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特集1 麦(6)

[PRODUCER] 日本最大規模の小麦農家を訪ねて



北の大地、夕張川の清流に沿ってどこまでも続く黄金の畑。日本最多の小麦生産量を誇るのが、農事組合法人勝部農場です。
大型農機具を駆使した生産スタイルを実現させた農業哲学とは――。


東京ドーム34個分の広大な麦畑!
生産される小麦は1,500万人分のパンが作れる1,000トン超!

先代の勝部徳太郎氏が遺した「農業は大地に鍬(くわ)で彫る版画なり」という言葉そのままの美しい畑が広がる
先代の勝部徳太郎氏が遺した「農業は大地に鍬(くわ)で彫る版画なり」という言葉そのままの美しい畑が広がる
撮影/やもとかおる

農事組合法人勝部農場
【所在地】北海道夕張郡栗山町円山205
【主な事業】小麦の生産  【農地面積】168ヘクタール
【労働力】社員3名、収穫の際に臨時のアルバイト10~20名


 欧米製の大型農機具を活用し、一気に収穫を進める
欧米製の大型農機具を活用し、一気に収穫を進める
撮影/やもとかおる
「今年、世界最大級のコンバインを新たに導入する」と語る、勝部征矢さん
「今年、世界最大級のコンバインを新たに導入する」と語る、勝部征矢さん


大型農機具が可能にする広大なほ場の土づくり
小麦を50年以上作付けし、天候に恵まれない年でも、量、質とも安定した小麦を生産する"カリスマ農業"として知られるのが、北海道夕張郡の農事組合法人勝部農場代表、勝部征矢さんです。

勝部さんが強くこだわっているのが土づくり。硬い土を砕いて深く掘り返し、ワラを粉砕してすき込み、堆肥と土壌改良剤を散布して土壌微生物を活性化させる――。「この作業を10年も繰り返せば、すばらしい土になる」と言います。

とはいえ、その作業量は膨大なものとなります。夕張川に沿って延々と連なる広大な小麦畑の深耕(しんこう)を可能にしているのが、欧米から輸入した数々の大型農機具です。

勝部さんが高校を卒業して就農した1957年に、勝部家は「当時このあたりなら家が買えた」ほどの金額を出して、米国製のトラクターの導入に踏み切りました。日本人の食の変化を見越して小麦という作物に目をつけた勝部家。経営の安定化を図るため、農地を少しずつ増やしながら作業の機械化を推進し、四代にわたって農業技術を磨いてきました。

当初2.4ヘクタールだった畑は今では168ヘクタールに達しており、丹精込めた農地から収穫される小麦は、年間1000トンを超えています。

おいしいパンができる「ゆめちから」との出合い
「土地管理型」――勝部さんは自らの農業をそう表現します。

ほ場の排水性を高めるため、地中には最大直径70センチメートルの暗きょ(地下排水溝)を張り巡らせてあり、その総延長は30キロメートルにもなります。

また自前の乾燥機を保有し、農場内の施設で収穫した小麦の品質を調製しています。

大規模化と機械化を推し進めてきた勝部さんの積極果敢な姿勢は、作付品種の選択においても発揮されました。農業・食品産業技術総合研究機構北海道農業研究センターから「この品種を普及させたい」と試験栽培の依頼があったのは、2007年のことです。

勝部さんは、自ら品質を確認したいと考え、長期滞在するオーストラリア人の多い留寿都(るすつ)村のリゾート地の食堂にサンプルを持ち込みました。すると、外国人やパン職人が「日本にこんな小麦があるのか!」と一様に驚きの声を上げたのです。

勝部さんは試験栽培として一気に8ヘクタール作付けしました。それが超強力系小麦「ゆめちから」です。春まきの小麦に比べて安定した収穫が見込める秋まき小麦で、たんぱく質の含有量が多く、甘みもあり、粘り気が強い品種です。

これまで、国産小麦はパンに向いていないという理由から、主に中力粉や薄力粉に加工され、麺類などに用いられていました。しかし、「ゆめちから」は中力品種の粉とブレンドすることで、おいしいパンができると評価され、大手メーカーが品種名を前面に出したパンを全国販売するほどの人気となっています。

当の勝部さんは「小麦は希少価値を保ってブランド化を図るような農産品ではありません」と言い、あくまでも主食なのだから、より高品質の物を安定的に供給する努力があってしかるべき、との信念から、さらなる大規模化に意欲を燃やします。


麦女子 Mugi-Girl
前農家より経営をすべて継承する農業経営継承制度を利用し、農家に転身した江面陽子さん
前農家より経営をすべて継承する農業経営継承制度を利用し、農家に転身した江面陽子さん
黄金色の麦畑に感動
小麦栽培を通して地域の方々に幸せを

家族と働き、子どもと多くの時間を過ごせる将来を望んだ江面陽子さんは、7年前に脱サラして夫婦で北海道へと移住しました。農家に転身後、「農家民宿えづらファーム」を設立し、現在は42ヘクタールの畑で小麦などを栽培しています。やり直しのきかない年1回の収穫にプレッシャーがあるものの、地元の方々と協力して栽培・収穫に当たっているそうです。また、地元の女性たちと、麦わらを用いたフィンランドの伝統装飾であるヒンメリの販売や麦畑散策などを行う「ヒンメリの会aurinko(アウリンコ)」の活動を通して麦畑の魅力も発信しています。

「小麦栽培の技術を高め、収量と品質を向上させるとともに、ヒンメリ作りを遠軽(えんがる)町の人々のやりがいや幸せにつなげていきたい」と、夢を語ってくれました。

地域の女性たちと一緒に行っているヒンメリの加工販売。「携わる人々のやりがいや地域の収入源につながれば」との思いも
地域の女性たちと一緒に行っているヒンメリの加工販売。「携わる人々のやりがいや地域の収入源につながれば」との思いも


取材・文/下境敏弘


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