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農林水産省

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東日本大震災 被災地の復旧・復興に向けて

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風評被害を乗り越える、福島県二本松市東和地区

徹底した放射能測定と情報公開で「東和げんき野菜」ブランドを復活 [ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会]


計画的避難区域に隣接する東和地区。原発事故直後は風評被害に苦しみましたが、徹底した情報公開が功を奏し、
ブランド野菜の売り上げは震災前の水準まで回復しました。

協議会が運営する「道の駅ふくしま東和あぶくま館」。「東和げんき野菜」のほか、「りんご酢入りの桑の実ジャム」など、加工品の人気も高い
協議会が運営する「道の駅ふくしま東和あぶくま館」。
「東和げんき野菜」のほか、「りんご酢入りの桑の実ジャム」など、加工品の人気も高い


「東和げんき野菜」には独自の認証シールが

「東和げんき野菜」には独自の認証シールが

道の駅に持ち込まれた農産物は、専門家から技術指導を受けた協議会の職員が測定する

道の駅に持ち込まれた農産物は、専門家から技術指導を受けた協議会の職員が測定する

昨年から始めた「農家民宿」も好評で、昨年7軒だった受入農家も、今年中には14軒まで増やす予定

昨年から始めた「農家民宿」も好評で、昨年7軒だった受入農家も、今年中には14軒まで増やす予定

文/塚田有香
写真提供/ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会
「災害復興プログラム」を策定し、農家の不安を取り除く
福島県二本松市の東和地区は、2005年に「ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会」を設立。有機農業を基盤とした地域活性化に取り組んできました。協議会独自の基準を満たしたキュウリやナス、キャベツ、レタスなどの農産物は、「東和げんき野菜」として認証。地元の「道の駅ふくしま東和あぶくま館」や、スーパーなどで販売し、2010年度には、加工品などを含め、約2億円の売り上げを誇るブランドに成長しました。

しかし、東日本大震災によって状況は一変しました。地震による田畑や家屋の被害はほとんどなかったものの、福島第一原子力発電所事故により、放射性物質による汚染の脅威にさらされたのです。

「東和地区は計画的避難区域に隣接しています。事故直後から国が発表する福島県の環境放射線の数値を注視していましたが、地元の正確なデータは分からない。土や水にどれだけ影響があるのか、田畑の作付けをしてよいのか、そもそもここに住み続けてよいのか。何も分からず不安な日々が続きました」

そう振り返るのは、協議会の事務局長を務める武藤正敏さん。協議会は、約250名の会員の不安を取り除くべく、2011年6月に「災害復興プログラム」を策定。放射性物質の影響を徹底調査することを決めました。

農家からは「事実を知るのが怖い」という声も上がりましたが、協議会のリーダー層が「今を知ることが、この地で生きることにつながる」と、粘り強く伝え、理解を得ました。

農産物の放射性物質濃度の測定を毎日行い、消費者に安心を
協議会は、福島大学などの協力も得て、農地の放射線マップを作成したほか、民間から寄贈された放射性物質濃度の測定器で道の駅に持ち込まれる農産物を毎日測定しています。

「それで分かったのは、農作物への影響はそれほど大きくないということ。原発事故があった2011年でも、一部の山菜を除き、当時の暫定規制値だった1kgあたり500ベクレルを超える農産物はほとんど出ませんでしたし、2013年産の春野菜は9割以上が10ベクレル以下で、国の基準値の100ベクレルを大きく下回っています。2012年に作付けした二本松産の米を検査した際も、全体の99%が測定下限値(25ベクレル以下)未満で、土壌から農作物へは放射性物質がほとんど移行しないことが確認されました」と、武藤さん。

こうした事実を、調査に当たった大学関係者の説明会や、「市民放射能測定所」のウェブサイトを通じて公表した結果、2011年度は前年比75%減まで落ち込んだ「東和げんき野菜」の売り上げも、2012年度は震災前の90%まで回復。2013年のGWは道の駅での売り上げが平日の5倍になる賑わいぶりです。

「お客さんから、『ここの野菜は新鮮だし、なにより安心して買える』と言っていただけるのが嬉しいですね。今年は震災前の売り上げを超えるのは間違いありません」と、武藤さんは声を弾ませます

さらに観光客を呼び込む新しい取り組みとして、地元農家による「農家民宿」を開設したほか、地元の特産品である桑焼酎や桑リキュール、地ビールと現在進めているワイン造りなどを活用した「アルコールツーリズム」も計画中です。

東和地区の前向きな取り組みは、風評被害に苦しむ他地域を勇気づけるものとなりそうです。