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農林水産省

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「食育月間」スペシャル座談会

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食の大切さや文化を次世代へ伝えるために ―

今、本当に必要な「食育」ってなんだろう?
林 農林水産大臣 x 榊原郁恵さん(タレント) x 馬渕知子さん(マブチメディカルクリニック院長) x コーディネーター 清 絢さん(食文化研究家)


6月は「食育月間」。全国でさまざまな食育に関するセミナーや大会が開催されています。
そこで、食に関心の高いタレントの榊原郁恵さんと、医師の馬渕知子さん、林農林水産大臣の座談会を開催。
コーディネーターは『aff』の連載、「味わい ふれあい 出会い旅」のナビゲーターで、食文化研究家の清絢さんを迎え、食と食育の重要性や、その実践方法について語り合いました。

「食育月間」スペシャル座談会

林農林水産大臣

さかきばら・ いくえ。神奈川県出身。1976年「第1回ホリプロタレントスカウトキャラバンマ、バラ」でグランプリを獲得。翌年にシングル「私の先生」でデビューし、ドラエティなど多方面で活躍。趣味の畑作業を生かした農業関係の仕事も多い。現在、NHK「突撃!アッとホーム」などに出演中。

さかきばら・ いくえ
神奈川県出身。1976年「第1回ホリプロタレントスカウトキャラバンマ、バラ」でグランプリを獲得。翌年にシングル「私の先生」でデビューし、ドラエティなど多方面で活躍。趣味の畑作業を生かした農業関係の仕事も多い。現在、NHK「突撃!アッとホーム」などに出演中。

まぶち・ ともこ。神奈川県出身。東京医科大学医学部医学科卒業。東京医科大学病院に勤務後、マブチメディカルクリニックを開設。専門分野は分子栄養学やアンチエイジング医療など。2011年、学校法人食糧学院の理事に就任。同学院の講師も務め、「食」に秘められた未知の力を研究している。

まぶち・ ともこ
神奈川県出身。東京医科大学医学部医学科卒業。東京医科大学病院に勤務後、マブチメディカルクリニックを開設。専門分野は分子栄養学やアンチエイジング医療など。2011年、学校法人食糧学院の理事に就任。同学院の講師も務め、「食」に秘められた未知の力を研究している。

きよし・ あや。大阪府出身。学生時代から日本各地の農山漁村を訪ね、伝統的な食文化や暮らしについて、調査研究を行う。日本の食文化を次世代へ継承するために、執筆、講演など、さまざまな形で活動している。2014年5月号から『aff』にて「味わい ふれあい 出会い旅」を連載中。

きよし・ あや
大阪府出身。学生時代から日本各地の農山漁村を訪ね、伝統的な食文化や暮らしについて、調査研究を行う。日本の食文化を次世代へ継承するために、執筆、講演など、さまざまな形で活動している。2014年5月号から『aff』にて「味わい ふれあい 出会い旅」を連載中。

「食育月間」スペシャル座談会

文/塚田有香
写真/松木雄一

海外でも高く評価される"日本食"の魅力とは
清(敬称略・以下同) 本日は、日本の食文化を次世代につなぎ、食の大切さを理解するための「食育」についてお話をお聞きしたいと思います。

まずは、日本の伝統的な食文化の魅力についてお聞きします。私は日本の食文化のなかでも、とりわけ郷土料理に強い関心があって、全国各地を訪ね歩くうちに、郷土料理はその土地で生きてきた人たちの知恵の結晶なのだと実感するようになりました。みなさんは、日本の食文化のよさは、どこにあるとお考えですか?

大臣 おかげさまで昨年12月、和食がユネスコの無形文化遺産に登録されました。ここ数年、海外でアンケートをとると「好きな外国料理」の第1位が「日本料理」なんです。

その背景には、世界的な健康志向の高まりがあると思います。和食は出汁(だし)や発酵食品でうまみを出すので、塩や油を大量に使わないし、「煮る」「茹でる」「浸す」のように水をふんだんに使った料理法も人気の要因でしょう。そうした健康面の魅力を世界へもっと発信していきたいと考えています。

榊原 私は5年ほど前から、神奈川県厚木市に畑を借りて野菜を作っています。地元農家の方たちとの交流も増えて、自分が畑で作った野菜の地元での食べ方も教わるようになりました。ショウガがたくさん採れたときは、「この辺では佃煮にすることが多いのよ」と教えてもらったり。地域で育ってきた素朴な食の伝統も日本食の魅力だと思いますね。

馬渕 日本は南北に長いので、土地ごとに気候や環境も違い、人間の体が受ける影響も異なります。日本の食文化は、その気候や環境にうまく対応しています。たとえば、冬が長く鮮度のよい食材が不足しやすい東北地方では、発酵食の文化が進みました。一方、九州や沖縄では豚肉を多く使い、南国ならではの食材をうまく組み合わせた料理が見られます。どちらも寒さ暑さの中でも体の免疫力を維持できるように工夫されています。さらに、いま日本は流通が発達しているので、遠く離れた地域の食と食が融合して新たな食文化が生まれています。これは海外ではあまりない現象だと思います。

海外のお話が出ましたが、林大臣は外国のみなさんに日本食の魅力をアピールする機会も多いと思います。先日もフランスのパリで和食を振る舞われたそうですね。

大臣 ええ、5月に国際会議があってパリを訪問した際、日本食でおもてなしをするレセプションを開きました。寿司や和牛などの料理を一口で食べられるサイズにしてご提供したら、あっという間になくなってしまうほどの大盛況でした。BSE(牛海綿状脳症)のあと、欧州向けの輸出が解禁になって初めてお出しした本当の和牛で、私に「おかわりは、ないですか?」と聞く人が続出したほどの人気(笑)。パリではすでに「WASHOKU」という言葉が通じますし、ランチボックスにおかずを詰めた「BENTO」も人気です。これから食材、作り方にとどまらず、出し方、食べ方も含めて、日本食はもっと伸びるな、という手ごたえを感じましたね。

私たちは今、「FBI戦略」というものを掲げています。世界の料理界での、日本食材の活用推進(Made FROM Japan)、日本の食文化・食産業の海外展開(Made BYJapan)、日本の農林水産物・食品の輸出(Made IN Japan)という3つの取り組みです。

昨年のユネスコ登録に続いて、来年はイタリアでミラノ国際博覧会が開かれ、2020年には東京オリンピックと、ホップ、ステップ、ジャンプで、展開していきたいですね。

子どもたちに食文化を伝えていくのは大人たちの責任
日本食の魅力を、私たち日本人が次世代へ伝えていくことも大事ですね。全国を歩いていて、日本人のライフスタイルや食生活が大きく変化して、伝統的な食文化が受け継がれにくくなっていると感じます。だからこそ今後、食育の重要性は高まるのではないでしょうか。

大臣 おっしゃる通りです。和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたことは光栄ですが、喜んでばかりもいられません。私たちにも日本の食文化を代々伝えていく責任があります。

昔のライフスタイルに完全に戻せとは言いません。中食(なかしょく)(注)や外食も含めて、きちんとおいしく、できればみなさんで食卓を囲んでね。私も、祖父母や両親から「食事ではたくさんの色を摂りなさい」といったことを、自然に学びましたから。食育というのは、教科書で習うというよりは、自然に覚えていくことが大事だと思います。

榊原 次の世代に食の大切さを伝えるのは、私たち主婦の責任でもあると痛感しています。私も以前は、「ちゃんと野菜も食べなさい」と上から言うことが多かったのですが、野菜作りを始めてからは、「このナス、お母さんが作ったのよ。大変だったのよ」といった会話に変わりました。子どもたちには「ヘンな形だね~」なんて言われながらも、食べてほしいという私の思いや育てるプロセスが伝わるのか、食卓で話が弾むようになっています。

大臣 それは理想的な食育のありかたですね。農林水産省でも、都会の小学生に農村の生活を体験してもらうプログラムを応援していますが、子どもたちが見違えるように立派になって帰ってくるんです。

お米や野菜を作るのがどんなに大変か、自分でやってみると実感できるので、家で食事をするときも、「あれだけ苦労して作ったものが、こうして自分のご飯になるんだな」と思う、これが大事ですね。

馬渕 興味を持つことは、食育の一つの始まりですよね。子どもたちだけでなく大人にとっても。たとえば、糖尿病を予防したり、食生活に気をつけるのも、食育の一環だと思うので、常に様々なことを体験して、食への興味を、原点から持ってほしいですね。

医療、福祉、食と農を連携させた施策も推進
最後に、食育について今後、取り組みたいことを教えてください。

榊原 家族が病気になったこともあり、改めて「食べるものが自分の体を作っているのだ」と強く実感しています。私はこうして人前に出る仕事をしていますので、野菜作りなど実体験を通して感じたことを、発信していけたらと思います。

大臣 政府は、「農林漁業体験を経験した国民の割合を5年後に35%とする」という目標を立てています。それに向けて農林水産省も支援をしていきます。また、医療、福祉、食と農をつなげる「医福食農連携」の施策も進めています。たとえば、障害を持つ方たちが農作業をして、作ったものを売って生き生きと働いてもらう、そういった取り組みです。

「人生80年」の時代に、いかに健康で長生きするかが大事ですから、自分で自分の体を管理できるような環境を整備していきたいと思います。

馬渕 私は栄養士や調理師を育成する専門学校の理事も務めているので、教育の現場も兼ねながら、生徒たちが食に関していろんなことを覚えられるような場所を作りたいです。地元のおじいちゃまやおばあちゃまとふれあって、子どもの頃に自分の健康を守る術を覚えれば、いくつになってもそれが生かされますしね。

私も食文化研究者として、自分にできることを地道に続けていこうと思います。みなさん、本日はありがとうございました。

(注)中食とは、弁当、総菜などの調理済みの食材を買って持ち帰り、職場や家庭などで食べること。また、その食事。