特集2 食文化研究家・清絢(きよしあや)の味わい ふれあい 出会い旅(1)
第2回岐阜県中津川市 「朴葉(ほおば)ずし」を求めて中山道を行く
実家がお寺で、子どもの頃から、近所の方々との交流のなかで、郷土料理に親しみながら育ちました。 そんなわたくし清 絢が、日本各地の郷土食を巡る旅の第2回目。 今回は、坂の上に繁栄した珍しい宿場町で、この地域の人たちにとって身近だという朴の葉を使った「朴葉ずし」のルーツを訪ねます。 |
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清 絢( きよし・あや) 大阪府出身。日本各地の農山漁村を訪ね、伝統的な食文化や暮らしについて、調査研究を行う。 日本の食文化を次世代へ継承するために、執筆、講演など、さまざまな形で活動中。 |
馬籠宿(まごめじゅく)
石畳の坂道で中山道を歩いた旅人の気分…… |
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文/清 絢 写真/川端正吾 イラスト/竜田麻衣 |
岐阜県東濃地方では、夏が近づくと朴の木の若葉がよく茂り、朴葉ずしの季節を迎えます。みずみずしい新葉で包んだ香り豊かな郷土ずしの、旬の味わいを求めて、まずは中津川市の馬籠宿(まごめじゅく)を訪ねました。
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馬籠脇本陣史料館
ほんの10年前まで馬籠宿は“木曽の国”だったんですね |
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史料館は、勅使(ちょくし)や大名などが泊まる本陣の予備施設として使用された脇本陣の跡地に建つ。平成17(2005)年、岐阜県中津川市に編入されるまで、長野県木曽郡山口村に属していた馬籠は、木曽と美濃の文化が入り交じる興味深い場所。食文化にも両方の影響があるんだとか |
「この辺りの人たちにとって朴は身近な木ですから、古くから生活に利用してきました。朴葉ずしや朴葉餅などの郷土料理にも残っています。ただ、明治と大正の大火事で焼けて記録がなくなってしまい、朴葉ずしがいつごろから作られていたかなど、正確なことはよくわかっていないんですよ」とは、宿場の歴史に詳しい馬籠脇本陣史料館の館長・蜂谷保(はちやたもつ)さん。 今も家庭では作られていますが、馬籠の旅館などでは提供されておらず、観光客はなかなか味わうことができないそう。そこで、馬籠宿から山を下りてみることにしました。 |
湯舟の館
さわやかな味わいの朴葉ずしはいくつでも食べられそう |
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湯舟沢地区の地域活性化センターである「湯舟の館」では、「湯舟沢レディース」が作るおふくろの味が購入できる。地元素材100%の加工品などがずらり。朴葉ずしは、8月末日まで販売予定。もっちりとして素朴な甘みのある米粉の郷土菓子「からすみ」も人気 |
さっそく、馬籠宿から少し山を下りたところにある湯舟沢(ゆぶねさわ)地区へ。ここは今でも朴葉ずしを作る習慣が残っていて、女性農業者グループ「湯舟沢レディース」のみなさんが朴葉ずしや栗おこわなど、季節に合わせた郷土食を生産、販売しています。「農家にとって朴葉ずしは、田植えのあとにはかならず作るものなの。昔は5軒くらいの農家が協力しあって田植えをしていてね。すべての田んぼに植え終わったら、当番の家が朴葉ずしを作り、みんなに振る舞うのがならわしで」と代表の洞田(ほらた)梅子さん。朴葉ずしは、地元の農家さんにとって、ひと仕事終えたあとのごちそうだったんですね。 |
にぎわい特産品
栗きんとんや老舗の和菓子など自慢の名産品が勢ぞろい |
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