このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

特集1 日本の水産資源を守る(4)

  • 印刷

地域で取り組む水産資源の管理 (1)


水産資源を守るために、全国各地で、漁業者、試験研究機関、行政が一体となり、
資源管理が推進されていますが、そのうちの一例について紹介しましょう。

午後3時過ぎに漁船が帰港し、活気づく豊浜漁港
午後3時過ぎに漁船が帰港し、活気づく豊浜漁港

愛知県の水産資源管理について説明してくれた、愛知県農林水産部水産課企画・資源グループの中村元彦さん

愛知県の水産資源管理について説明してくれた、愛知県農林水産部水産課企画・資源グループの中村元彦さん

漁具や操業回数の制限により資源管理を進めているトラフグ

漁具や操業回数の制限により資源管理を進めているトラフグ

資源管理の結果、安定した漁獲量を確保しているイカナゴ

資源管理の結果、安定した漁獲量を確保しているイカナゴ

伊勢湾のシャコは桜が咲く頃から6月くらいまでが美味

伊勢湾のシャコは桜が咲く頃から6月くらいまでが美味

写真・資料提供:愛知県農林水産部水産課、愛知県水産試験場漁業生産研究所

Photo:Keita Suzuki
水産資源管理の概要
水産資源は、適正水準を超えて、無秩序に過剰な漁獲が行われると、水産資源が自らもっている再生産力が阻害され、資源の大幅な減少を招くおそれが生じます。過剰な漁獲、すなわち「乱獲」は短期的には漁業者に利益をもたらしても、長期的には資源の枯渇を招き、水産業全体の衰退につながります。そのため乱獲を防止し、資源の保全・回復や持続的な利用につなげていくための資源管理が必要となります。

日本では沿岸域から沖合、遠洋まで、漁獲対象魚種や多種多様な漁業が営まれています。このため水産資源管理においては、魚種や漁業種類の特性に応じて、都道府県による漁業権免許、国、都道府県による漁業許可、漁獲可能量制度等の公的規制と漁業者による自主的資源管理のもとで、投入量規制(漁船の隻数・規格等の規制等による資源に与える人為的圧力の抑制)・技術的規制(産卵期の禁漁や網目の大きさ規制による親魚保護、小型魚保護)・産出量規制(漁獲可能量の設定等)を組み合わせた水産資源管理が実施されています。

水産資源管理の方式に、政府・研究機関や地元の漁業者が水産資源の管理責任を共同で担い、両者の話し合い等を通じて、次の代の子供を産むだけの親を残す、魚が成長するまで漁獲しない、稚魚や小さい魚を逃がすなどの、操業規制等を策定する「共同管理(co-management)」と呼ばれる方式があります。これには、(1)資源管理に関する漁業者の責任感が向上する、(2)漁業者同士の相互監視によって操業秩序が向上する、といったメリットがあり、近年、その有効性が注目されています。

米国ワシントン大学のヒルボーン教授らが、世界44か国の130種類の共同管理漁業について分析した結果、資源管理の成功には地域をまとめるリーダーの存在や社会的連帯の存在等が大きく貢献しており、共同管理が世界の漁業問題の有効な解決策となり得るとしています。この論文に日本の資源管理の事例として、秋田県のハタハタ、伊勢湾のイカナゴ、京都府のズワイガニ等が挙げられていました。

わが国においては、古くから漁業者が自主的に水産資源を共同で管理しており、その基本理念が現在の漁業制度に引き継がれています。日本の漁業は、世界的に見ても共同管理の先取りともいうべきものです。

伊勢湾における愛知県の資源管理
愛知県は、大きな河川の流入がある伊勢湾や三河湾から黒潮の影響が見られる渥美外海の陸棚縁辺にかけて変化に富んだ漁場に恵まれています。カタクチイワシ、シラス、イカナゴ、シャコ、アサリをはじめとする貝類などが漁獲されています。小型底びき網漁業と船びき網漁業のほか、刺網漁業、釣漁業、採貝漁業などさまざまな漁業が営まれており、平成22年の愛知県の魚種別生産量を見ると、ガザミ類、アサリ類が全国第1位、イカナゴ、クルマエビ、ウナギ養殖、アユ養殖が第2位、シラス、ニギス類、アナゴ類、クロダイ・ヘダイが第3位と全国的にも高いシェアを誇っています。

今でこそイカナゴは第2位の生産量ですが、昭和50年代に伊勢湾・三河湾のイカナゴ漁は厳しい不漁に見舞われ、漁業崩壊の危機に直面したといいます。それをきっかけに資源管理の必要性が認識され、愛知・三重両県の漁業者は、水産試験場の研究成果を取り入れながら、積極的にイカナゴの資源管理に取り組みました。その内容は、再生産につなげることを目的に、産卵親魚を一定尾数以上獲り残すことや、親魚が分布する海域を保護区域に設定するなどし、親魚を守ることです。その結果、イカナゴの漁獲量は安定し、昭和50年代に経験したような長期間に及ぶ不漁はみられなくなったそうです。

行政・研究機関の担当者として、イカナゴの資源回復に取り組んだひとりである、愛知県農林水産部水産課企画・資源グループの中村元彦さんは「県内ではさまざまな魚種が漁獲されていますから、漁獲金額等を考慮して重要な対象魚種や、あるいは水揚げ制限のしやすさなどを考慮して、資源管理を行う優先順位を決め、その魚種に対する方策を徹底するという形で進めることが必要です。それに成功したら魚種を増やしていけばいいのです。愛知県ではイカナゴに続き、シャコ、トラフグの資源管理に取り組んでいます。水産資源に対して漁業の規模が大きすぎると、乱獲に陥りやすいうえ、コストが大きく、経営を圧迫します。乱獲は自分が先んじて漁獲しようとする先取り競争によって生じます。漁業者の意識改革を図り、漁業の規模を適正な大きさに誘導する努力を併せて行っていきます」と話してくれました。

資源管理の概念図

資源管理の概念図


水産資源は自然の再生産システムの産物

水産資源は自然の再生産システムの産物 海底に沈殿した生物の死骸や糞は、微生物によって、チッソ、リンなどの栄養塩に分解されます。その後この栄養塩は、海水温の変化等による海水の上下混合や海底山脈などに海流がぶつかることで生じる湧昇流などによって、海面近くに供給されます。それを養分として植物プランクトンが増殖し、動物プランクトンがこれらを捕食し、さらに、小型魚、大型魚が集まってきて、食物連鎖が繰り広げられます。私たち人間が食べる魚介類は、このような物質循環を通じた自然の再生産システムの中で生産されているのです。