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東日本大震災からの復旧・復興に向けて

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独特の旨みと甘みが癖になると人気!

ユニーク加工品「椎茸焼酎」で、風評被害を吹き飛ばせ!
[福島県いわき市/農事組合法人いわき菌床椎茸組合]


東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故で、福島県のしいたけ生産者は、深刻な風評被害を受けました。いわき菌床椎茸組合でも出荷量が激減するなか、起死回生の策として「椎茸焼酎」を開発。すると、テレビや新聞で連日話題となり、県産のしいたけ全体のイメージアップにも大貢献しています。

しいたけは、一定の温度に保った室内で発生させる。常に収穫しないと菌床がだめになるため、被災時も収穫を続け、被災者に無償で提供した
しいたけは、一定の温度に保った室内で発生させる。
常に収穫しないと菌床がだめになるため、
被災時も収穫を続け、被災者に無償で提供した

「いわきゴールドしいたけ」は、肉厚でジューシー。天ぷらにしたり、焼いたりするのがおすすめだそう

「いわきゴールドしいたけ」は、肉厚でジューシー。
天ぷらにしたり、焼いたりするのがおすすめだそう

工場は震災前の2倍以上の規模に増設。菌床の培養施設、しいたけの発生室のほか、物流をスムーズにするための保管庫を建設した

工場は震災前の2倍以上の規模に増設。菌床の培養施設、しいたけの発生室のほか、物流をスムーズにするための保管庫を建設した

いわきゴールド椎茸焼酎

「いわきゴールド椎茸うどん」は、こしが強く、しいたけの風味がふわりと香る

「いわきゴールド椎茸うどん」は、こしが強く、しいたけの風味がふわりと香る




文/梶原芳恵
写真提供/農事組合法人いわき菌床椎茸組合
震災前には年200tも出荷していたのに……
福島県東南部に位置するいわき市。古くから林業が盛んだったため、主に自家用として原木しいたけが作られてきました。

農事組合法人いわき菌床椎茸組合は、平成20年に設立。2万m2の敷地に立つ工場で、菌床作りから育成、収穫、包装、出荷まで一貫して行っていました。栽培したしいたけは、「いわきゴールドしいたけ」として、県内や関東圏のスーパーで人気を集め、平成22年には、年間200tを生産するほどだったといいます。

しかし、平成23年3月、東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故により、状況は一変。取引先から、取り引き見合わせの連絡が相次ぎました。

「うちのしいたけは工場で栽培しています。そのため、事故後に行われた放射性セシウムのモニタリング検査でも、国の基準値をはるかに下回っていました。なのに、福島産というだけで、とことん敬遠されてしまって……」と、理事の渡部明雄(わたべあきお)さんは悔しさをにじませます。

焼酎のヒットをきっかけにしいたけの出荷量も大幅アップ!
風評被害を払拭するため、組合は、放射性物質の検査を徹底し、結果を随時ホームページで公表。同時に、新規取引先の開拓をはじめました。

平成23年末、ようやく一部の業者と取引をスタートしましたが、価格は震災前の約半分にまで下落。売れ行きも伸び悩み、在庫は増える一方。そこで、組合は、しいたけを使った加工品の開発に乗り出したのです。

「どんな商品なら消費者の目を引くか、職員みんなでアイデアを出し合った末、そうだ、しいたけを使って本格焼酎を造ってみよう! とひらめいたんです」と、渡部さん。

さっそく、福島県内の酒造会社に協力を求めましたが、参考にできる商品はほとんどなく、開発は難航しました。

「もっとも苦労したのは、しいたけ特有の風味を生かしつつ、飲みやすい味わいに仕上げることです。幅広い消費者に受け入れられるよう、全職員で試飲を繰り返しました」と、渡部さん。

試行錯誤を重ねた結果、平成24年、「いわきゴールド椎茸焼酎」を発売。しいたけの旨みと甘みを味わえると人気を博し、年間7000本を売り上げるヒット商品になりました。

そのほか、しいたけの粉末を麺に練り込んだ「いわきゴールド椎茸うどん」も発売。こうした加工品が、テレビや新聞に取り上げられたことがきっかけとなり、原料であるいわきゴールドしいたけを手に取る消費者が増加。生しいたけの売り上げも、徐々に回復していきました。

さらに、農林水産省の「食料の物流拠点機能強化等支援事業」を活用し、収穫したしいたけの保冷施設などを整備。出荷作業の効率化を図りました。

現在、しいたけの価格は全国平均の8割程度ですが、出荷量は、震災前の2倍以上、年間500tを超えています。

「ようやくここまで来ましたが、風評被害はまだ収まったとはいえません。高品質のしいたけを作るとともに、商品開発や販売にも、いっそう力を入れたいです」と、渡部さんは意気込みを語ってくれました