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東日本大震災 被災地の復旧・復興に向けて

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用水パイプラインが破損し、米作りを断念して

苦渋の決断の末、育てた大豆から、ヒット加工品「かあちゃん愛情納豆」誕生!
[福島県白河市/JAしらかわ]


東日本大震災から、今年で3年が経過しようとしています。今月号では、震災で用水パイプラインが破損し、やむなく大豆栽培を始めた福島県白河市周辺の米農家の状況をお伝えします。大豆栽培は、苦渋の決断でしたが、大粒で立派な大豆が実り、この大豆で作った納豆もいまでは、地域の新しい特産物になりました。

東日本大震災 被災地の復旧・復興に向けて

種まきから乾燥調製までの主な農作業は、JAの出資で設立した農業生産法人「JAしらかわアグリ」が受託。農家は種まき前の耕うん作業と雑草取りなどの普段の管理のみを行えばいい仕組みを作った

種まきから乾燥調製までの主な農作業は、JAの出資で設立した農業生産法人「JAしらかわアグリ」が受託。農家は種まき前の耕うん作業と雑草取りなどの普段の管理のみを行えばいい仕組みを作った

種まきから乾燥調製までの主な農作業は、JAの出資で設立した農業生産法人「JAしらかわアグリ」が受託。農家は種まき前の耕うん作業と雑草取りなどの普段の管理のみを行えばいい仕組みを作った

種まきから乾燥調製までの主な農作業は、JAの出資で設立した農業生産法人「JAしらかわアグリ」が受託。農家は種まき前の耕うん作業と雑草取りなどの普段の管理のみを行えばいい仕組みを作った

機械を使わず、すべて手作業で作る「かあちゃん愛情納豆」は、大豆の旨みがたっぷり

かあちゃん愛情納豆


機械を使わず、すべて手作業で作る「かあちゃん愛情納豆」は、大豆の旨みがたっぷり

かあちゃん愛情納豆


文/塚田有香
写真提供/JAしらかわ

米の代わりに何か育てないと悩んで選んだのは……
福島県南部に位置する白河市周辺は、奥羽山脈の良質な水に恵まれ、稲作が盛んです。しかし、平成23年3月11日の東日本大震災で、農業用水を供給する隈戸川(くまどがわ)水系パイプラインの11か所が破損。約550haもの水田で用水を確保できず、その年の米の作付けを断念せざるをえませんでした。

震災から13日後、農家の代表が集まって対応策を協議しましたが、「このままでは収入が大きく減ってしまう。何か代わりに栽培できるものを探さないと」という声が。

「そこで、候補に挙がったのが大豆でした。しかし、ほとんどの農家が大豆栽培の経験がありません。また、大豆の栽培に必要な機械も足りませんでした」と話すのは、JAしらかわの小室信一代表理事組合長。

初めて大豆を栽培する農家の負担を少しでも減らすため、小室代表理事組合長たちは、農業生産法人「JAしらかわアグリ」が種まきや収穫などの作業を、農家から受託する体制を整えました。また、福島県相馬市・双葉郡の大豆農家に、機械を貸し出してくれないかと依頼しました。

「津波被害と東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で、大豆生産を止めていると聞き、相談したところ、快く貸し出してくださいました。おかげで、かなり初期投資を抑えられました」と、小室代表理事組合長。

こうして、平成23年5月、約70haに大豆を作付けし、10月には、「100点満点!」と、胸を張るほど良質な大豆を収穫。農家は米以上の収入を得ることができました。

さらに、大豆を活用して納豆作りにも初挑戦
平成24年5月には、さらに収益をあげるため、農家のお母さんたちを中心として、納豆作りに挑戦し始めました。

「なにせ初めてなので、昔からこの地方に伝わる自家製納豆の作り方を参考に、大豆を煮てから納豆菌を加えたのですが、ぜんぜん糸を引かなくて……。いろいろ調べるうち、大豆を蒸せばいいと、ようやく気付いたんです」と、JAしらかわ女性部の辺見好子さんは当時を振り返ります。

こうしてできた「かあちゃん愛情納豆」は地元の農産物直売所などで販売され、〝つぶが大きくて、ふっくらしている〞と評判で、毎日完売するほどです。

平成25年の大豆栽培では、連作障害をさけるために、基本的に1haごとに農地を区切り、作付け場所を変える「ブロックローテーション」も導入。震災をきっかけに始めた大豆栽培は、着実に地域に根付いています。