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農林水産省

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チャレンジャーズ 明日につなぐ夢 第64回

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山形県 メープルと哲学の山里「暮らし考房」主宰 栗田和則さん キエ子さん

知恵と時間をかけて楽しむ山村暮らしの輝きを伝えたい

 

メープルカフェ楓の前に立つ栗田さんご夫妻

メープルカフェ楓の前に立つ栗田さんご夫妻。二人の青いシャツはキエ子さんの藍染め作品。藍染め以外に杉染や草木染も手掛けるキエ子さんの「染料」はみな畑や後ろの山など身近な場所で手に入れたものばかりだ

イタヤカエデの樹液が採れるのは毎年2月末からの一カ月間

イタヤカエデの樹液が採れるのは毎年2月末からの一カ月間。雪の残る山に自生する大木から1滴ずつ採取する。今は全国にネットワークを作り、日本の新しい森林文化を作るのが夢だという

青々とした葉を茂らせる藍は稲刈り前に収穫し、1年以上も乾燥させて初めて染料の元となる「すくも」になる

青々とした葉を茂らせる藍は稲刈り前に収穫し、1年以上も乾燥させて初めて染料の元となる「すくも」になる

青々とした葉を茂らせる藍は稲刈り前に収穫し、1年以上も乾燥させて初めて染料の元となる「すくも」になる。染めに使えるのはさらに1年後だ。手のかかる作業の習得はすべて独学だ。「身近な素材を使い、知恵を絞って工夫する、その時間こそが楽しいの」

暮らし考房

暮らし考房
〒999-5411 山形県最上郡金山町杉沢
TEL.0233-52-7132
都市との交流で新しい風を吹き込む
山形県最上郡金山町(もがみぐん かねやままち)の杉沢集落は、奥羽山脈の神室(かむろ)山系の沢沿いに、13戸の民家が点在する静かな山里だ。この集落の一番奥に、農林家の栗田さん夫妻が営む「暮らし考房」がある。裏山へ続く広々とした自宅敷地の中に、拠点施設のログハウスと、作業場兼店舗の「メープルカフェ楓(かえで)」が立ち並ぶ、農業体験型施設である。和則さんは山形県のグリーンツーリズム推進協議会の元会長でもある。

栗田さんが「体験型農業」に興味を持ったのは、今から20年ほど前、ヨーロッパへの視察研修でドイツの農家民宿を体験したのがきっかけだ。農村と都市の交流という新しい活動が、当時陰りを見せていた山村経済の活性化につながるのではとひらめき、旅行の直前に完成させていたログハウスを使ってB&B(ベッド&ブレックファスト)の民宿を始めたのだ。当初、夕食を提供しないB&Bにしたのにはわけがある。夫婦二人では、本業の農林業を営みながら本格的な民宿を経営するには無理があったのだ。「それなら近隣のレストランなどを紹介した方が、街全体の活性化にもつながるし。私たちも快くお客様を迎えられると思って」ということだ。同時に、二人は集落の仲間にも呼びかけた。「農業体験を提供する場をつくろう。みんなで分散すれば無理なく長く続けられるから」と。

地元ホテルとの連携で無理なく
栗田さんの呼びかけで、山ぶどうのつる細工体験や刺し子体験、森林ガイド、農業体験などができる賛同者が集まった。栗田さんはこれらの仲間たちと「共生のむら すぎさわ」を結成する。集落で取り組むグリーン・ツーリズムの始まりだ。そこに一つの転機が訪れる。山一つ隔てた場所に滞在型ホテル「シェーネスハイム金山」がオープンし、そこから宿泊者の農業体験受け入れ要請があったのだ。

栗田さんは「体験は杉沢集落でやる。予約制にし、客の送迎はホテルが行う。料金は参加者が指導者に直接支払う。」などの条件を積極的に提示し、見事ホテルとの交渉が成立。今では栗田さんも農業体験に主点を置き、集落全体で年間で2,000人ほどのお客と体験交流できるようになった。

一度体験した人の口コミで問い合わせがあれば、ホテルを紹介できるので、両者の共生もうまくいっている。

体験の一番人気、「藍染め」は奥さんのキエ子さんが指導する。彼女の藍染めは敷地内の畑に藍を栽培し、葉を収穫後、丸2年かけて染料にしたものを使う。ちなみに、藍染めの世界で藍の栽培と染めを一人でこなすことはめったにないそうだ。息子の和明さんが指導するチェーンソーアートは山村ならではの豪快なレジャー。山にチェーンソーの音を轟かせて木彫りをするのは実に爽快だろう。

各種体験の後はカフェに寄って、栗田さんが息子さんと二人で採取する「メープルサップ」(イタヤカエデの樹液)やメープルビールが味わえる。

「大事なのは我々自身が山村の暮らしを愛すること。山の恵みをいただいて幸せに暮らしていれば、人はきっと集まると思うのです。儲けは都市の暮らしにはかなわない。でも山暮らしは豊かであると発信していけば、人の出入りの絶えない活気のある村づくりができると信じています」と栗田さん。

「メープルと哲学の里 暮らし考房」という名称には、そんな二人の熱い想いがこもっている。

裏山から集落を囲む美しい風景を望む

裏山から集落を囲む美しい風景を望む。平成18年度「山村力(やまぢから)コンクール(林野庁)」で、山村力発揮リーダー賞を受賞した和則さんの熱い想いがこもったフィールドだ
   写真右から「イタヤカエデ」の樹液で作った、メープルビール「楓酔(ふうすい)」「楓仙(ふうせん)」と、樹液を殺菌しただけのメープルサップ「ふうろ」、樹液を煮詰めて作るシロップ「楓の雫(かえでのしずく)」

写真右から「イタヤカエデ」の樹液で作った、メープルビール「楓酔(ふうすい)」「楓仙(ふうせん)」と、樹液を殺菌しただけのメープルサップ「ふうろ」、樹液を煮詰めて作るシロップ「楓の雫(かえでのしずく)」

地図

Photo:Koji Sugawara

チャレンジャーズでは、農林水産分野で先進的、かつユニークな活動を行っている人々をご紹介します。