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東日本大震災 被災地の復旧・復興に向けて

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福島県伊達地域の名産を、もう一度

柿の木約25万本を除染し、最新の検査機器も導入して、「あんぽ柿」の出荷を再開! [福島県伊達地域 福島県あんぽ柿産地振興協会]


東京電力福島第一原子力発電所の事故により、伊達地域では、江戸時代から続く名産品「あんぽ柿」の加工を自粛することに。木の除染、専用の検査機器の開発、様々な苦労を乗り越え、今年12月出荷を再開します。

「うちでは、〝あんぽ柿〞を、90年間作り続けてきました。再開できて本当によかったです。やわらかくって、おいしいんですよ」と、農家
「うちでは、〝あんぽ柿〞を、90年間作り続けてきました。再開できて本当によかったです。
やわらかくって、おいしいんですよ」と、農家


あんぽ柿

真冬に、生産農家や地域住民など、延べ3万人以上で、柿の木を1本残らず除染した

真冬に、生産農家や地域住民など、延べ3万人以上で、柿の木を1本残らず除染した

国のセシウムの基準値を超えるあんぽ柿を出荷しないため、収穫前の生柿を集め、徹底的に検査した

国のセシウムの基準値を超えるあんぽ柿を出荷しないため、収穫前の生柿を集め、徹底的に検査した

文/吉塚さおり
写真提供/JA伊達みらい

手塩にかけて育てた柿を、廃棄するのが辛くて
江戸時代から伝わる福島県伊達地域の名産「あんぽ柿」は、渋柿の皮をむいて1か月以上干してできあがります。凝縮された自然の甘みと、きれいなあめ色、普通の干し柿と違うとろりとした口当たりが特徴で、伊達地域では、あんぽ柿の加工が冬の風物詩でした。

しかし、福島第一原発事故による、放射性物質汚染により、事態は大きく変わります。あんぽ柿の原料となる生柿は、放射性セシウムの基準値を超えていなかったものの、柿を干すことで放射性セシウムが濃縮され、あんぽ柿では基準値を超えることが試験によりわかったのです。伊達地域のあんぽ柿は、出荷を自粛することになりました。

「出荷を自粛せざるを得なくて、心底がっかりしました。手塩にかけて育てた柿を廃棄するのが、とにかく辛かったです」と話すのは、あんぽ柿生産部会長の宍戸里司さん。

一日も早い出荷再開を目指し、地域の農家は、あらゆる手段に取り組みます。木の皮に付いたセシウムを取り除くことで果実のセシウム濃度が下がることがわかったので、平成23年の冬に4か月かけて、凍てつく寒さの中、全ての柿の木、約25万本の表皮を洗い落としました。

「冬のまっただなか、高圧洗浄機で洗い落としたんです。水が冷たく、手足は凍え、本当に大変でした。それでも、あんぽ柿を待ち望む方々のために、みんなで頑張りました」と、宍戸さん。そして、平成25年、2年間の出荷自粛を経て、今年こそはと、農家とJA、伊達郡特産食品衛生協議会、市、町、県、国などが集まって、「あんぽ柿復興協議会」を設立。連携して出荷再開を目指しました。


世界初! あんぽ柿用の非破壊検査機器を導入
協議会では、まず初夏に、1600戸ある全ての柿農家で、まだ小さく青い柿を検査。あんぽ柿に加工した時の濃縮率などを基に、加工を再開できるか検討しました。その結果、伊達地域全域での加工再開は難しいものの、放射性物質濃度が比較的低い地域をモデル地区として、加工再開に向けて取り組むことに。

出荷するからには、絶対に安全なあんぽ柿をと、協議会では9月に収穫直前の生柿を検査、その結果であんぽ柿を加工できる果樹園を決めました。さらに、あんぽ柿を1パックずつ、潰さず検査できる「非破壊検査機器」をメーカーと共に開発し、導入。出荷する全てのあんぽ柿を検査する体制を整えました。

JA伊達みらい福島原発震災復興担当参与の数又清市さんは、「あんぽ柿のような小さなもののセシウム濃度を非破壊で検査する機械は、それまで世界中どこにもなかったんです。これで、間違いのないものを出荷できます」と、太鼓判を押します。全箱検査を終えたあんぽ柿は、12月から出荷される予定です。

「今年は夏が暑かったおかげで、とてもいいできですよ。とろりとした食感の柿を、ぜひ味わってください」と、宍戸さんは笑顔で語ってくれました。