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農林水産省

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特集1 獣医師の仕事(3)

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産業動物の診療現場


産業動物については、健康な家畜から安全な畜産物を生産するため、獣医師の重要性が増しています。
千葉県で乳用牛を対象に診療に当たっている女性獣医師の仕事を取材しました。

繁殖検診の意義を説明する額田聡子獣医師。
繁殖検診の意義を説明する額田聡子獣医師。
この牛舎には58頭のホルスタインが飼養されている。
「牛に目が行き届くので、こういったつなぎ飼いが個人的には好きですね」と額田さんは言う

東部家畜診療所

ちばNOSAI連東部家畜診療所の獣医師、額田聡子さん

ちばNOSAI連東部家畜診療所の獣医師、額田聡子さん。訪問することになっている農場の家畜に必要な薬剤をカゴに入れ、これから診療に出発する

所内に設けられている医薬品保管庫で診療に必要な薬剤を選ぶ

所内に設けられている医薬品保管庫で診療に必要な薬剤を選ぶ

家畜を保定するフレームが車載されている東部家畜診療所の家畜運搬車両

家畜を保定するフレームが車載されている東部家畜診療所の家畜運搬車両

車の荷台にはこんな診療器具が載っていた

車の荷台にはこんな診療器具が載っていた

当日診療を希望する生産者が記入されている受付表。これによって一日の予定を組む

当日診療を希望する生産者が記入されている受付表。これによって一日の予定を組む

Photo:Keiko Urata
産業動物分野の獣医師は男性ばかりだった?!
今回訪ねた千葉県農業共済組合連合会(以下、ちばNOSAI連)東部家畜診療所は、千葉県東部に位置する山武市(さんむし)にあります。山武市は平成18年3月に成東町・山武町・蓮沼村・松尾町の4町村が合併して誕生した市で、同家畜診療所は山武市のほか、隣接している東金市・大網白里町・九十九里町・芝山町・横芝光町を管轄しています。7人の獣医師と1名の人工授精師、事務方のスタッフ1人の計9人が管轄地域内の乳用牛、肉用牛、繁殖用の種豚を対象に、日々診療や疾病の予防、生産指導などを行っています。

お話を聞かせてくれた額田(ぬかた)聡子さんが、産業動物分野の獣医師になったのは20年前。子どもの頃から動物が大好きで、叔父が馬の牧場を営み、その他にも酪農家の親戚がいたことから、中学生の時から馬の獣医師になりたいと思っていました。生まれ育った東京を離れ、大学は北海道江別市にある酪農学園大学に進学。臨床実習の対象は馬ではなく牛でしたが、迷いなく産業動物分野の獣医師の道に進みました。

「私は獣医師として農業共済組合連合会(以下、農済連)に就職したかったのです。農済連には何人もの獣医師が勤めています。他の獣医師に自分の得意ではない分野の指導をしてもらえることもありますし、助け合うことができます。お互いに切磋琢磨しながらスキルアップしていけますから」と額田さん。

しかし、北海道での就職を希望していたものの、当時、北海道の農済連に女性獣医師の雇用枠はなく、結局半年間就職できずにいました。

千葉県で獣医師としてスタート
そこに先輩の獣医師から「千葉県では産業動物分野の女性獣医師を雇用している」と聞かされました。ちばNOSAI連ではちょうど額田さんが入る前の年から、診療要員として女性獣医師を雇用するようになっていたのです。額田さんはちばNOSAI連西部家畜診療所の八千代出張所に5年間、現在の東部家畜診療所で15年間、産業動物を対象に獣医療に携わっています。その間結婚もし、今は中学3年生と小学4年生の二児の母です。小学生の息子は将来獣医師になりたいと言っていると照れくさそうに笑いながら教えてくれました。

診療所は基本的に8時半から5時までが勤務時間ですが、その時間内に仕事が終わることは稀です。額田さんの担当地域は東金市と大網白里町、九十九里町です。早朝だろうが深夜だろうが、担当の生産者から連絡が入れば出かけて行き、土日は当番制で診療所に詰めています。

この日、額田さんが「繁殖検診」に出かけると言うので、東金市にある1軒目の農場に同行させてもらいました。繁殖検診というのは、牛の直腸に手を入れて卵巣や子宮を触診(直腸検査)し、妊娠鑑定や牛の状態、管理状況を観察し、必要な治療などを行うことです。そのために毎月定期的に農場を訪問し、飼料や管理方法などのアドバイスもしていきます。

生産者のために、畜産業の振興のために
103頭の乳用牛を飼養している「よっちゃん牧場」では、農場の3代目を継いだ伊藤良明さんと結婚1年目という奥さんの真子さんが額田さんの到着を待っていました。額田さんは素早く身支度を整えると、58頭が繋がれた1棟目の牛舎に入って行き、直腸検査をこなしていきます。手際良く直腸検査を行い、伊藤さんから牛の情報も得ながら、治療が必要な牛をチェックしていました。

「病気になった牛の治療はもとより、病気の早期発見や予防に加えて、生産性を上げるための健康管理や飼料設計も私たちの重要な仕事です」

毎月コンスタントに牛を妊娠させることは、安定した生乳の生産につながります。出荷乳量の安定生産にも獣医師が大きく関わっていることを知りました。

真子さんが「額田先生はいつもニコニコしていて、明るく気さくでしょ。何でも相談できるからありがたいです」と話してくれました。額田さんは地域の酪農家の女性たちを募り、女性獣医師3人とともに「女性の会」を立ち上げ、年1回、搾乳方法や子牛の育て方、ロープの使い方などのワークショップを行っています。皆、熱心に情報を出し合い、意識を高め合っているとのこと。産業動物分野の獣医師の仕事にもさまざまな側面があり、いずれも畜産業に大きく貢献するやりがいのあるものだと感じました。

生乳生産者にとって重要な繁殖検診を行う額田さん    よっちゃん牧場牛舎
  
「よっちゃん牧場」の3代目を継いだ伊藤良明さん・真子さん夫婦

生乳生産者にとって重要な繁殖検診を行う額田さん
 
「よっちゃん牧場」の3代目を継いだ伊藤良明さん・真子さん夫婦


生産者とともに受胎状況や病気の有無を調べていく。受胎の有無や健康状態を記録する伊藤さん夫婦

生産者とともに受胎状況や病気の有無を調べていく。受胎の有無や健康状態を記録する伊藤さん夫婦
   額田さんは額田さんで、検診した結果をカルテに書き込んでいく

額田さんは額田さんで、検診した結果をカルテに書き込んでいく

何らかの治療が必要な牛に付けられた印

何らかの治療が必要な牛に付けられた印
   この日は削蹄(さくてい)師による削蹄(伸びたひづめを削る)作業も行われていた。額田さんも必要に応じて牛たちの削蹄を行うことがあるそうだ

この日は削蹄(さくてい)師による削蹄(伸びたひづめを削る)作業も行われていた。額田さんも必要に応じて牛たちの削蹄を行うことがあるそうだ

ちばNOSAI連 http://www.nosai-chiba.or.jp/