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特集 太平洋クロマグロの資源管理 クロマグロ食す・守る(2)

クロマグロを「知る」  日本人と“マグロ学”



サバ科のうちで最も大型の魚類であるマグロ。中でもクロマグロは、日本人にとって強い思い入れがある象徴的な魚です。


太平洋クロマグロの回遊経路と主な産地
太平洋クロマグロは、獲物となる魚を追いかけて泳ぎ回る回遊魚です。春夏は北で、秋冬は南で水揚げされますが、その行動範囲は広く、詳細な回遊ルートはいまだに解明されていません。
太平洋クロマグロは、獲物となる魚を追いかけて泳ぎ回る回遊魚です。春夏は北で、秋冬は南で水揚げされますが、その行動範囲は広く、詳細な回遊ルートはいまだに解明されていません。


ハレの日に食す特別な食材
日本は世界最大のマグロ消費国であると同時に、世界第2位のマグロ漁獲国でもあり、マグロは私たち日本人にとって欠かすことのできない食材です。

私たちが食べているマグロは主に5種類ですが、中でもメバチ、キハダ、ビンナガの3つが圧倒的な比率を占めています。普段、スーパーなどで目にしたり、食べたりしているマグロのほとんどは、このうちのいずれかです。

一方、日本人にとってことさら思い入れが強く、象徴的なマグロと言えば「本マグロ」とも呼ばれているクロマグロです。クロマグロは何と言っても他のマグロに比べて魚体が大きく、いずれの部位も奥深い味が楽しめます。

クロマグロには、地中海を含む大西洋に分布する「大西洋クロマグロ」と、日本近海から北米大陸西海岸にかけて生息している「太平洋クロマグロ」があります。いずれも甲乙つけ難いクロマグロですが、”最高級のマグロ”として知られているのは、特に大型の天然モノです。とても希少であり値段も高く、”海のダイヤ”とも称されています。多くの人にとって、食する機会は少なくても、お祝い事などの「ハレの日」に食べたいと思う、日本の食文化を象徴する大切な魚だと言えます。


日本は世界最大級の漁獲国
マグロ類の国別漁獲量(2012年)
マグロ類の国別漁獲量(2012年)
資料:FAO統計
※注:集計方法の違いにより、農林水産省「漁業・養殖業生産統計」の値と一致しない



日本近海を回遊し季節によって産地が変わる
日本近海を回遊する太平洋クロマグロは、沖縄など南西諸島から台湾東沖にかけての海域(4~7月頃)と、鳥取・島根近海など日本海南西部(6~8月頃)で産卵します。ふ化した魚は、成長するに従ってイワシ、サバ、イカなどのエサを追いかけて回遊。一部は、太平洋を横断して東部太平洋のメキシコ近辺まで泳ぎ着き、再び日本近海に戻ってくる魚もいます。

太平洋クロマグロは回遊ルート上の各地で漁獲され、季節によって産地が変わります。その時々のエサや脂の乗り方の違いで、さまざまな味わいが楽しめるのです。


漁獲されるクロマグロのほとんどが未成熟魚
太平洋クロマグロは、年齢3歳、体重約30kgくらいから成熟しはじめます。漁獲尾数全体のうち、約97%は3歳未満で30kg未満の未成熟の魚が占めています。テレビ等で目にするような、150kg以上に達する巨大なクロマグロは、全体の1%にも満たないのです。

これらの未成熟魚は、まき網(※注1)、ひき縄(※注2)、定置網(※注3)など、さまざまな漁法で獲られています。食用のほか、養殖の種苗として利用されるものも多いのですが、このままのペースで未成熟魚を大量に獲り続けてしまうと、太平洋クロマグロはどんどん減ってしまう恐れがあります。

将来にわたって、私たちの食文化と太平洋クロマグロを守っていくためには、漁業者をはじめ、消費者など関係するすべての方の協力のもと、水産庁が中心となって資源管理を進めることが必要なのです。

※注1:魚群の周囲を網で取り囲み、網の下部を巾着のように絞って引きあげる漁法。
※注2:船から竿を出し、これに釣り糸と疑似餌を付けて、船を走らせながら魚を獲る漁法。
※注3:海の中の定まった場所に網を設置し、回遊する魚群を誘い込んで獲る漁法。


築地市場での生マグロのセリ。仲卸業者の表情は真剣そのもの

築地市場での生マグロのセリ。仲卸業者の表情は真剣そのもの

青森県・大間の一本釣り漁の写真
青森県・大間の一本釣り漁。100kg前後の大型魚が水揚げされることも


マグロの種類
クロマグロのイラスト


クロマグロ Atlantic Bluefin Tuna / Pacific Bluefin Tuna
「大西洋クロマグロ」と「太平洋クロマグロ」がある。「本マグロ」とも呼ばれる、マグロの最高級品種。メジマグロ(ヨコワ)はクロマグロの幼魚。


ミナミマグロのイラスト



ミナミマグロ Southern Bluefin Tuna
南半球の緯度の高い海域を中心に分布。別名・インドマグロ。クロマグロに次ぐ高級品で、主に刺身として食されている。


メバチのイラスト



メバチ Bigeye Tuna
温帯から熱帯の海域に広く分布。目玉が大きい中型のマグロ。マグロの中では最も深い海域を泳ぐ。赤身が多く、主に刺身に利用されている。


キハダのイラスト



キハダ Yellowfin Tuna
メバチとほぼ同じ海域に分布している。体とヒレが黄色味がかっていることから、「黄肌マグロ」と呼ばれている。刺身や缶詰に利用されている。


ビンナガのイラスト



ビンナガ Albacore
世界中の海に広く分布している。長い刀状の胸びれが特徴の小型のマグロ。油漬けの缶詰など、加工品の原料になる。別名・ビンチョウ、トンボとも。


イラスト/東京築地魚市場大物業会、日本かつお・まぐろ漁業協同組合