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特集2 新・日本の郷土食(1)

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海の保存食  干物


豊かな海に囲まれた日本には、魚を美味しく食べる知恵がたくさんあります。
中でも、さまざまな方法で干す「干物」は、贅沢なお刺身に負けないほどおいしいと、広く庶民に親しまれてきた海の幸。
新米の季節、おいしいご飯をいただくのに欠かせない干物をご紹介します。

海の保存食 干物

伝統の保存食は今 減塩半生仕上げが主流
魚や貝に塩を振り、天日で乾燥させて作る「干物」(塩干し)は、腐りやすい魚介類の保存性を高めるために考案された先人の知恵。古くは奈良時代に宮廷への献上品としても使われたそうですが、一般庶民に広まったのは江戸時代のこと。江戸や大阪など人口の多い大都市周辺の漁村ではアジやイワシ、タコ、イカなどのさまざまな干物づくりが行われるようになりました。また全国津々浦々の海岸でも「地魚」の干物が作られ、それらが、お祭りや結婚式などの行事食に欠かせない個性豊かな郷土料理を生み出すもととなりました。

しかし、流通が未発達で冷蔵庫もない当時の干物は、腐敗を防ぐためにたっぷりと塩をして、中までしっかり乾燥させるのが必須。しょっぱくて固い食べ物だったのです。

ですが、恵まれた現代では保存性より「おいしさ」をずっと重視するため、塩分は控えめで、さっと天日に干した半生のものが人気です。今回、干物づくりの現場を見せてくださった、鋸南町(きょなんまち)の干物屋「栄丸(さかえまる)」店主、柴田喜正(しばたよしまさ)さんも塩分と干し加減に特に気を遣うといいます。

「うちの干物の賞味期限は4~5日です。いちばんいい干し加減で仕上げたあとは、買っていただいたお客さんの腕次第。空気に触れないようにラップをかけて冷蔵庫に保存し、焼くときは遠火の強火で焼きすぎないようにするのがコツです」。

干すことでタンパク質がアミノ酸に分解され、うまみ成分がぐっと増すことが実証されている干物。子どもたちの魚離れが叫ばれる昨今ですが、「食べるのが面倒くさい」という気持ちをしのぐ「おいしい!」という感動を知ってもらうために、アツアツ焼きたての「新鮮干物」をこの秋の食卓にぜひ登場させてください。



できたての干物を、乾燥機に入れたときのネットごと陳列する栄丸の店内

できたての干物を、乾燥機に入れたときのネットごと陳列する栄丸の店内。大切に扱われた干物は姿かたちがよく実においしそう

栄丸
千葉県安房郡鋸南町吉浜(あわぐんきょなんまちよしはま)99-5
TEL.0470-55-1148
営業時間8時00分~16時30分

Photo:Eri Iwata
獲れたての地魚を1尾ずつ愛情込めて開きます
千葉県/栄丸 柴田喜正さん
千葉県鋸南町の保田(ほた)漁港で干物専門店「栄丸」を経営する柴田さんは、漁協も認める干物づくりの名人だ。港に水揚げされた魚を、その日の作業計画に合わせて仕入れ、1尾ずつ丁寧に手作業で開いていく。味の決め手は親子2代で塩を継ぎ足し使い続けた塩汁(しおじる)のうま味と、その浸水時間や干し加減。「みんな天日干しがいいというけれど、真夏や日差しの強い日は、干す前に日に焼けてしまうなど調節が難しいんです」。今は大型の冷風乾燥機を使い、魚種ごとに時間を調節して絶品の干物を完成させています。

流水の下でアジのウロコを取るスタッフ。    程よい塩分と魚のうま味が凝縮された自慢の塩汁

流水の下でアジのウロコを取るスタッフ。魚を開いているのにちっとも生臭くないのが不思議
 
程よい塩分と魚のうま味が凝縮された自慢の塩汁。アジ、サバ、カマス、イカなどすべての材料をここに浸け、浸水時間で味の調節をしている

柴田喜正さん    塩汁からあげた魚は真水にさらして「塩止め」し、1枚ずつネットに並べて冷風乾燥機へ。ここでの干し加減も腕の見せ所だ

「お客さんには焼き時間などを詳しく尋ねられますが、本来きちんと作った干物は生でもおいしいくらい。さっと好みの焼き色にすればいいんです」という柴田喜正さん
 
塩汁からあげた魚は真水にさらして「塩止め」し、1枚ずつネットに並べて冷風乾燥機へ。ここでの干し加減も腕の見せ所だ

栄丸の柴田さんに教わりました
家庭版、アジの開きの作り方

新鮮なアジが手に入ったら、自宅で干物を作ってみませんか?
少々形がいびつでも、自家製ならおいしくいただけます。

ウロコ取りなどで表面のウロコを取ったら、エラの下あたりに包丁を入れ、腹側に切れ目を入れる

ウロコ取りなどで表面のウロコを取ったら、エラの下あたりに包丁を入れ、腹側に切れ目を入れる
   エラの赤い部分をつかんだまま、尻尾方向に手をずらして内臓をそっくり取り除く。開いた中を流水でさっと洗っておく

エラの赤い部分をつかんだまま、尻尾方向に手をずらして内臓をそっくり取り除く。開いた中を流水でさっと洗っておく
   頭側から包丁を入れ、中骨に沿って動かしながら身を開く。この時包丁を奥まで入れすぎると背側で身が離れてしまうので注意する

頭側から包丁を入れ、中骨に沿って動かしながら身を開く。この時包丁を奥まで入れすぎると背側で身が離れてしまうので注意する
   開いた後、頭の骨のある一番固い部分にガリッと音がするまで包丁を入れて、きれいに形を整える(いちばん外側にあるアゴの骨を切らずにつなげると形がきれい)

開いた後、頭の骨のある一番固い部分にガリッと音がするまで包丁を入れて、きれいに形を整える(いちばん外側にあるアゴの骨を切らずにつなげると形がきれい)

開いた魚はタワシやブラシで隅々までやさしく洗う

開いた魚はタワシやブラシで隅々までやさしく洗う
   飽和食塩水(目安は水1350ccに塩180g)に約6分ほど浸ける。この浸け時間は好みで。アジの黒い目玉が白く濁ってくるところも目安になる

飽和食塩水(目安は水1350ccに塩180g)に約6分ほど浸ける。この浸け時間は好みで。アジの黒い目玉が白く濁ってくるところも目安になる
   塩水から引き出したアジに流水をかけて表面の塩分を取る(塩止め)。このひと手間で塩分が程よく身にしみこむそう

塩水から引き出したアジに流水をかけて表面の塩分を取る(塩止め)。このひと手間で塩分が程よく身にしみこむそう
   ネットなどに広げ、風通しの良い場所で干す(日差しが強い場合は日陰に)。目安は3時間程度。表面を押すと弾力が出てくるのが目安

ネットなどに広げ、風通しの良い場所で干す(日差しが強い場合は日陰に)。目安は3時間程度。表面を押すと弾力が出てくるのが目安

コンパクトドライネット
あると便利
コンパクトドライネット
家庭で干物を干すときに面倒なのがハエなどの害虫や野良猫対策。そこで便利なのは、魚や野菜を干す専用ドライネットです。魚を入れたらそのまま物干し竿などに吊るしておくだけ。キャンプ用品売り場や釣具店などで扱っています。

パール金属(株) TEL.0256-35-3111