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特集1 みんなで広げよう! 食育活動(7)

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大学の出前授業で、広げよう! 食育

和の料理人が京都大学で教える授業は、その名も「本物のダシを味わうことは教養である」——
その〝やさしい味〞に感激する学生が続出!
NPO法人 日本料理アカデミー 【京都府京都市】


出前授業では、毎回5つの料亭がブースを出す。それぞれの料亭のダシは、素材の違い、作り方の違いから、まったく異なる味になり、学生たちを驚かせる
出前授業では、毎回5つの料亭がブースを出す。それぞれの料亭のダシは、素材の違い、作り方の違いから、まったく異なる味になり、学生たちを驚かせる

ダシには、一級品のかつお節を、惜しみなく使用する

ダシには、一級品のかつお節を、惜しみなく使用する

昆布やかつお節が、出荷されるまでの手間と苦労を知り、学生からは驚きの声が

昆布やかつお節が、出荷されるまでの手間と苦労を知り、学生からは驚きの声が

「食育は、一過性のイベントとしてではなく、継続的に行うのが大切です」と話す、日本料理アカデミー地域食育委員長の園部晋吾さん

「食育は、一過性のイベントとしてではなく、継続的に行うのが大切です」と話す、日本料理アカデミー地域食育委員長の園部晋吾さん

京都市を中心に活動する、NPO法人「日本料理アカデミー」は、和食を国内外に広めることを目的に、料亭の料理人たちが設立しました。村田吉弘理事長を筆頭に、約140名の料理人や学識経験者などが参加しており、昨年の「和食」のユネスコ無形文化遺産登録にも、大きく貢献しました。

そんなアカデミーが、京都大学で、平成20年から開催しているのが、出前授業「本物のダシを味わうことは教養である」です。

「大学生は、数年で社会人になり、子どもの親になります。だから、大学生にこそ、和食についての食育が必要だと感じていたんです」と話すのは、京・料亭「山ばな平八茶屋」21代目で、日本料理アカデミー地域食育委員長を務める園部晋吾さん。

京都大学の伏木亨教授が、アカデミーの理事を務めていたことがきっかけになり、学生食堂での出前授業が実現しました。毎年10月頃、2日に分けて開催しており、1日100名の定員が、あっという間に埋まるほどの人気です。

ダシがお吸い物になるまでの過程を、飲み比べ
授業時間は2時間で、まず、料理人がスライドとプロジェクターを使って、昆布やかつお節など、ダシの材料について解説します。

次に、学生たちは5人の料理人のもと、20人ずつに分かれます。彼らの目の前で、料理人がダシをとり、学生たちは、お吸い物になるまでの過程を、段階的に味わいます。

第一段階は、昆布だけで作る「昆布ダシ」です。口にした学生の反応は、「味がしない」「水っぽい」というものがほとんどです。

第二段階は、昆布ダシにかつお節を加えて濾(こ)した「一番ダシ」です。かおり高く、奥行きのある味に、学生の反応も、ぐっとよくなります。

第三段階は、一番ダシを、塩と薄口しょうゆで味付けします。これはお吸い物の汁そのものです。味わった学生からは、次々に「おいしい!」との声が。

最終段階では、各料亭が店で使用している塗りの椀を用意します。さきほどのダシに、湯葉やミズナ、ユズを加え、きちんとしたお吸い物に仕上げます。

「4つの段階で、どんな味がするのかを、ひとつひとつ体験してもらうことが大切です。それにより、味の積み重ねが深みを生み出すことを実感してもらうんです」と、園部さん。

授業後、学生からは、「本物のダシは、ふだん飲んでいるものとは完全に別物だと実感しました」「体に染み渡るような温かさ」「一口飲んだ瞬間に、ほかの料理にはない〝やさしさ〞を感じた」などの感想が。園部さんは、「言葉では伝わらないことも、一口含んでもらうことで、ポンと頭に入るんです」と、納得の表情を浮かべます。

いつか和食の旨みに目覚めてくれれば—
毎回、学生から大好評の出前授業ですが、アカデミーでは、この取り組みで、彼らの食生活が、すぐ和食中心に変わるとは、考えていないそうです。

「食は多様化していますし、社会的な事情もありますから……。ただ、 こうやって〝和食の旨み〞を意識付けすることで、いまは伝統的な和食から離れていても、いつか戻ってきてくれると期待しています」と、園部さん。そのときまで、日本料理アカデミーの食育活動は続きます。

深みのあるいい味ですね   旨みが、縦にも横にも広がる気がする やっぱい和食がいちばんね!