一気にすりつぶす 2.一気にすりつぶす

材料
<焼き味噌>味噌200g、いりこ20g、<鰹だし>、<具材>干物(カマス、アジなど)、キュウリ(輪切り)、大葉、ミョウガ、豆腐、いりゴマ適宜
 
1.いりこの頭と腹ワタを取る
よく乾燥したいりこの頭と腹ワタを指先で取り除く。丁寧にとるのがおいしく仕上げる最大のポイントだ

 
2.一気にすりつぶす
すり鉢に、1のいりこを入れ、すりこぎで一気にすりつぶす。すり鉢を使うとふんわり繊細な粉になるが、ミキサーで代用してもよい


3.味噌を加えてする 4.焼き味噌を作る 5.だしで伸ばす 6.豪快にいただく

3.味噌を加えてする
すり鉢に味噌を加え、2のいりことよくなじむように丁寧にすり合わせる
 
4.焼き味噌を作る
3の味噌を浅いバットなどに広げ、100℃のオーブンで約10分、焦げ目がつかない程度に焼く。昔は七輪などであぶったが、現代のキッチンならオーブンが最適。この焼き味噌を冷まして冷凍保存すると便利
 
5.だしで伸ばす
4の焼き味噌をボウルに入れ、鰹だしを加えてよく溶かす。ちなみに1人前はだし180ccに焼き味噌25gが標準(好みで調整を)

 
6.豪快にいただく
焼いて身を細かくほぐした干物、キュウリの輪切り、細切りの大葉やミョウガ、手でつぶした豆腐などを加えて出来上がり。丼に盛った麦飯に、汁を全部かけ、豪快にいただく


店主の菅野ちゑさん(左)とスタッフの高橋三枝子さん

店主の菅野ちゑさん(左)とスタッフの高橋三枝子さん

農家れすとらん なごみ庵
山形県長井市成田1445
TEL.0238-84-7822
山形県の「冷や汁」は旬の野菜を楽しむお惣菜です
長井市/菅野ちゑさん
山形県の置賜(おきたま)地方にも、宮崎県と同じ「冷や汁」の名称を持つ料理があります。しかし名前は同じでも全く別物。この地方の「冷や汁」は、お汁というより煮物といった風情です。上杉謙信が出陣の際にふるまったとされる歴史のある料理で、干しシイタケ、凍み豆腐、打ち豆(つぶして乾燥させた大豆)、油揚げが定番。これらを煮たものを冷ましたら旬の野菜のおひたしを和えていただきます。野菜以外は乾物などの保存食なので通年登場しますが、主役は野菜。夏はオカヒジキやキャベツなど。今回は、長井市の農家レストラン「なごみ庵」の店主、菅野ちゑさんに作っていただきました。

野菜や干しシイタケ、打ち豆などもなごみ庵の手作り
野菜や干しシイタケ、打ち豆などもなごみ庵の手作り。
シイタケのだしがきいた、やさしい味の一品だ