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農林水産省

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トップランナー 今、この人たちが熱い vol.3

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JA北魚沼(新潟県)

「雪」を「米」に利用し、さらなるブランド力強化へ



「魚沼コシヒカリ」と言えば、誰もが認める米のトップブランドの一つ。その魚沼地方で、“米”にまつわる新たな取り組みが注目を浴びています。環境に優しく、米の付加価値向上にもつながる「雪室(ゆきむろ)倉庫」で貯蔵された米の販売、飼料用米を食べて育った牛の生乳によるジェラートの開発など、「北魚沼産ブランド」の強化に奮闘する、JA北魚沼の取り組みを紹介します。

魚沼うんめぇジェラート 飼料用米で育った牛から採れた生乳の味わいが魅力。カップのフタはホルスタインの模様で魚沼市の形を表現。1個380円(税込み)
魚沼うんめぇジェラート
飼料用米で育った牛から採れた生乳の味わいが魅力。カップのフタはホルスタインの模様で魚沼市の形を表現。1個380円(税込み)


冬の豪雪を米の貯蔵に利用
豊かな水と自然に恵まれ、米どころで知られる新潟県・北魚沼地方。米のブランド化に取り組むJA北魚沼で、老朽化した米倉庫の建て替えが検討され始めたのは平成20年頃。勉強会の中でさまざまな意見が出され、検討を重ねた結果浮上したのが、雪を利用した「雪室(ゆきむろ)倉庫」でした。

「もともとこの地は、毎年3~4メートルもの積雪に悩まされる豪雪地帯です。この雪をうまく利用して、環境にも優しい倉庫が建てられないだろうか。そこから検討を重ねていきました」

そう語るのは、JA北魚沼販売促進課販売管理担当部長の鈴木貢さん。米は低温貯蔵が基本で、長期間貯蔵すると電力などのコストがどうしてもかかってしまいます。

そこで注目したのが「雪室」。豪雪地帯では、昔から雪室と呼ばれる雪中貯蔵庫に農作物を貯蔵する手法が一般的でした。自然の力を借りながら、低温で農作物の鮮度を保つという先人の知恵。これを応用して、新潟県のJAで初となる「利雪(りせつ)型米穀低温貯蔵施設」、通称・雪室倉庫を24年8月に完成させました。

この雪室倉庫では、倉庫内に雪を貯めておく雪室というエリアを設置し、その冷気を利用して米を貯蔵します。全体で玄米約3,600tを管理・貯蔵できる本州最大規模のものですが、同規模の米倉庫と比べて電力消費量は約3分の1。年間78tのCO2削減効果があると試算されています。

しかし、貯蔵後の品質が良くなければ意味がありません。「翌年の秋、1年間貯蔵したお米と、その年にとれたばかりの新米の両方を食べ比べてみたんです。個人的な感想ですが、雪室倉庫で1年間貯蔵したお米の方が美味しいと感じました。その時は本当に安心しました。やった!と思いましたよ」(鈴木さん)。

安定した温度・湿度のもとで保存したことで、米の鮮度と食味を保つことができたのです。また、雪室倉庫は冷気を雪室と循環させるシステムのため、庫内の臭いや埃を雪が吸着し、貯蔵時の臭みを防ぐ効果もあるそうです。



北魚沼ブランドのさらなる強化へ
もう一つ、雪室倉庫が担っている大きな役割があります。それはお米の付加価値を高めること。一口に「魚沼コシヒカリ」と言っても、魚沼地方は大きく北魚沼・中魚沼・南魚沼の3つに分かれ、それぞれが米の産地として競い合っているのが現状です。現在、JA北魚沼ではこの雪室倉庫で貯蔵されたコシヒカリを「雪室貯蔵米」として販売。「魚沼産」ではなく、「北魚沼産」のブランド力強化を目指しています。

また、6次産業化の一環として、さらなる取り組みを行っています。それは飼料用米と飼料用イネ(WCS)を食べて育った地元牧場の牛の生乳を利用した「魚沼うんめぇジェラート」の販売です。

「飼料価格の高騰などで苦しむ地元の酪農家を元気づけたい、というのが開発の一番の理由です。配合を工夫した飼料を与えることで、半分のコストで同じ乳量を生産できるようになりました。ジェラートは地元の飲食店や旅館と協力して検討を重ね、半年ほどかけて開発し、昨年4月に販売を開始しましたが、予想以上の売れ行きに驚いています。これからも、地域振興のためにどんどん生産していきたいですね」(営農企画課長・ 小幡憲三さん)

この地域でも、農業従事者の高齢化で農業の担い手が減少していますが、「地域の自然環境保護のためにも水田を残していきたい」という気運は高まっています。JA北魚沼のこうした取り組みは、魚沼の豊かな自然を守ることにもつながっているのです。


JA北魚沼のあゆみ 1999年、JA北魚沼創立。2008年、1960年代に建てられた倉庫の老朽化による建て替えと、大規模倉庫での管理が検討され始める。2010年、平成23、24年度再生可能エネルギー熱利用加速化支援対策事業(経済産業省)、平成23年度新潟米付加価値向上施設整備促進事業(新潟県)などからの支援が決定、計画に着手。2012年2月、利雪型米穀低温貯蔵施設、通称「雪室倉庫」建設開始。2012年8月、雪室倉庫完成。2013年、「雪室貯蔵米」販売開始。2014年4月、「魚沼うんめぇジェラート」販売開始。



JA北魚沼の特徴的な取り組み

雪室倉庫の写真
1.3つの異なる温度の貯蔵室
雪室倉庫には5度、10~15度、13~15度という3つの異なる温度の貯蔵室を備え、米の食味・品質ごとに保管を分けている
倉庫内の写真
2.冷気循環により高品質貯蔵を可能に
エアコンより全体の温度が安定し、かつ湿気も最適に保てるのが雪室最大のメリット。夏場の米の劣化を防ぐことができる
倉庫内の写真
3.機械式低温貯蔵室も併設
天候により降雪が少ない場合も想定し、3室のうち1室はエアコンで温度調整をしてリスクを低減

雪室の写真
4.本州最大規模の雪室
貯雪量1,500tの雪室は本州最大規模。断熱性に優れ、2月に雪を運びこめば翌シーズンまで追加の必要がない

雪室貯蔵米の写真
5.「雪室貯蔵米」の直販
雪室倉庫で貯蔵した「雪室貯蔵米」は、個人への直販が中心。一般的な魚沼コシヒカリより高価だが、好評だという

JA北魚沼GAP部会の写真
6.JA北魚沼GAP部会を設立
生産者団体が活用する農場管理の基準であるJGAP団体認証を取得。ブランド力向上と地域営農活動の発展を目指す


JA北魚沼
所在地 新潟県魚沼市
職員数 325人
正組合員数 6,406人
准組合員数 5,358人
販売品販売高 52億7,100万円
※ 平成27年1月末現在


文/川口有紀(フリート)  撮影/原田圭介  写真提供/JA北魚沼