このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

あふ・ラボ

  • 印刷

”見て楽しむ”イネで地域を元気にする!
生け花から田んぼアートまで 観賞用イネが秘めた可能性



長らく日本人の食生活を支えてきた稲作。そのイネに「食べる」以外の用途があることをご存じですか?
それは、美しい色に染まった稲穂や葉を観賞して楽しむ、というもの。育てやすい観賞用イネとして開発された「祝い茜(あかね)」「祝い紫(むらさき)」をご紹介します。


「祝い紫」、「祝い茜」、通常のイネの写真
上から「祝い紫」、「祝い茜」、通常のイネ。比べてみると色の違いが良く分かる。ドライフラワーとして出荷され、フラワーアレンジメントなどに活用される。また、鮮やかな色を生かした正月のしめ飾りも作られ、好評を得ている


祝い茜
祝い茜の写真
鮮やかな赤い色が人気の「祝い茜」。色がつくのは穂の部分のみで、葉や茎の部分は通常のイネと同様に緑色をしているの写真
鮮やかな赤い色が人気の「祝い茜」。色がつくのは穂の部分のみで、葉や茎の部分は通常のイネと同様に緑色をしている
食べるだけではない新しいイネの活用方法

農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)東北農業研究センターが開発を手がけた「祝い茜」と「祝い紫」は、穂の色がそれぞれ鮮やかな赤と紫に染まることが特徴の観賞用イネです。

穂が色づくのは、イネが赤、青、紫を示すアントシアニン系の色素を持っているためですが、実はこれらの色素を持ったイネ自体は、それほど珍しいものではありません。ただ、味の問題や収量が少ないことから食用にはあまり向かず、日本では多くは生産されてきませんでした。

在来品種として残っていたイネを元に観賞用の品種が作られ、九州などで栽培されてきましたが、これらは通常のイネと比べて作りにくいという難点があり、また、東北など寒い地域では栽培できないものでした。そこで、育てやすく、東北でも栽培できる品種として、12年の歳月をかけて開発されたのが「祝い茜」と「祝い紫」です。

観賞用イネは「見て楽しむ」という性質上、栽培過程で茎が倒れると商品としての利用が難しくなります。そのため、倒れにくく強い茎を持ち、葉もしっかり立つように改良を加えました。

さらに、「祝い茜」は、極早生長芒(ごくわせちょうぼう)と対馬在来(つしまざいらい)を交配し、「祝い紫」は、紫穂(むらさきほ)No.1と対馬在来を交配することで東北での栽培を可能にしたのです。



祝い紫
祝い紫の写真
「祝い紫」は濃い紫色の穂が特徴。この他に「奥羽観(おううかん)383号」という葉に白の縦縞が入った観賞用イネもある
「祝い紫」は濃い紫色の穂が特徴。この他に「奥羽観(おううかん)383号」という葉に白の縦縞が入った観賞用イネもある

美しい色を生かしてお土産や花材として販売
祝い事で使ってもらえるようにとの意味を込めて命名された「祝い茜」「祝い紫」は、切り花やドライフラワーとして、フラワーアレンジメントなどに利用されています。秋田県大仙市のNPO法人フラワーデザイン普及協会では、「祝い茜」や「祝い紫」などの観賞用イネを「秋田きれいね(綺麗稲)」と命名。毎年15万本が出荷されています。

また、イネの美しさを風景として楽しむプロジェクトもあります。田んぼをキャンバスに見立てて、色の異なるイネを使って絵を描く「田んぼアート」です。

田んぼアートの村として有名な青森県田舎館村(いなかだてむら)では、7色10品種のイネを使って精巧な絵柄を作り上げています。田んぼアートのイベントとして、田植え体験ツアーを実施し、毎年全国から多くの参加者を集めています。


水田を有効活用して観光資源を生み出す
観賞用イネのメリットとしてまず挙げられるのが、水田の有効活用です。使用していなかった水田を使って観賞用イネを栽培して販売することは、観光資源を生み出すことにつながっています。

実際、田んぼアートのプロジェクトには多くの人が集まり、田舎館村に観光需要を生み出しています。さらに、メディアなどで田んぼアートが取り上げられれば、地域の知名度向上にもつながるでしょう。

このように、観光資源を生み出し、地域活性化の助けとなる観賞用イネ。1本1本は小さな穂でも、そこには非常に大きな可能性を秘めているのです。





田んぼアート

  2001年までは、地元のシンボル的存在である岩木山と文字が入っただけのシンプルなデザインだった。2002年に開始10周年を記念して、大規模な田植えを実施したのが、現在の田んぼアートの始まり
田んぼアート

  田舎館村では毎年、役場東側にある15,000平方メートルの水田で「田植え体験ツアー」を実施して、田んぼアートの元となるイネを植えている。田植え参加者の中には「田んぼに入るのが初めて」という人も多い
2つの水田にさまざまな絵柄

  毎年、2つの水田にさまざまな絵柄が登場する田舎館村の田んぼアート。どちらも近くの展望台から観覧でき、期間中は2つの田んぼを結ぶシャトルワゴンも運行される。穂が出る前の、茎や葉が色づく7月から8月にかけて見頃となる


あふ・ラボトリビア【観賞用イネ】
観賞用イネの中身は何色?美味しいの?

赤や紫に染まった「祝い茜」「祝い紫」の穂。中のお米は白い色をしています。色がつく仕組みは複雑で、お米、穂、葉、茎の色は必ずしも同じではないのです。また、観賞用イネは昔の品種の中から”見た目の美しさ”で選んだイネを使って品種改良をしたものなので、お米の味自体はさほどではなく、パサパサとした食感です。

観賞用イネ


文/酒井麻理子(フリート)  写真提供/農研機構東北農業研究センター、田舎館村役場