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特集2 ほっとするね。おばあちゃんの懐かしご飯(1)

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第7回 まさるおばあちゃんと和子さんの「こねつけ」【長野県長野市】


長野県北部の北信地方は、1日の寒暖の差が大きく、米や野菜のほか、りんごや桃などの果樹栽培が盛んです。
この地方に古くから伝わる「こねつけ」は、戦国武将の携行食として生まれた郷土食。
ごはんに小麦粉を混ぜて焼き、味噌をつけた素朴な味わいには、米を大切にしてきた人々の思いが、詰まっています。

まさるおばあちゃんと和子さんの「こねつけ」

こねつけは、味噌を上にのせたり、間にはさんで食べる

こねつけは、味噌を上にのせたり、間にはさんで食べる

北信地方では、きれいな水や、昼夜の寒暖さなどから、良質な米が育つ

北信地方では、きれいな水や、昼夜の寒暖さなどから、良質な米が育つ

北沢さん宅では、米やだいこん、さといも、玉ねぎなどを栽培

北沢さん宅では、米やだいこん、さといも、玉ねぎなどを栽培

こねつけの表面を、きつね色になるまで焼くと、絶妙の歯ざわりになる

こねつけの表面を、きつね色になるまで焼くと、絶妙の歯ざわりになる

文/篠原麻子
写真/松木雄一
撮影協力/JAグリーン長野

北沢さん宅では、和子さんが中心になって、こねつけを作る。生地作りは、まさるさんも手伝う

北沢さん宅では、和子さんが中心になって、こねつけを作る。
生地作りは、まさるさんも手伝う


こねつけが生まれたのは、今から500年前の戦国時代。当時の北信地方には水田が少なく、米はとても貴重でした。米は換金物でもあったため、一粒たりとも無駄にはできませんでした。そこで、米の不作時に、ごはんを小麦粉でかさ増しして食べたのが始まりとされます。

戦国武将たちは、こねつけを山中を移動する際の携行食としていて、大坂夏の陣では、真田幸村・信之兄弟が、別れの杯とともに、これを食べたというエピソードも残っています。

40年もののフライパンが、味の決め手
米を大切にする精神は、今でも北信地方の農家に受け継がれます。近ごろは、おやつ感覚で食べることが多いのですが、〝残ったごはんをむだなくおいしく食べきる〞という気持ちは、昔と同じです。

北沢さん宅でも、長年、こねつけを作り続けてきました。まさるさん(90)はお義母さんから、和子さん(69)はまさるさんから教わり、親子3代で受け継がれてきた味です。

「残りごはんがあったら、たまにチャーハンも作るけど、やっぱり作るのはこねつけだね。一度、水に浸してから火を通すんで、前の日のごはんも、いい味になるの。持ち運びもラクだから、田植えや収穫で忙しい時期には、きまって作るよ。みーんな、喜んでくれるさ」と、和子さん。

一度にたくさん作るので、調理には専用のフライパンが登場します。このジュラルミン製のフライパンは、まさるさんが、昭和47年に、近所の金物屋さんで購入した年代もの。毎回、使い終わると、表面をキッチンペーパーで拭き取るだけなので、油やお米のうまみがフライパンに染みこんでいます。これでこねつけを焼くと、こんがりと焼けるだけでなく、香ばしい風味に仕上がるのです。

丸めるのは手早く、焼くのはじっくりと
信州では、小麦粉をねって、野菜や小豆などを包み込んだ「おやき」が有名ですが、こねつけは、ごはんと小麦粉、味噌だけで作るので、いっそう素朴な味わいが楽しめます。

「ほんとに、な~んでもない料理さ。だからこそ飽きないし、いくらでも食べられるんだ。味噌だってうちで造ったんだよ」と、まさるさん。

北沢家では、毎年4月中ごろになると、味噌づくりの仕度を始めます。年によっては、20kgの樽を3つも仕込むことも。

「昔は、大豆から作っていたけど、今は味噌屋さんに、大豆をつぶして、麹と塩を混ぜた“仕込み味噌”を届けてもらうの。それを、7月の土曜の丑の日くらいまで寝かせると、白かった味噌が黒っぽくなって、いいコクが出るのよ」と、和子さん。

この自家製味噌で、だいこんやきゅうりの味噌漬けも作りますが、塩はやや強めにきかせるのが北沢家流。こうすると、ほどよい塩けの漬け物になるし、こねつけにもよく合います。

こねつけを作り続けて40年、今では和子さんも、こねつけ作りの名人です。

「上手に作るコツはね、ごはんを“丸めるのは手早く、焼くのはじっくり”よ。そうすっと、外は香ばしく、中はふっくら仕上がるよ」

焼きたてをいただくと、カリッといい音がして、そのあとに、もちもちの白いごはんが顔をのぞかせます。冷めると、外側のカリカリ感が、しっとりなじんでやさしい味わいに。

「おこびれ(おやつ)としてもよく食べるね。作りすぎたなと思っても、食卓に置いておくと、ほぉ、いつのまにかなくなっちゃうんだ」と、和子さんが言うとおり、ついつい手が伸びる味です。

和子さんの夫、栄広さんとこねつけを囲んで。栄広さんも「うん、うまい」と、思わず顔がほころぶ

和子さんの夫、栄広さんとこねつけを囲んで。栄広さんも「うん、うまい」と、思わず顔がほころぶ

食材なるほどメモ 「味噌」


食材なるほどメモ 「味噌」
味噌は、日本を代表する発酵食品の一つです。味噌には多くの健康効果があり、コレステロールを抑制する働きや、老化を防止する効果があるといわれています。江戸時代には「医者に金を払うよりも、味噌屋に払え」ということわざがあるほど、昔から体にいい食べ物とされてきました。海外でも、日本食ブームとともに、その効能に注目が集まり、輸出量は右肩上がりになっています。