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農林水産省

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特集1 日本の水産資源を守る(2)

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漁業取締船の活躍 (1)


水産庁では、漁業取締船と航空機を配備し、日本の周辺水域や遠洋水域の漁業取締りを実施しています。
ここでは、その現状や漁業取締船が具体的にどのような活動を行っているかを紹介します。

航行中の漁業取締船「白鷗丸」(写真提供:水産庁)
航行中の漁業取締船「白鷗丸」(写真提供:水産庁)

白鷗丸船長の橋本高明さん(右)と陸上で指揮を執る九州漁業調整事務所の漁業監督課課長、中村真弥さん(左)

白鷗丸船長の橋本高明さん(右)と陸上で指揮を執る九州漁業調整事務所の漁業監督課課長、中村真弥さん(左)

取締航空機「ビーチB200」(写真提供:水産庁)

取締航空機「ビーチB200」(写真提供:水産庁)

地図を示しながら日本の排他的経済水域を説明する橋本船長

地図を示しながら日本の排他的経済水域を説明する橋本船長

操舵室のレーダー。出港すると2週間は海上で過ごす

操舵室のレーダー。出港すると2週間は海上で過ごす

夜間にも威力を発揮する電光掲示板。韓国語や中国語が表示される

夜間にも威力を発揮する電光掲示板。韓国語や中国語が表示される

停船命令に従わない漁船を抑止するための放水銃

停船命令に従わない漁船を抑止するための放水銃

資料提供:水産庁

Photo:Kouji Kinoshita
漁業取締りの概要
日本は四方を海に囲まれ、6,000以上の島嶼(とうしょ)で構成されています。このため、国土面積は世界第61位にとどまりますが、排他的経済水域(EEZ)及び内水を含む面積をみると世界第6位です。また、日本のEEZ等は世界の海の中でも生物の多様性が極めて高い海域であり、生息が確認されている海洋生物は、全海洋生物の約14%にあたる33,600種を超えるといわれています。他の水産国と比べても、非常に多種多様な魚種が漁獲され、それだけに隣接する国々にとっては魅力的な漁業水域といえます。

この日本の水域で操業を行う漁業者に対しては、国内外を問わず、法令を守ることが義務付けられています。水産庁では、本庁及び全国7カ所の漁業調整事務所(沖縄は内閣府沖縄総合事務局)に39隻(平成24年3月現在)の漁業取締船を配備し、水産資源を守るための法令遵守、違法操業の摘発などを行っています。

漁業取締船には、法令遵守の確認のための検査や司法警察員として漁業犯罪に関わる捜査を行うことができる権限が与えられた水産庁の漁業監督官が乗船し、業務を行います。

漁業監督官は、漁業者たちがルールを守って適正に操業しているか、乱獲や密漁が行われていないか、また、漁業者間で漁場をめぐるトラブルが生じていないかなどについて、常に注意を払いながら監視や指導、立入検査などを行い、一定の要件に該当した違反事案については徹底的に捜査した上で立件し、検察庁へ送致を行うなど日本の水産資源の保護と漁業環境や秩序の維持に努めています。

近年は韓国、中国漁船など外国漁船の取締り比重が大きくなっており、外国漁船の操業状況に即応して、特定の海域で柔軟かつ機動的な取締りを行っています。

外国漁船による漁業違反の傾向
九州漁業調整事務所の漁業取締船「白鷗丸(はくおうまる)」船長、橋本高明(たかあき)さんのお話を軸に、特に外国漁船の取締りに焦点を当てて解説していきます。

九州漁業調整事務所が管轄する水域では、韓国、中国、台湾などの外国漁船を対象に取締りを行っています。

橋本船長はもちろん乗組員たちは韓国語、中国語の語学研修を受け、ある程度の会話力を身に付けたうえで取締りに当たっています。それでも入念な捜査を行うには相当な語学力が必要となるため、漁業取締船には相手国の語学に堪能な通訳も乗り組んでいます。

外国漁船による漁業違反の傾向や質は年々変わってきているといいます。かつては日本の水域で許可を受けずに操業を行ういわゆる密漁などの違反が多く発生していましたが、取締りを強化してきた結果、近年そのような違反は大きく減少しました。しかし、その一方、漁業取締船の動向を高性能化したレーダーで把握しながら、違反操業の機会をうかがうなど違反内容は次第に悪質・巧妙化し、また、組織的に行われるようになってきました。

このような違反を行う者たちは、過去に拿捕(だほ)されたり、警告を受けたりした者たちから情報を得るなどして、漁業取締船の行動パターンや検査方法、拿捕に至ったポイントなどについて、常に研究し、対策を立てています。そのうえで用意周到かつ巧妙に偽装工作を行うのです。そのため、取り締まる側では新たな検査技術や取締手法を開発するなど、絶えず創意工夫と研鑽を重ねながら、取締能力の向上に努めなくてはなりません。

海上保安庁の取締りとの違い
司法警察員として行う捜査活動については、海上保安庁と基本的に同様であるため、双方が同じような業務を行う機関としてとらえがちですが、実際には大きく性質が異なります。海上保安庁は「海の警察」として、漁業に限らず海上におけるさまざまな事案について広く対応していますが、橋本船長をはじめ漁業取締船の乗組員たちは司法警察員であると同時に漁業監督官として、漁業環境や秩序を包括的に守ることを目的として活動しています。水産庁は漁業に特化した取締りなどの対応を行う機関なので、時間をかけて漁業や漁業者としっかり向き合い、腰を据えた取組みを行うことができ、そのために必要とされる専門知識やスキルを持ち、独自のノウハウを構築してきました。

漁業取締船には銃器は備えていません。放水銃や音響閃光弾、身を守るための防弾防刃チョッキやヘルメット等の特殊装具、取締艇のほか、多くの漁業取締船では夜間でもはっきりと詳細に対象を捉えることができる高性能の監視カメラを備えています。また、船内各所に配置しているパソコンをLANでつなぎ、さまざまな取締情報を乗組員間で共有し、対応しています。

海上保安庁の捜査との違いを橋本船長は次のように話してくれました。

「私たちは違反者を力でねじ伏せるための装備などはありません。細心の注意を払いつつ、いわば"無血開城"させる知恵や工夫をもって臨んでいます。拿捕行動だからといって、いたずらに相手の闘争心をあおる必要はないのです。違反をしっかりと捜査するために行うものですから、その過程においては無用なトラブルはできる限り避けるよう努めるべきなのです。また、緊張感や激しい感情をもって臨むと相手に伝わります。闘志は胸の奥底に秘め、冷静かつ穏やかに臨むことが肝要です」

最も気をつけなければならないのは、違反漁船に乗り込む時だそうです。いかにスムーズにトラブルなく乗り移ることができるかが大事なポイントとなります。「本船と取締艇で向かった捜査班との間でこまめに連絡を取り合いながら、相手の動向のみならず、表情の変化にも留意するよう伝え、事態の変化に即応できるよう努めています。私たちは、漁業の形態や漁業者の心理などについてよく理解しているので、今相手がどのような物理的、また、心理的な状況にあるのか、どのような時に最も手薄になり、最も安全かつ有効となりうるかといったことに配慮しながら、対応の仕方を決定しています」と橋本船長は言いました。


本庁及び全国7カ所の漁業調整事務所(沖縄は内閣府沖縄総合事務局)

本庁及び全国7カ所の漁業調整事務所(沖縄は内閣府沖縄総合事務局)