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農林水産分野の最新研究成果を紹介! アフ・ラボ

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重いコンテナも、ラク~に持ち上がる!

「農業用アシストスーツ」2年後の商品化に向け、開発中!


日本の農業では、収穫物の運搬など、力仕事の負担が大きいのが農家の悩みのタネです。そこで、開発が進んでいる農業用アシストスーツ。商品化が実現すれば、非力な高齢者や女性などの力強い味方となりそうです。

女性でも、20kg以上のみかんの入ったコンテナを楽に持ち上げられる。見守るのは、開発者の八木栄一教授
女性でも、20kg以上のみかんの入ったコンテナを楽に持ち上げられる。
見守るのは、開発者の八木栄一教授

一輪車を押してみかん畑の斜面を登るときも、股関節をアシストしてくれるので、体にかかる負荷が軽減される

一輪車を押してみかん畑の斜面を登るときも、股関節をアシストしてくれるので、体にかかる負荷が軽減される

アシストスーツを装着したままで車の運転もできる

アシストスーツを装着したままで車の運転もできる

収穫したみかんをトラックの荷台に積むような、中腰での作業でも疲れないと、農家の方にも好評

収穫したみかんをトラックの荷台に積むような、中腰での作業でも疲れないと、農家の方にも好評

将来は農業以外でも活躍しそうね




文/(株)ブーン

「きっかけは重たい米袋を運べるロボットを作って」との声
日本の農業従事者の6割は65歳以上。年齢的に筋力も衰え“田植機まで苗を運んだり、収穫物を運ぶのがしんどい”という農家の声も、年々増えています。

そんな方々のうれしいニュースとなるのが、和歌山大学産学連携・研究支援センター教授の八木栄一さんが開発中の、農業用アシストスーツです。

八木さんは以前、民間企業で生産効率を高めるための産業用ロボットを研究していました。

「会社を辞め、和歌山大学で研究を始めたとき、まず考えたのは、“10年後に必要なロボットはなんだろう?”ということ。かつて研究していた産業用ロボットは、機械だけで物が作れますが、今度は人間と力を合わせ共存するロボットを作りたいと考え、アシストスーツの研究を始めました」と八木さん。

農業用に絞ったのは、たまたま大学から紹介された高齢の稲作農家の方に「30kgの米袋を運べるようなロボットを作ってください」と頼まれたからです。“これなら、和歌山の基幹産業である、農業に役立つ!”と確信。農作業のあらゆる場面を想定した結果、高齢者や女性でも重い荷物が楽に持ち上げられる、装着型のアシストスーツの開発に取り掛かりました。

腰を中心としたアシストに絞って、軽量化を実現
3年を費やし、ついに1号機が完成。ところが、総重量は40kgもあり、負荷を軽減するどころか、かえって体に負荷をかける結果に……。

「当初はひじ、肩、腰、ひざと全身を支えるスーツを作りました。でも、重くなりすぎて。これではだめだと、特に要望が多かった腰の負担を中心に軽減する設計に変更し、軽量化を目指しました」

平成22年には、農林水産省委託プロジェクト研究にも選ばれ、農林水産省のサポートを受けながら研究をさらに加速。フレームに飛行機の機体にも使われる超々ジュラルミンを使うなど、軽量化を繰り返し、6.3kgまで軽くすることに成功しました。

「開発で特に難しかったのは、装着者の動作に遅れずに、ロボットをタイミングよく動かすことですね」と八木さん。

従来の装着型ロボットは、筋肉の表面に電極を貼り付け、体を動かす0.2秒前に脳から発する微弱な信号を察知して、ロボットを動かすという方法でした。しかし、農作業では動いたり汗をかいたりして、電極が外れやすく、装着も面倒なため、この方法は断念。

そこで、コンテナなどに両手をかけると、手袋内蔵のセンサーが、持ち上げる動作に入ったと推定して、腰の角度を解析。コンピュータが必要な力を計算して、アシストする仕組みにしました。

アシストする力は最大で10kg。たとえば、荷物の重さが30kgなら20kgの荷物を持ち上げるのと同じ力で済むので、腰の負担が軽減されます。

また、歩行時は股関節のアシスト機構が、脚を蹴り出す力や振り出す力を補助して、斜面などでの歩行を楽にしてくれます。

ほかにも、小雨程度なら屋外でも使用できる生活防水機能や、約20分の充電で2時間稼働できるバッテリーが付いているので、実用性も十分です。

この農業用アシストスーツは、2年後に100万円で販売するのを目標に、現在も開発が進められています。

将来的には、農業に限らず、介護や物流、高齢者の日常のサポートなど、幅広いシーンでの活用が期待されます。八木さんは「日本の高齢化社会を、アシストスーツで幅広く支えられたらいいですね」と抱負を語ってくれました。

農業用アシストスーツの仕組みは…