農林水産分野の最新研究成果を紹介! アフ・ラボ
切ってビックリ、食べてニッコリ
この秋、いよいよデビュー! リンゴとナシの新品種が続々登場
皮だけでなく果肉まで赤い個性派リンゴに、従来品種の弱点を克服した育てやすくおいしいナシなど……。 ユニークな新品種の果物をご紹介します。 |
紅玉と、新品種の果肉を比べてみると……
紅玉とローズパールの比較写真 紅玉とルビースイート比較写真 ルビースイートを、セミドライフルーツに試験加工。鮮やかな色がいっそう引き立つ |
色鮮やかな反面、肉質が粗く、生食に不向きだった赤肉リンゴ
リンゴの中には、一般的なリンゴよりも果肉が赤い品種(赤肉リンゴ)があります。赤肉リンゴは、従来肉質が粗く、酸味が強いことから生食には不向きとされ、主に加工用として栽培されてきました。しかし、見た目が色鮮やかな赤肉リンゴは、生食用としても価値があるとの考えから、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構((独)農研機構)果樹研究所では、““生でもおいしい赤肉リンゴ”を生み出すため、研究を開始。赤肉品種と、生食用の代表品種の「ふじ」を交配して品種改良に取り組みました。その結果誕生したのが、「ルビースイート」と「ローズパール」です。「ルビースイート」は、果皮も果肉もルビー色で、甘味も強いことからこの名前に。果汁が多く甘いのに、酸味は控えめで、大玉なのが特徴です。 一方、「ローズパール」は、果皮が黄色で、果肉はバラのような淡い桃色。特徴的なこの果肉の色と、親品種である「ピンクパール」から命名されました。甘味が強く、すっきりしたほどよい酸味と、食感のよさが特徴です。 サラダにスイーツ、いろんな食べ方を試していただきたい
「交配に最適なリンゴを選ぶため、とにかく多くの品種を食べまくりました。でも、従来の赤肉品種は酸っぱくて。選抜段階では、味覚がおかしくなるかと思いましたね(笑)」と語るのは、研究開発を担当した阿部和幸さん。「ルビースイート」と「ローズパール」は現在、新品種として出願されており、今年の秋から苗木が販売されています。阿部さんは、「生でおいしい品種が完成したことで、市場にも刺激になるはず」と期待を寄せています。 「まずはリンゴ農家の方や市場・流通に関わる方に、新品種を知ってもらい、生産・流通の後押しをしてほしいです。消費者の皆さんには、サラダにしたり、手作りスイーツにアレンジするなど、あれこれ試してほしいですね」
待望の甘くて、軟らかい晩生ニホンナシ その名は「甘太」
リンゴに続いて、ニホンナシの新品種も紹介します。ニホンナシは、現在「幸水(こうすい)」「豊水(ほうすい)」「新高(にいたか)」「二十世紀」の4品種で栽培面積全体の85%を占めています。その中で晩生の主力品種である「新高」は、ほかの3品種と比べると、果肉が硬く、食感が劣るのが欠点でした。一方、低コストで安定生産できて、栽培しやすく収量も多い、新品種のニホンナシの開発も待たれていました。そんな要望に応えるため、(独)農研機構果樹研究所では長年、晩生の新品種ナシの研究を行っていました。そして平成25年、ついに「甘太(かんた)」が出願公表されました。「甘太」の名称は、甘くて、実が大きく(太)、栽培が容易(簡単)なことに由来しています。 果実のサイズこそ「新高」に劣るものの、「甘太」の名前どおり、糖度が高く、果肉もやわらかで、適度な酸味も相まって濃厚な味わいが特徴。また、果実の収量が多いというメリットもあります。 「甘太は、かじった瞬間びっくりするほど甘さが広がり、これまでのニホンナシの一段上の甘さという印象ですね。幅広い年代の方に、美味しく食べていただけるのではないでしょうか」と研究開発を担当した加藤秀憲(ひでのり)さん。 「甘太」は、南東北以南のナシ産地において、「新高」にかわる晩生品種として期待されています。 ニホンナシ「凜夏」は、暖地で「幸水」にかわる品種として期待大
近年、気温上昇が進むにつれ、鹿児島県を始めとする西南暖地では、ニホンナシの主要品種「幸水」などで、花芽が枯れる生育異常が頻発し、安定生産が困難になっています。そこで、(独)農研機構果樹研究所では、暖地でも安定生産できる品種の研究を進めていました。そして平成25年に「凜夏(りんか)」が出願公表されました。 「凜夏」は果実が、「幸水」と比較して大きくて軟らかい一方、酸味は「幸水」よりやや強く、さっぱりとした味わい。重さは500g 程度で「幸水」よりも大玉です。「鹿児島県など暖地の試験場で試作を重ねた結果、『幸水』の花芽が30%以上枯死したのに対し、『凜夏』では10%以下だったんです。ようやく確信がもてましたね」 栽培試験の結果、全国のナシ産地での栽培が可能ですが、特に暖地において「幸水」にかわる品種として、普及が見込まれています。
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