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農林水産省

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チャレンジャーズ 明日につなぐ夢 第69回

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大阪府 農事組合法人 かなん

目指すは農家の八百屋!周辺住民に愛される店作りを

道の駅「かなん」の販売担当、加工場担当スタッフと農家のみなさん。後列左端は駅長の阪上勝彦さん。法人立ち上げの尽力者だ

道の駅「かなん」の販売担当、加工場担当スタッフと農家のみなさん。後列左端は駅長の阪上勝彦さん。法人立ち上げの尽力者だ

支配人の石原佑也さん

支配人の石原佑也さん

「ふれあい朝市」は、道の駅の建物横の特設テント内で開催される。果物、きのこ、お米、鉢植えも並んでにぎやか

「ふれあい朝市」は、道の駅の建物横の特設テント内で開催される。果物、きのこ、お米、鉢植えも並んでにぎやか

地元産のミカンやクルミなどをふんだんに使った「米粉パン」も人気

地元産のミカンやクルミなどをふんだんに使った「米粉パン」も人気

道の駅「かなん」
大阪府南河内郡河南町大字神山523番地1
TEL.0721-90-3911
営業時間:9時00分~17時00分
(土・日曜、祝日は8時30分~17時00分)
年中無休(年末年始休)

伝統野菜や農産物が一年中豊富に揃う道の駅
大阪といえば、真っ先に観光名所の大阪城や心斎橋、道頓堀といった繁華街が思い浮かぶ方も多いのではないだろうか。中心地はビル街、近郊にはベッドタウンの住宅街が広がり、のどかな田園風景は想像しにくい地域である。ところが大阪全域には「なにわの伝統野菜」が20種類以上もあり、現在も多くの生産者がその発掘や復刻に励んでいるのだという。大阪は伝統野菜を含む野菜の一大生産地なのだ。

今回は、そんな伝統野菜を含む農産物の普及に精力的に取り組む、南河内郡河南町(みなみかわちぐんかなんちょう)の農事組合法人「かなん」のみなさんの活動拠点、「道の駅かなん」を訪ねてみた。

取材は土曜日で、週末の人気イベント「ふれあい朝市」の真っ最中。市内外から集まったお客のお目当ては特設テントにあふれんばかりの新鮮野菜である。

「今の時期、いちばん種類が多いのは大根です。全部で10種類くらい並びます。なにわの伝統野菜の田辺大根(たなべだいこん)、天王寺蕪(てんのうじかぶら)、金時人参(きんときにんじん)や大阪で以前から作られている難波(なんば)ねぎもありますよ」と語るのは支配人の石原佑也さん。「道の駅かなん」の店舗運営や企画に携わるリーダーだ。

石原さんによると、「道の駅かなん」を運営する農事組合法人「かなん」には現在、農家の組合員が127人もいる。それも大規模農家から兼業農家、高齢の小規模農家まで、形態はさまざま。季節の野菜をコンスタントに出荷する人、伝統野菜の普及に傾注する人、新しい種類の野菜栽培が大好きな人がおり、それぞれが自由に出荷するスタイルだから、これほど多品目の野菜が途切れることなく販売できるのである。

しかし、石原さんによると道の駅のこの盛況ぶりはここ数年のこと。開設当初には野菜がこれほど売れるとは思いもよらなかったという。

農家と消費者の交流で信頼関係のある店づくりを
今から9年前。道の駅の販売スタッフや生産者たちは、「スーパーの野菜より傷物が多い」とか「クレームの対応が悪い」という消費者に対して、どう接してよいか途方にくれたという。「我々の店はスーパーとは全く異質。もっと新鮮でいい野菜を販売している自負はあれど、それをお客様にどう説明してよいかわかりませんでした。販売スタッフも農家が多いので、物を売るということに不慣れだったのかもしれません。そんな問題点を皆で話し合い、少しずつ生産者も現場に加わる全員参加型の経営にシフトしたんです」(石原さん)。

たとえば、平成21年には、町主催の農家と消費者の交流会ともいうべき「農産物展示品評会・即売会」に参加。これをきっかけに、どんな野菜がいいのか、見分け方などをスタッフ自身で語る機会をたびたび設けてきた。その結果、地元にこれほど多くの優良な農産物があることを、消費者に知ってもらうことができたという。

また、女性の多い加工部も負けてはいない。地元食材を使ったお惣菜やお弁当、米粉のパンは、美味しいと評判を呼び、右肩上がりの売り上げを見せている。今年度は、大阪府立大学総合リハビリテーション学部の学生とともに、道の駅弁当「かなん冬の恵み」を開発。地元食材や伝統野菜を使い、栄養面だけでなく、食感、咀嚼のしやすさなども研究して作ったお弁当は今年2月までの限定販売だが、毎日あっという間になくなる人気商品だ。

「当初の年間売り上げ目標は6,000万円程度でしたが、発足して9年目の今では3億円に達しています。これは組合員の農家さんが自分たちが経営者であると自覚して、催しの企画などに積極的に参加してきたことの現れです。今後もどんな新しい試みができるか、皆で話し合ってアクティブに行きたいですね」と石原さんは精力的に語ってくれた。

冬の伝統野菜。左から金時人参、難波ねぎ、天王寺蕪、田辺大根

冬の伝統野菜。左から金時人参、難波ねぎ、天王寺蕪、田辺大根
   色とりどりの珍しい野菜も並ぶ。上からコールラビ(蕪甘藍・かぶかんらん)、紅化粧(べにけしょう)、青長(あおなが)大根、黒皮(くろかわ)大根

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夏の伝統野菜「毛馬胡瓜(けまきゅうり)」の漬物「かなん漬け」は歯ざわりと香りのよさが特徴

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   大学生とのコラボ作「かなん冬の恵み」は、このボリュームと彩りの良さで420円!

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地図

Photo:Akira Taniguchi

チャレンジャーズでは、農林水産分野で先進的、かつユニークな活動を行っている人々をご紹介します。