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東日本大震災 被災地の復旧・復興に向けて

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消費者に、笑顔で食べてもらいたいから

米への信頼を取り戻すため、カリ肥料の施肥と、全袋検査を実施 [福島県本宮市/本宮市地域農業再生協議会]


東京電力福島第一原子力発電所の事故で、大きな影響を受けた福島県本宮市の米作り。
市と米農家が一丸となって、安全な米を食卓へ届けるため奮闘努力し、今年も無事に収穫を迎えました。

農家、JAや集荷業者、市、県、各種団体が一体となって協力・連携し、検査を行った。検査機は福島県の米の「全量全袋検査事業」を使って導入。基準値を超過した米袋はもちろん廃棄され、市場に出回ることはない
農家、JAや集荷業者、市、県、各種団体が一体となって協力・連携し、検査を行った。検査機は福島県の米の
「全量全袋検査事業」を使って導入。基準値を超過した米袋はもちろん廃棄され、市場に出回ることはない


一袋一袋、ていねいに確認しながら検査を行う

一袋一袋、ていねいに確認しながら検査を行う

米袋のQRコードを使って、検査結果をHPで確認できる

米袋のQRコードを使って、検査結果をHPで確認できる

水田に施肥するためのカリ肥料。全ての水田で10aにつき20kgのカリ肥料を散布した

水田に施肥するためのカリ肥料。全ての水田で10aにつき20kgのカリ肥料を散布した

文/吉塚さおり
写真提供/本宮市地域農業再生協議会

約6800tの米の生産量を誇っていたが……
福島県のほぼ中央に位置する本宮市。良質な米の産地として名高く、コクがあり、香りと味わいに定評のある「コシヒカリ」を筆頭に、年間約6800tの生産量を誇ってきました。ところが、東日本大震災により状況は一変します。ため池の決壊や用排水路の被害に加え、福島第一原子力発電所事故による放射能汚染に苦しめられました。

それは、震災の年、本宮市ではなかったものの、県内で、当時の暫定規制値の1kg当たり500ベクレルを超える玄米が見つかったことから始まりました。

「自分たちの田んぼで出た訳ではなかったけど、福島県産ってだけで避けられるようになって、毎日辛かったよ」と、米農家の後藤清太郎さんは、当時を振り返ります。

翌平成24年から、放射性セシウム濃度の基準値が、1kgあたり100ベクレル以下と低くなったこともあり、稲のセシウムの吸収を防ぐカリウムを含んだ「カリ肥料」を水田に撒くことになりました。水田の土壌中に含まれるカリウムが多いと、化学的に似たセシウムが吸収されにくくなるのです。

「農家の方々からは、効果を不安視する声もあがりましたが、全ての田んぼでカリ肥料が散布されるよう、粘り強く説明を続けました」と話すのは、本宮市地域農業再生協議会本宮市産業部農政課の辻本弘月(ひろづき)課長補佐。

「基準値を超えた米は絶対に流通させない!」
さらに福島県は、県内全域で、出荷前の米を全袋検査することに決定し、本宮市でも、多くの関係者が奔走することになりました。

「なにせ初めてのことなので、勝手が分からず苦労しました。でも、基準値を超えた米は絶対流通させない体制を作るんだ、と皆で一丸となって取り組みました。膨大な米を残らず検査できるか不安もありましたが、3交代制で検査を進め、なんとか収穫の最盛期を乗り越えたんです」

本宮市では、平成24年産米、約23万袋を検査。基準値を超える米袋は全体の0.0053%、12袋にとどまりました。そして、基準値を超える米が見つかった水田は、土の中のカリウムの濃度が低かったことが分かりました。カリ肥料を撒くことを徹底すれば、稲の放射性セシウムの吸収を抑えることができると、はっきり確認されたのです。

カリ肥料の施肥と全袋検査は、今年も継続中です。米作りに携わるすべての人の希望を背負って、今期の収穫が始まっています。「今年も、おいしいお米が期待できます。丹精して作った米です、ぜひ食べてください」と、後藤さんの声にも力が入ります。