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農林水産省

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東日本大震災 被災地の復旧・復興に向けて

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風評被害と闘う、福島県伊達地域

地域一丸となった除染と検査で“伊達産の桃”への信頼を回復 [福島県伊達市/伊達地域桃生産部会]


東京電力福島第一原子力発電所の事故により、名産の桃の値段が半値近くまで下落した伊達地域の生産部会。
1500戸の農家総出で、1本残らず桃の木を洗浄するなどし、風評被害の払拭に取り組んでいます。

「今年は暑かったおかげで、よく実ったわぁ」。農家の人たちも笑顔で収穫
「今年は暑かったおかげで、よく実ったわぁ」。農家の人たちも笑顔で収穫


伊達産の桃

零度以下の厳しい寒さのなか、約20万本の桃の木の高圧洗浄を実施

零度以下の厳しい寒さのなか、約20万本の桃の木の高圧洗浄を実施

 出荷前には放射能検査を

出荷前には放射能検査を

皇室への「献上桃」を選ぶ選果式

皇室への「献上桃」を選ぶ選果式


文/塚田有香
写真提供/JA伊達みらい


事故後は、桃の取引価格が震災前の6割にまで下落
桃の産地として知られ、全国第2位の出荷量を誇る福島県。なかでも、県北部の伊達地域は桃の生産が盛んです。品質への評価も高く、平成6年以来、皇室への献上桃は毎年この伊達地域から選ばれています。

しかし、福島第一原発の事故により、桃農家は大きな打撃を受けることになりました。

「伊達地域は原発から約60km離れているので、当初は大半の農家が『それほど影響はないだろう』と考えていました。ところが事故後すぐに、福島県産の農畜産物から暫定基準値を超える放射性物質が検出されたと報道され、我々も『桃は大丈夫だろうか』と不安を覚えたまま、7月の出荷を迎えたのです」と話すのは、桃生産部会長を務める斎藤栄慶(しげよし)さん。県のモニタリング検査によって、伊達地域の桃は当時の暫定基準値以下であることが確認されたものの、風評被害の影響は予想以上でした。

「震災前は1kg当たり約420円だった市場の取引価格が、一気に250円前後まで下落しました。伊達地域全体の桃の売上は毎年31億円ほどの規模でしたが、平成23年は3割以上減ってしまったのです」

危機感を強めた斎藤さんたちは、県の指導のもと、除染に乗り出します。県の農業センターの研究により、高圧洗浄機で樹皮を洗い流すと放射性物質が低減することが証明されたため、平成23年の12月から、1500戸の桃農家が総出で洗浄を行いました。

「最初は『そんなことをしても、風評被害はなくならない』と悲観的な人もいましたが、『地域が一丸となって、やれることは何でもやりましょう』と説得し、最終的には生産部会の全員が参加して、この地域の桃の木を1本残らず洗浄しました。樹齢の高い木は樹皮の表面が粗く、放射性物質が付着しやすいので、新しい苗への植え替えも進めました」


出荷前の自主検査には農家すべてが参加
平成24年の出荷分からは、県の検査に加え、外部機関に委託して自主検査を行うことに。こちらも1500戸の全農家が参加し、早生、中生、晩生の計3回実施。結果はすべてが基準値以下でした。結果の詳細は伊達地域を管轄するJA伊達みらいのホームページで公開しました。徹底した検査体制と情報公開が功を奏し、平成24年は価格も1kg当たり約360円まで回復。また、この年も皇室への献上桃は伊達地域から選出されました。

「『安全』な桃を出荷するのは当然ですが、私たち農家は、『安心』という言葉をあまり使わないようにしています。安心かどうかを判断するのは、あくまでも消費者のみなさん。それよりも、除染や自主検査などに地道に取り組む姿をお見せすることが、消費者と信頼関係を築くいちばんの方法だと思っています。最近は卸業者やネット販売業者を、積極的に畑に案内し、生産者が自分の言葉で取り組みを伝えるようにもしています」

  8月には、福島産の桃の主力品種である「あかつき」の出荷が最盛期を迎えます。「今年は雨が少なく、糖度の高いおいしい桃ができました」と斎藤さん。

読者のみなさんも、ぜひ一度味わってみてはいかがでしょうか。