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トップランナー 今、この人たちが熱い vol.5

農業生産法人 こと京都株式会社[京都府]

売り上げ目標は200億円!ねぎ業界の風雲児が仕掛けるビッグビジネス



京野菜の代表格、九条ねぎを扱い、6次産業化を進める農業生産法人こと京都。 アパレル業界出身の代表取締役・山田敏之さんは既成概念にとらわれず、 大胆な経営で自らに課した売上高の目標を次々にクリアし、挑戦を続けます。

代表取締役の山田敏之さん(前列左)と、こと京都の皆さん。自社農場30haに加えて、契約農家の農場20haで九条ねぎを生産しています
代表取締役の山田敏之さん(前列左)と、こと京都の皆さん。
自社農場30haに加えて、契約農家の農場20haで九条ねぎを生産しています


年商1億円を目標に就農
ねぎ業界で活躍する山田敏之さんは、アパレル業界の出身です。「30歳を前に起業したい思いが強くなったとき、これからは食が大事になる、という直感が働き、農家の二男だったこともあって父親に農業を学ぶことにしました」

32歳で就農するに当たり、農業も一つのビジネスととらえ、自ら年商1億円という目標を課しました。「素人だから立てられた目標です。周りから『何を寝ぼけたことを』と言われ、実際、初年の売上は400万円止まりでした」と山田さんは苦笑します。

実家は1haの農地でホウレンソウや大根など、季節の野菜を栽培していました。売上を伸ばすには品目を絞り、良い物を大量に作るしかない。そう決意した山田さんは、京の伝統野菜であり、通年収穫が可能な九条ねぎに賭けます。 「作業効率が上がって、売上は1600万円になりました。それでも目標にはまだ遠くおよばない。そこでカットねぎの加工・販売を手がけることにしました」

問題は販路でした。京都のマーケットはすでに飽和状態だったため、山田さんはカットねぎを手に東京へ出向き、ラーメン店に飛び込み営業をかけます。「洋服の場合は、門前払いが当たり前でしたが、ねぎの営業は面白いようにうまくいきました」

味にこだわる調理人はつねに良い食材を探し求めているもの。そこに京都の九条ねぎというブランド品を持ち、生産者が突然訪れて来たため、興味を持たれたのです。

新たな発見もありました。「ねぎの値段は市場で決まり、青果市況で公開されますが、カットねぎは向こうから値段を聞かれたのです。そうか、加工品はこちらで値決めができるんだ」と。

原材料の生産から加工、販売まで一貫して行うため良質な物を鮮度の高いまま届けられるのも強み。品質への反応は上々で、販路は外食から大手スーパーや百貨店に広がり、1億円という目標は就農7年目にしてクリアできました。



全国のねぎ生産者との連携
販売量が急増した結果、原材料が不足するという事態に直面した山田さんは、近隣の100軒ほどの農家に供給を頼んで回りました。この連携が府内の農家との「ことねぎ会」の結成につながります。九条ねぎの伝統を継承するとともに、栽培技術をさらに向上させ、次世代の農業者や新規就農を応援する会です。
「会員には生産・販売計画から関わっていただくこと、JGAP※の認証取得に努めてもらうことを条件としました」

生産者を増やすことにも取り組んでいます。同社が実施している独立支援研修生制度は、4~5年かけて栽培などについて学んでもらい、修了後は、ことねぎ会で支援していくという仕組みです。

さらに、日本全国の青ねぎ・白ねぎ、すべてのねぎの生産者を連携させる目的で、2014年1月に立ち上げたのが「こと日本株式会社」です。
「ここで行うのは全国各地の農家に安全安心な農法でおいしいねぎを作ってもらい、適正な価格で買い取るという試みです。農産物の仕入れ価格が低く抑えられがちな理由として天候不順などの事態に備えるためということがあります。全国の生産者をつなぐことで、不作の地域が生じるなどのリスクをカバーしたいのです」

日本のねぎの総出荷量は年間約40万トンです。
「こと日本株式会社の新しいシステムで国産ねぎの調達力日本一、具体的には4万トン、シェア10%を目指します。これを達成すれば、売上は200億円にはなります。大きな数字ですが、就農した際の漠然とした目標ではなく、実現への道筋がはっきり見えている目標と言えます」

山田さんは、年商1億円から始めた夢の遥か先を見つめています。

※JGAP(Japan Good Agricultural Practice)。農林水産省が導入を推奨する農業生産工程管理手法の1つ。食の安全や環境保全に取り組む農場に与えられる。



こと京都のあゆみ 1995年、山田敏之氏、就農。1997年、九条ねぎに絞り、生産開始。2000年、カットねぎの製造・販売。2002年、有限会社竹田の子守唄設立。2003年、美山に養鶏場を造る。2007年、こと京都株式会社に社名を変更。2008年、中国製冷凍餃子事件を商機ととらえて10億円計画を立案。2009年、ことねぎ会発足。2013年、平成25年度6次産業化優良事例表彰で農林水産大臣賞受賞。2014年、こと日本株式会社を設立。



こと京都の特徴的な取り組み

徹底した衛生管理
1.徹底した衛生管理
食を扱う会社として衛生面を重視。工場は食品の安全性を確保する衛生管理手法のHACCPを導入済み
積極的な販路開拓
2.積極的な販路開拓
「生産者側の加工業者」の立場で営業を展開。首都圏での各種イベント出展にも力を入れている

独立支援研修制度
3.独立支援研修制度
新規就農の促進に力を注ぐ。生産・販売を指導、修了後の就農・独立を支援している

京都ブランドの商材開発
4.京都ブランドの商材開発
「京の九条の葱の油」「京都九条のねぎ醤油」「京の九条ねぎ餃子」などの商品を開発。オンラインでも販売


「屋台ラーメン ばんらい屋」(京都府伏見区)の九条ねぎを山盛りにした醤油ラーメン。店主・賀集慎治さんは「香りと味が全然違うので、ねぎ嫌いという方も喜んで召し上がります」と絶賛
「屋台ラーメン ばんらい屋」(京都府伏見区)の九条ねぎを山盛りにした醤油ラーメン。店主・賀集慎治さんは「香りと味が全然違うので、ねぎ嫌いという方も喜んで召し上がります」と絶賛


Data
所在地 京都府京都市伏見区横大路下三栖里ノ内30番地
主要な事業 九条ねぎの生産・加工・販売、採卵養鶏、 卵・鶏肉販売
販売金額 約7億8,800万円(2014年度)
労働力 123名(正社員47名、研修生15名、パートタイマー61名)


文/下境敏弘  写真/島 誠




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