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農林水産省

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特集1 鯨を学ぶ(2)

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調査捕鯨と日本各地で行われている捕鯨


くじら供養祭

我が国捕鯨発祥の地である和歌山県の太地町には、「鯨魂の永く鎮まりますよう」という願いを込めたくじら供養碑が建立されていて、毎年4月29日にはここで「くじら供養祭」が行われています。このような供養碑は、全国各地の捕鯨に縁のある地域に建立されています。

ツチクジラの肉は、竜田揚げや南蛮漬け、たれ(赤肉の干物)やうま煮として地域の人々に親しまれています

千葉県の房総半島南部の人々は400年も昔から夏に沿岸に回遊してくるツチクジラ(体長約10メートル)を捕獲し、地域の人々の貴重なタンパク源として利用してきました。現在においても、ツチクジラの肉は、竜田揚げや南蛮漬け、たれ(赤肉の干物)やうま煮として地域の人々に親しまれています。

調査捕鯨と日本各地で行われている捕鯨
北西太平洋鯨類捕獲調査(沿岸域)に出港する調査船

北西太平洋鯨類捕獲調査(沿岸域)に出港する調査船

鮎川。ツチクジラの渡鯨の様子

鮎川。ツチクジラの渡鯨の様子
国際捕鯨委員会(IWC)は1982年、鯨類資源に関する科学的知見が不十分であるとして商業捕鯨の一時停止(モラトリアム)を決定しました。これを受けて、我が国は1987年をもってIWCが管轄するミンククジラなどの商業捕鯨を停止する一方、商業捕鯨再開に向けた科学的データを収集するため、国際捕鯨取締条約に基づき、鯨類捕獲調査(調査捕鯨)を実施しています。

鯨の資源管理には、さまざまなデータが必要となります。例えば、資源管理のために必要な年齢についての正確なデータは、現在のところ、内耳に蓄積する耳あかの固まり(耳垢栓・じこうせん)や歯がなければ、得ることができません。また、鯨がいつ、どこで、何をどれくらい食べるかを知るためには、胃の内容物を見るしか方法がありません。これらはいずれも鯨を捕獲しなければ得られないデータです。

もちろん、鯨を捕獲しなくても得られるデータについては、捕獲を行わずに目視調査などにより入手しています。

このような調査は、南極海と北西太平洋において実施されており、農林水産大臣の許可を受けて実施されています。調査捕鯨の副産物として得られる鯨肉は、市場に卸されるなどして、国内で流通・消費されます。

また、従来、北海道の網走、宮城県の鮎川、千葉県の和田、和歌山県の太地の沿岸で、主にミンククジラを対象とした小型捕鯨が行われていましたが、IWCの商業捕鯨モラトリアム以降、ミンククジラの捕獲ができなくなったため、IWCの管轄外のツチクジラなどを捕獲しながら今も捕鯨を行っています。

このほか、国内で流通する鯨肉には、アイスランドから輸入されたナガスクジラなどがあります。

南極海鯨類捕獲調査

南極海鯨類捕獲調査
調査目的
(1)南極海に生息する鯨を含む生態系のモニタリング
(2)異なる種類の鯨の間でどのような競合関係があるかに関するモデルの構築
(3)鯨の系群(※)の分布がどう変化しているかの解明
(4)クロミンククジラ資源の管理方式の改善

捕獲頭数(上限)
・クロミンククジラ 850頭±10%
・ナガスクジラ 50頭(当初2年間は10頭のみ)
・ザトウクジラ 50頭(正常化プロセス進行中は捕獲延期)

北西太平洋鯨類捕獲調査

北西太平洋鯨類捕獲調査

北西太平洋鯨類捕獲調査
調査目的
(1)鯨がどのような餌を食べているか、またその生態の研究
(2)鯨が環境汚染物質によって影響を受けていないかのモニタリング
(3)鯨の系群(※)がどうなっているかの解明

捕獲頭数(上限)
・ミンククジラ 220頭(沖合域100頭、沿岸域60頭×年2回)
・イワシクジラ 100頭
・ニタリクジラ 50頭
・マッコウクジラ 10頭

(※)鯨の系群:同じ鯨種でも、繁殖、分布、回遊などを異にする地域集団

反捕鯨・反イルカ漁団体による妨害行為

反捕鯨・反イルカ漁団体による妨害行為

反捕鯨・反イルカ漁団体による妨害行為
近年、南極海で調査捕鯨を行っている我が国の調査船団や、和歌山県太地町のイルカ漁に対する反捕鯨・反イルカ漁団体の妨害活動が問題となっています。我が国の調査捕鯨は、国際捕鯨取締条約によって認められている正当な行為であり、反捕鯨団体による妨害行為は、IWCにおいても厳しく非難されています。和歌山県太地町では、イルカ漁が行われていますが、反イルカ漁団体の外国人が漁業者の撮影やつきまとい等のいやがらせ行為を行っており、和歌山県警は太地町特別警戒本部を設置するなど現地の警備体制を強化しています。

全国鯨フォーラム

全国鯨フォーラム
全国鯨フォーラム
現在の捕鯨基地と、かつて捕鯨基地を有していた自治体が「捕鯨を守る全国自治体連絡協議会」を組織し、捕鯨文化の継承と普及啓発を目的として、毎年持ち回りで「全国鯨フォーラム」を開催しています。今年は、山口県下関市で、「下関くじらフェスティバル」の一環として、「全国鯨フォーラム2012下関」が、6月9日に開催されました。

山口県は、日本初の近代式(ノルウェー式)捕鯨会社が設立されたいわば日本近代捕鯨発祥の地です。下関市はかつて捕鯨の基地として栄え、今でも鯨類捕獲調査船団の入出港が行われるなど、鯨とはゆかりの深い町であり、市民の関心も高く、開場前から来場者が長蛇の列を作り、入場を待っていました。

フォーラムでは、財団法人日本鯨類研究所の藤瀬理事長が、「鯨類捕獲調査の目指すものー現状と成果ー」と題し、これまでの調査結果からわかってきた鯨の生態系モデルを中心に、基調講演を行いました。続くパネルディスカッションでは、「くじらと人の関係を未来志向で考えよう」というテーマで、くじら食文化を守る会会長や地元下関市立大学生など、世代や立場の異なる6人のパネリストが、鯨文化を次世代につなげていくための方策などについて、意見を交わしました。