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農林水産分野の最新研究成果を紹介! アフ・ラボ

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10年におよぶ開発で、従来品種の欠点をクリア

いろんな食品に、プルプルの新食感を生む!でん粉加工用のサツマイモ「こなみずき」


サツマイモは、調理して食べるおなじみの品種以外に、でん粉加工用の品種があります。この加工用品種に、画期的な新顔がデビュー!  パンや餅などの食品に、新しい食感を生むと期待されています。

収量は従来品種と同等
「こなみずき」は、全体が白っぽく従来品種の「シロユタカ」よりやや大ぶりなのが特徴

「こなみずき」は、全体が白っぽく従来品種の「シロユタカ」よりやや大ぶりなのが特徴

「こなみずき」でん粉なら、豆腐が崩れない!
「こなみずき」でん粉を使った落花生豆腐は形が形成されるが、「シロユタカ」を使ったものでは崩れてしまう

「こなみずき」でん粉を使った落花生豆腐
は形が形成されるが、「シロユタカ」を使っ
たものでは崩れてしまう

”わらびもち”や”くずきり”がもっとおいしく!

「こなみずき餅」100g148円(右)と「もっちりやわらかフランスパン練乳クリーム」126円(左)

「こなみずき餅」100g148円(右)と「もっちりやわらかフランスパン練乳クリーム」126円(左)
従来品種は、硬くなりやすく長期保存に向かなくて…
かんしょ(サツマイモ)生産が盛んな鹿児島県。特にでん粉原料かんしょの生産は全国シェア97%。そのかんしょから作られたでん粉の約7割は、糖化製品(異性化糖、水あめ、ぶどう糖)の原料に仕向けられ、清涼飲料などの甘味料として使用されています。

残りの3割は、ゲル化(液体がゼリー状の固体になること、糊化)しやすいという性質を生かし、「わらび餅」や「くずきり」といったプルプルとした食感の菓子の原料に用いるほか、スナック菓子や麺類、水産練り製品の原料として使われています。

しかし、かんしょのでん粉は、馬鈴薯やタピオカのでん粉と比べ、ゲル化しやすいという反面、加工後に水分が抜け、硬くなりやすいという性質のため、長期保存や冷凍保存ができないなどの欠点があります。

そこで、九州沖縄農業研究センターでは、長期保存や冷凍保存が可能なでん粉ができるかんしょ品種の開発に取り組むこととしました。

高齢者が〝のみ込みやすい食品〞など、幅広い使い道が
硬くなりにくい耐老化性でん粉を含む品種は平成14年に育成されましたが、でん粉収量が低く、皮の赤い色がでん粉に混ざるため、白皮ででん粉を多く含む品種育成の研究が進められました。その結果、「こなみずき」という新しい品種が生まれました。

この品種のでん粉は、硬くなりにくいため、みずみずしさやプルプル感が長もちし、長期保存や冷凍保存も可能になりました。また、ゲル化する温度も、従来のかんしょ(シロユタカ)のでん粉と比べると約20度も低いことから、加工時の光熱費や製造時間が短縮されるなどの利点もあります。

「冬場に屋外にある寒い作業場で顕微鏡を覗いて、圃場からとってきた土付きイモのでん粉を見る作業なので、スタッフにも苦労をかけましたね 」と、この研究を行った農研機構の片山健二さんは話します。現在、「こなみずき」を使用した餅、パン、サブレやジェラートなどが発売され、商品には「こなみずき使用認証」(JA鹿児島経済連)のロゴを付けてアピールされています。

また、このでん粉を使うと、のど越しのよいものもできるため、嚥下(えんげ)食などの利用も考えられ、今後も幅広い利用が期待されます。


独立行政法人  農業・食品産業技術総合研究機構  九州沖縄農業研究センター http://www.naro.affrc.go.jp/karc/

文/宗像幸彦