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農林水産分野の最新研究成果を紹介! アフ・ラボ

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アジア・アフリカ地域での米生産性向上に期待

低リン酸土壌でも収量の高い稲の開発に向けて


アジア・アフリカ地域などでは、稲の生育に必要なリン酸含量の低い土壌が広く分布しています。
このため、米の生産性に問題がありましたが、低リン酸土壌に耐える稲の遺伝子を特定したことにより、生産性向上の期待が高まっています。

根の成長は、PSTOL1を導入した根(左)と導入していない根(右)を比べると、明らかな違いが見られる

根の成長は、PSTOL1を導入した根(左)と導入していない根(右)を比べると、明らかな違いが見られる

PSTOL1を導入した稲(左)は、導入していない稲(右)に比べ、穂の付き方が多くなっている

PSTOL1を導入した稲(左)は、導入していない稲(右)に比べ、穂の付き方が多くなっている
植物を育てる三要素のひとつ、リン酸の問題
植物が成長するために必要な要素として、窒素、リン酸、カリウムの三要素があります。これらの要素はもともと土壌に含まれていますが、アジア、アフリカ、そして南アメリカ地域には、リン酸含量の少ない土壌が広がっています。このため、これらの地域では作物の生産が制約されるという問題がありました。

土壌のリン酸含量が低ければ、リン酸肥料を施すことになりますが、このリン酸肥料の原料となるリン鉱石は中国、アメリカ、モロッコなど限られた国にしか存在しません。しかもリン鉱石は数十年後には枯渇すると予測されており、産出国の輸出制限などにより、近年、価格が急騰しています。

そこで、肥料による生産性の向上だけではなく、土壌にあるリン酸をより効率的に吸収させ、作物収量を高めていくことが求められるようになってきました。特に世界人口の約半分が主食としている稲(米)において、作物収量の向上には大きな期待がかかっています。

低リン酸土壌に耐える稲の遺伝子と機能を解明
従来から、低リン酸土壌でも生育が可能で、収量性はあまり高くない在来インド型稲が存在していました。そこで、独立行政法人国際農林水産業研究センター(JIRCAS。本部茨城県つくば市)では、国際稲研究所(IRRI。本部フィリピン)、ミラノ国立大学などと共同で研究を行い、その稲から低リン酸土壌でも効率的にリン酸を吸収することができる遺伝子(PSTOL1)を特定し、その機能を解明することに成功しました。

PSTOL1を導入した稲は、根数を増加させ一株あたりの根の表面積を増やすことによって、リン酸の吸収量を増やすことが判明。リン酸吸収量は20~50%も増加し、稲穂は大きく成長、米の収量も増大することがわかりました。さらに、PSTOL1は根の酵素の合成を制御しており、稲の冠根(かんこん※)の発生を促す働きをもつこともわかってきました。

研究では、すでにPSTOL1を実際に稲の品種に取り入れる試みが実施され、低リン酸土壌でも収量の多い稲の品種育成に取りかかっています。新たな品種開発によって、アジア・アフリカ地域などの米収量を増加させ、貧困や食料問題の解決へ向けて大きな役割を果たすことが期待されています。

(※)冠根とは、地上部の茎と根の境目などから出る根のこと。冠のように放射状に生えるので、冠根と言われている。植物体を支える働きのほかに、水や養分を吸収する働きがある。

アジアにおける問題土壌の分布

アジアにおける問題土壌の分布
リン酸欠乏の土壌は、アジア・アフリカに広く分布しており、リン酸欠乏耐性遺伝子(PSTOL1)は、この土壌に適応した在来インド型品種から見つけられた

独立行政法人 国際農林水産業研究センター(JIRCAS)
http://www.jircas.affrc.go.jp/index.sjis.html